三崎鳴 さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
君だけを 君だけを 好きでいたよ
『CLANNAD』第2期。After storyの名の通り前作の続きだが、むしろこちらが「本番」か。結局この作品のやりたかったことの全てはここに詰まっている。作画、演出、音楽については前作同様文句の付け所もないといいたいところだが、明るいイントロのEDテーマは感動の余韻を和らげてしまっている気がしないでもない。OPテーマの時点で既に泣けるのだが「泣ける泣ける言われすぎて無駄にハードルあがって泣けなさそう」という先入観を見事に覆す作品。やはり人情物はいいものである。学園ものにおいてのピークである卒業の後まで描いている時点でかなり評価できるのだがここまで突き詰めると、漏らす不平もない。評価すら「正に人生」の一言で済ませられる程度、筆舌に尽くしがたいのだがそれでは記録しておく意味がないので一応拙い分析をば。“泣ける”ポイントは主に5箇所。渚の死亡、汐との和解、父親との和解と別れ、汐の死亡、そして復活の終局。渚と汐の死亡はkey作品恒例の萌えキャラ殺しの一環だが、秘めている事情は若干異なる。渚の場合、共に歩んできた時間が長く、これからも続いていくはずだったその道を絶たれるという“未来の剥奪”である。そして智也は、入れ違いのように生まれてきた汐を、(筋違いだと分かっていながらも心のどこかでお前が生まれてきたせいでと咎めたくもあったのか)受け入れることが出来ない。そして早苗の計らいで2人きりの旅行へ、旅先で父の過去を聞かされ、自分も父親としての自覚を得ること、そして父親を赦すことを決意する。父親との和解を経て、大人への一歩をまた踏み出し成長する智也が、既に立たれた渚との道を汐と、再出発することになる。だがその矢先、汐は原因不明の病による体調の悪化、運命に二度も愛する者を奪われる。汐の死亡は“希望の剥奪”である。「悲劇」と書かれた牌、「寛容」と書かれた牌、「成長」と書かれた牌の3つの牌が順番に繰り返し並べられたドミノを、息もつかせぬ間に倒すように進むストーリー。そして全ての過去をやり直す終局はやや分かりにくいが、個人的には、運命を呪うのをやめ、父親を赦し、自分を赦した智也自身を『町』が赦したという解釈で受け取っている。最後に置いた「奇跡」という牌を倒し、ドミノ倒しは終わる事となる。彼らのこれからに、幸福な未来を――。