三崎鳴 さんの感想・評価
4.1
物語 : 5.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
Now and then,here and there
作品を評価する言葉の一つに、「人間を描いている」というものがある。これは人間の言動や行動を本性にどれだけ近く、どれだけ脚色なしに描いているかという点に焦点を当てた見解だ。本作は、その「人間を描いている」アニメの、一種の完成形である。設定は異世界に飛ばされた主人公が、そこで勃発している戦争に巻き込まれ、様々な経験を経て成長していくというありふれたものであるが、暴力描写が占める割合が多く、19時に放送していた作品とはとても思えない。身を挺して子供を救おうとする主人公、自らの身を守るために手を汚す少女サラ、邪知暴虐の王ハムド…戦争の血生臭さと理不尽な戦争観が凝縮された傑作である。誘拐と洗脳により、出兵させられる少年兵の苦悩に胸が締め上げられる。視ていてとてつもなく苦しく、時には吐き気すら催す描写もあり、精神的なショックはかなり大きい作品だが、目を背けずに見ておかなければならない一作でもある。本作がアニメーション史に埋もれてしまうのは非常に惜しい、なんとかして一人でも多くの人に知ってもらいたい。絶対悪としての戦争を鮮明に色濃く書き上げたスタッフ陣には精一杯の賞賛を送りたい。