雷撃隊 さんの感想・評価
4.7
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ガンダム最高傑作にして日本映画全体の名作
総集編だった1,2と違い3はほぼ新作、作画レベルが格段に向上。過労で途中降板した安彦良和がリベンジとばかりにいい仕事している。アムロもシャアもイケメン度大幅アップ、セイラさんも色気倍増、安彦キャラの本領発揮だ。メカも新作画が増えてカッコよさ大幅アップ、ガンダムもキャノンも明らかに輪郭線が細くなり美しいぞ。今回はホワイトベース隊の編成がTVとかなり異なっている。ガンタンクとGアーマーはリストラされキャノンが2機、コア・ブースター2機となっている。戦闘シーンに至っては画面から独特の色気が漂っている。MSやコア・ブースターの航跡や吹き飛ぶムサイやマゼランの蛍光ピンクの爆発なんか本作特有の美しさだ。色っぽいことこの上ない。脚本は総集編特有のツギハギ感が無く映画としてのバランスが向上している。特にソロモン~ア・バオワ・クー会戦に至る大艦隊による巨大な戦略は戦争映画としてのスケール感が凄い。映画3を見慣れてしまうとTVじゃ物足りなくなってしまうのが弊害かも。でもギャンやブラウ・ブロのエピソードがカットされてるのでどちらも一長一短だろう。でも演出は映画の方が上なんだよなー・・・。
この頃になるとシャアが富野由悠季本人になってくるのが面白い。どうすれば世の中が良くなるか理解していても実力が伴わないという象徴だ。富野氏本人も「作品を取り巻く状況をコントロール出来ない」と度々コメントしている。押井守がシャアの言動に気をつけていれば監督の思想が解る、とコメントしていたがやはりだった。またこの時点ではアムロとシャアのポジションが完全に逆転、バケモノじみた強さのアムロとガンダムに不完全なマシンで戦いを挑むシャア、どちらがラスボスなんだか・・・。シャアが哀れになってくる。RX-78ガンダムの無双ぶりは最高にカッコイイぞ。zやνとは性能は比べようも無い筈だけどその貫禄は凄まじい。歴代のどのガンダムも初代の威厳は超えられない
歴代最強ヒロインララァ登場。出番は少ないけどインパクトは最強レベルだ。十数年にわたり男二人の精神を蝕み続ける恐ろしい女だ。シャアが後にホロコーストに走るのもこいつのせいだ。「ララァが死んだ時のあの苦しみ、存分に思い出せ!!」確かに苦しいよなー。この時点でシャア、妹も恋人もアムロにとられてしまう。ララァと結婚できていればシャアは大人になれたのだろうか・・・。Z以降では残された男二人が腑抜けになってるのが痛々しい。
アムロとシャアの共通の敵であるザビ家一党は内輪揉めで自滅、キシリアはシャアが狙撃して殺すがあの状況ではザンジバルがサラミスに撃沈されてどの道戦死確定だろう。つくづくメインキャラは歴史を動かしていない。世の中非情だ。ブライトたちに至っては命令されて生き延びた、ただそれだけだ。結局残るのは殺し合いの虚しさだけだ。ホワイトベースの乗員や生き延びたジオン軍メンバーの人生、しつこく続編を書くより客の想像に任せたほうが良かったのでは・・・。ハヤトなんかは小説で死亡しアニメではZZで死亡する。みんなロクなもんじゃない人生が待っている。
今回の名台詞
「ガンダム、あの木馬の白い奴だ」「悲しいけどこれ、戦争なのよね」「美しいものが嫌いな人があるのかしら」「ララァは賢いな」「俺だって人並みに上手に生きたいけど、不器用だからな」「兄は鬼子です」「人は変わってゆくわ、あたしたちと同じように」「僕は、ララァを殺してしまった」「いい女になるのだな、アムロくんが呼んでいる」「ガルマ、私の手向けだ、姉上と仲良く暮らすがいい」「僕にはまだ帰れるところがあるんだ、こんなに嬉しいことは無い、解ってくれるよね、ララァには、何時でも会いに行けるから・・・」いやー、名台詞の宝庫だ。でも一番好きな台詞はドズルの「戦いは数だよ兄貴、偉そうに踏ん反り返る暇があったら勝つための算段を(怒)」最も説得力がある。この言葉はのちに「銀河英雄伝説」で実証される(笑)
この1STでアムロたちは登場人物としての役割をほぼやりつくしてしまっている。ストーリーや哲学も語り尽した感がある。富野氏自身もZ意向はバンダイグループの命令により作らされた蛇足で死に損ないの無意味な余生と言い続けてきた。物語りの中でも生き延びたアムロもシャアも後輩であるカミーュやジュドーたちの良き先輩には成れなかった。かつて自分達が否定した汚い大人、煩くつまらない大人に成り下がっただけだ。歴史は繰り返す、世代をこえた負のスパイラルが続編のテーマになってゆく。この1STガンダムの後継者はイデオンやエルガイムなんかの方がむしろ相応しいだろう。SEED?00?そんなもん版権盥回しの二次著作だろうが。
本作のTV並びに映画が名作すぎたため後のシリーズにとっては越えられない壁になってしまった様に思える。富野作品としてもアトム、トリトン、ザンボット3、ダイターン3ときてこの時点での集大成だろう。ちなみに僕は1st至上主義者というわけではないがガンダムブランドそのものより富野ブランドのファンなので非・富野ガンダムは違和感があって見辛い感じがするのも確か。
長々と書いてきたけど、この映画3にガンダム全体の最も濃いエッセンスが詰まっている。初代ガンダム未見の方、基本情報は巷に幾らでも転がっていてすぐ理解可能ろうからせめてこれだけでも見るべし。アニメの枠を超えた日本映画全体の名作だぞ!!