どらむろ さんの感想・評価
4.7
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
日本作品でドラクエに先行したファンタジー+ロボットアニメ
1983年(昭和58年)放送の古いロボットアニメ。全50話。
ガンダムの富野監督作品だが、ロボットアニメにファンタジー要素を取り入れた異色作。
ちなみにRPGの代表格「ドラゴンクエスト」の1作目発売が1986年、ドラクエによってファンタジーが日本に一大ジャンルとして定着する3年前に世に出た、ファンタジーである。
※余談だが私の名前「どらむろ」は本作が元ネタだったりします。
{netabare}『物語』
今でこそ珍しくないファンタジー舞台に我々の世界の人間が召喚される系、その元祖である。
現代(無論、放送当時だから昭和58年頃か)の少しやさぐれた不良な若者ショウ・ザマが、突如として異世界「バイストン・ウェル」に召喚されてしまい、バイストンウェル征服を企む「アの国」の悪徳領主ドレイク・ルフトに「聖戦士」として「オーラバトラー」(本作のロボット兵器。異世界の怪獣の生体素材で出来た昆虫っぽいフォルムのメカ)に乗って戦わされる事に。
妖精が居たり、まるで中世ヨーロッパのようなファンタジー世界で、ロボット兵器が飛びまわる…そんな不思議な世界観に戸惑いつつ、悪の領主ドレイクの野望とそれを阻止する勢力との戦いがエスカレートしていき、主人公ショウはその戦いに巻き込まれていく…。
導入からの流れが極めて自然、視聴者も戸惑いながら、いつの間にかファンタジー世界とロボットバトルに引き込まれていく感じで、序盤から全く目が離せない。
悪徳な父に反発する囚われのお姫様リムルが可愛かったり、反ドレイク陣営のリーダー格のニー・ギブンとの恋や、ショウやマーベル、トッドらの地上人の思想も入り乱れ、人間模様もリアル。
ゼラーナ隊内部の確執、戦いを通じて次第に心を一つにしていく過程が、俗に富野節と言われる小洒落た会話劇やロボットバトルを通じて描写されていた。
ファンタジーであっても人間ドラマが本格派なのは、流石は富野監督作品か。
オーラバトラーを強力に操る為には「オーラ力(おーらちから)」というバイストンウェルに満ちている生体エネルギーが必要で、そのオーラ力は、異世界人(コモン)よりも、地上人(ちじょうびと)つまり我々の世界の人間の方が強い。
なので、我々の世界の普通の青年であったショウも、バイストンウェルでは強いオーラ力でオーラバトラーを操れる聖戦士となれるのだ!
…この設定はミヒャエル・エンデのファンタジー小説「果てしない物語」(1979年刊)を彷彿とさせる。
後にも「ドラえもんのび太の夢幻三剣士」も同様の設定(我々の世界で落ちこぼれののび太も異世界では英雄)だったり。
この設定の良い所は(視聴者含めて平凡な人間だけど、異世界ではオーラバトラーで大活躍できるかも!?)と思わせてくれる事だと思う。
異世界舞台のファンタジーならではの舞台設定は今でこそ珍しくないが、当時としては非常に新しかった。
ファンタジー戦記としても非常に本格派で、中世+妖精が居る世界観に突如としてロボット兵器や飛行戦艦が登場したら、世界はどうなってしまうのか…?
をリアルに描いており、ショウ達ゼラーナ隊の奮戦や反ドレイク陣営の有力国家「ミの国」や「ラウの国」「ナの国」の君主達の支援も受けつつも、次第に劣勢に追い込まれる等、英雄無双だけでは戦争には勝てない、ガンダム作者らしいリアル戦争物としても面白い。
序盤は割と正統派のファンタジー戦記(ロボット兵器が乱れ飛ぶが)であったが、16話「東京上空」にて、いきなりショウのオーラバトラー「ダンバイン」が敵の女戦士ガラリアのオーラバトラーと共に故郷である我々の世界の東京に出現してしまう超展開。
この展開により、本作はファンタジーでありながら、非常にリアリティーを感じる。
序盤は「もしファンタジー世界にロボット兵器があったら?」中盤は「もしそのファンタジーが現実世界に現れたら?」をリアルに描いており、全く目が離せなかった。
このお話はファンタジー世界だけでなく、我々の世界も巻き込まれてる!
故郷に帰還したショウを待ち受けていたのは、同胞である筈の地上人からの疑惑の目、実の両親からも拒絶される疎外感が酷い。
ここは自分の居場所じゃないのか?
その葛藤が解決せぬまま、聖戦士ショウはダンバインと共に再びバイストンウェルへと帰還する。
…ガラリアさん結構好きだったのに、ここで退場は哀しかった。
20話のタイトル「聖戦士ショウ」俺は聖戦士なんだ!バイストンウェルでやるべき事がある。悲しむ暇は無い!
そんな決意が伝わってくる中盤戦、反ドレイク陣営の有力な君主(お姫様)二人も登場、バイストンウェルの覇権を賭けた戦争が激化していく。
ここからが更に面白く、大国ラゥの国の姫エレ・ハンム、やはり大国ナの国の君主シーラ・ラパーナ女王(女王だけど美少女)らの戦力も糾合してロボットバトルが白熱。
ドレイク陣営の各パイロット達も各々の意地とエゴでもって激しく迫って来る迫真のバトル展開の連続だった。
富野監督作品らしく、各キャラのエゴ剥き出しのセリフの応酬は圧巻。
27話「赤い嵐の女王」で、本作一番の人気ヒロインであろうシーラ様初登場!
囚われのお姫様を聖戦士が助ける王道展開で萌える。
これぞファンタジーのお姫様!ファンタジーの姫様だけど気丈にオーラバトラー軍団と聖戦士ショウを指揮してみせるシーラ様登場で、ここからがダンバインも本番と言えよう。
…でもタイトルとなったダンバインは降板、この時代のロボットアニメの宿命か新メカ「ビルバイン」に乗り換えてしまった。
まあビルバインも普通にカッコ良いのですが、ダンバインのオリジナリティーが勿体ない。
32話「浮上」にて、再び舞台は地上世界(我々の世界)に。
当時は米ソ東西冷戦真っただ中、アメリカとソ連の軍隊が、ドレイク軍のオーラバトラー軍団に全く歯が立たず、ショウ達反ドレイク陣営が米ソと組んで泥沼の大戦争に。
ファンタジーだったのに、いつの間にか米ソ東西冷戦!?
ファンタジーが一気に現実味を帯びてきて、こういう展開も流石ガンダムの監督か。
現実では犬猿の仲だった米ソが共闘する流れは、アニメとはいえ感慨深い。
放送当時の「米ソ東西冷戦」という世相を反映して、核兵器の脅威とそれすらも上回るオーラマシンという脅威をしっかりと描く狙いがあったのかも。
ここから先の展開やバトルは少々冗長でワンパターン、序盤~中盤にかけてのファンタジーの魅力が損なわれているのが難。
それでも、ソビエト連邦軍の将校トルストールと、ラゥの国の女王(まだ幼い少女だが女王)エレ姫との切ない恋愛劇など、見所は十分。
シーラ様とショウの恋愛要素は薄めだが、少しはそういう気持ちがあった(のかも知れない)。
富野監督作品特有のエゴ丸出しのキャラクター達の暴走も終盤に向けて加速していき、狂気と狂気が激突するバトルとセリフの乱舞が圧巻。
オーラバトラーを駆る者たちがねそのオーラ力によって破滅していくのは、怖かった。
ラストのショウvsバーンの一騎打ちが名勝負
ショウ「貴様はその怨念で何を手に入れた!?」
バーン「力と狡猾さだ!さすれば勝つ!」
ショウ「俺は人は殺さない!その怨念を殺す!」
…って、結局殺してるじゃんw
ラストは富野監督作品「伝説巨神イデオン」のような全滅エンド。
やり切れない気持ちになるが、不思議とこれで良かったのかな?とも思った。
総じて
「日本アニメ史上初となるファンタジー+ロボットの融合」
「本格派のファンタジーとロボット戦記」
「人間模様も濃密なドラマ」
「32話以降はちょっとグダグタ、ラストも投げたっぽい?」
という感じ。
全50話と長いので敷居が高いアニメですが、ロボットアニメ(機動戦士ガンダム等の富野監督作品)に興味がある方ならば、視聴しておくべき名作かと。
『作画』
流石に80年代前半なので現代の綺麗さとは比較すべくも無いが、当時としてはロボットバトル、キャラ作画共に綺麗だった。
オーラバトラーはロボットでありながら生物的フォルムで独特の魅力があるし、異世界バイストンウェルの世界観も幻想的で美しい。
女性キャラも、リムル姫やシーラ様など今見ても十分美少女が居る。
『声優』
今は故人となった方も多い、豪華声優陣。
ショウの中原茂さん、バーンの速水奨さん等、主要キャラは全員オンリーワンな熱演だった。
一部拙い演技も多かったりするも、まあそれ含めてキャラの味であろうし(贔屓)。
チャム・ファウの川村万梨阿さんが一番合ってたかも。
バーン・バニングスは速水奨さんの代表的キャラなので、超贔屓して5.0点で♪
(私のサムネもバーンですしw)
『音楽』
OP「ダンバイン飛ぶ」は一番好きなアニソンの一つです。
超燃える!カラオケ行けば必ずこれだけは歌います♪
ED「みえるだろうバイストン・ウェル」もしみじみとする名曲。
また挿入歌「青のスピーチ・バルーン」「水色の輝き」も、80年代風のラブソングで古いけど良曲。
作中BGMが素晴らしい。
オーラバトラーの戦闘シーンや、バイストンウェルの幻想的な雰囲気にベストマッチした良曲ばかり。
大好きなので、サウンドトラックで時々聴いてます。
富野作品は概してBGMが素晴らしいです。
『キャラ』
メインヒロインのシーラ様かわいい超可愛い!
美少女にして大国の君主、軍を指揮して聖戦士ショウに命令(ムチャ振り)してみたり、恋心を健気に隠して「戦いになれは人は死にます。情けは交わさぬが良い」と言いつつちょっとデレてたり、とにかく可愛いお姫様ヒロインです。
他にもリムル姫やキーン、エレ姫、妖精のチャム等可愛いキャラ多い。
敵味方共に人間味溢れる魅力的なキャラ多く、エゴ剥き出しで衝突するので人間ドラマに目が離せない。
敵としてはかなり戦略家だったドレイク・ルフトもボスとして貫録十分。
最初はドレイク軍のエリート騎士だったのにショウニに負け続けて落ちぶれ「黒騎士」となって復活、怨念で戦うバーン・バニングスが哀しくも、カッコイイ。
バーン大好きです。サムネをバーンにしている程w
主人公ショウ・ザマと同じ地上人でありながらライバルとなったトッド・ギネスも敵ながら憎めない。
全体の構図が勧善懲悪なのに、敵も含め一人一人に強い魅力があるアニメでした。{/netabare}