れのん。 さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
多くのひとにおすすめしたい、魅力的なアニメ(~ラジオ16回 小野さんの涙 / 加筆)
原作既読
監督 橘正紀さん シリーズ構成&脚本 ピエール杉浦さん
制作 キネマシトラス
op曲「らしさ」作詞・作曲 柳沢亮太さん 編曲・歌 - SUPER BEAVER
ふだん、アニメをあまり見ない人にも、この作品はおすすめしたい。ぜひ、多くの人にみてもらいたい。たいへんおもしろいので、30分が短く感じる。
原作漫画の作者、ヨシノサツキさんの出身地・五島の方言がとてもいい。あまりにもみごとな方言なので、ときどき何ていってるんだか、よくわからない。でも、そこがまたいい。
黒電話に、ぼっとん便所。
自分は、わりと女性作者原作のアニメ(「坂道のアポロン」や「銀の匙」など)が好きだが、このアニメも、どこか共通するものがあるように感じる。
アニメの舞台となっているのは、長崎県五島の福江島で、実在しているそうだ。福江島の方言、生活習慣、お盆などでの慣習などが、ありのままに描かれている。そのため、作品の中の離島での生活が、とてもリアルだ。
登場するキャラたち(文字通り、老若男女、お年寄りから中高生・こどもたちまで)もたいへん個性的で生き生きしており、魅力的だ。
このアニメは、全体として雰囲気がとても暖かくて癒やし効果抜群、毎回、いっぱい、笑ってしまう。主人公以外の登場人物では、主人公にとてもなついてる、島の自由奔放な小一の女の子、なる が、とりわけ魅力的だ。なるちゃんは、「うさぎドロップ」の りんちゃん に匹敵する(タイプはちょと違うけど)むちゃくちゃ子供らしい可愛さだ。
主人公「先生」は、23歳の書道家・半田清舟。
負けん気がつよく、書道は天才的だが、人間的にちょっと未熟なところがあり、書道以外はさっぱりダメ、人付き合いは苦手で他人を寄せ付けたがらないところがある。だが、彼は、意外と順応性があり、こどもぎらいのはずなのに、いつのまにか、島のこどもたち&中高生たちと本気でかかわり、島での暮らしにすっかりなじんでしまう。彼は、書道の道を極めようとして壁にぶつかり、しばしば落ち込んだり、かんしゃくを起こしたり・・・。でも、島の人々は、そんな主人公と、いつも自然体でかかわってくれる。ここらあたりの描写は、明るいギャグタッチで、しかも深みがある。
同じ田舎を背景にした名作でも、「のんのんびより」とはまったく異なるタイプのアニメである(癒やしがあるのは、共通していると思うけれど)。
ほのぼのとした五島での田舎ならではの日常や人間関係と、書道の道を極めようとする内面的な厳しさが、相反することなく、みごとに深いところでつながって描かれている。主人公は五島での日常の経験を通して、いつも無意識に、書道の道をきわめる手がかりを得ようとしている。人間として成長してゆく。
このアニメは日常系とされる場合が多いが、自分は何が日常系か、よくわからなくなってきた。キャラの配置、主人公が書道に精進する過程で困難と対峙し、葛藤する姿を描いている点、物語に起承転結がある点からみて、この作品はストーリー性がかなりしっかりしている(田舎での日常を描く、癒やし系アニメではあるが)。
キャスティングには、いい意味でこだわりが感じられる。
こどもキャラの声優は、こどもがやっているところもすばらしい。とくに、なるちゃん役の原涼子さんは、この地方出身の子役さんではないのに、方言も演技も抜群にすばらしい。
主人公の半田清舟役の小野大輔さんは、はまり役で見事。小野さんは、現場でも、こども役の声優たちの面倒をよく見てやって(漢字の読み方を教えてやったり)、いい雰囲気をつくっておられるらしい。
元気な中二の女の子、山村美和役の古木のぞみさんは、五島列島出身で、方言監修も担当しており、方言の多いこの作品にかかせない声優さんだ。
男性声優は、他に、内山昂輝さん、梶裕貴さん、諏訪部順一さんなど。
10/1加筆。
11話{netabare}
半田清舟が、館長に謝るシーンはすばらしかった。
高齢の館長がいすに座ろうとしたとき、清舟は、思わず、館長の痛めている腰に手を当てるが、そのとき彼は、「いくら頭に血が上っていたからといって、こんな人を擲ってしまうなんて、俺は最低の人間だ」と思い、自然に頭を下げるのである。彼は、島での暮らしの中で、人間として成長している。
衝動的に、お茶で自分の大作「星」を汚してしまう清舟は、たしかにまだ未熟ではあるが、若い芸術家としては、あれでいいのかもしれないと思えた。
館長は、「君は見違えるほど、おもしろい字を書けるようになったなあ」と彼をほめる。
島との電話がつながって、あきが、「先生が寂しそうだから、声を聞かせてやれって川藤が・・・」と話し、次々、島のこどもたちが清舟に電話越しにわいわい話すシーンには、感動した。{/netabare}
12話(最終話)
11話~12話にかけての展開も、さらっと自然体で描いている印象。{netabare}
かなり、めんどくさい母親の描写。
コメディとして大げさに描かれているのだろうけど、23歳にもなった一人前の息子の親離れを、こんなに強烈に否定してしまうのだから、困ったものだ^^
ただ、この作品は、おもしろいことに、その困った母親を、40歳以上と推定される年齢からはありえないほど、若い外見とかわいらしさで描いている。
清舟の父親が、若い頃島に行ったことがあるというのも、もっともな設定だ。
この両親に育てられてきたら、清舟が、未熟でこどもっぽく衝動的で不器用で、友達できにくい大人になったのも、うなずける。
清舟は、島の子供たちといっしょに暮らしいっしょに遊ぶことをとおして、こども時代をもう一度生き直して、人間的に成長した、ということだと感じた。
清舟を慕う、美和たちの習字をみて、さすがの母親も、「すねてるんじゃありません、あなたが必要とされてるなら、もどるしかないでしょ」と、清舟が島に戻ることを認めざるをえない。息子から必要とされることしか考えてこなかった母親だが、いまや、息子が島のこどもたちに慕われ必要とされる存在に成長していることを知ったからである。
島のこどもたちもまた、清舟から影響を受けるのは当然で、美和が習字で銀賞をとって落ち込む様子は、先生が大会で2位になって落ち込む様子の生き写しになってしまっていて、思い切り笑えた^^ 先生を家で迎えようとしているときのセリフでも、美和は真剣に、「2位の悔しさばナメちゃいけん!」ていってる^^
清舟のセリフにあるとおり、「いま、おれがいちばんたいせつにしてる」ものは、島の人々、とりわけこどもたちとの深い繋がりである。この繋がりを、このアニメは、生き生きと、自然体で人間味あふれるものとして描いてきた。
「何も考えずに楽しんでるおまえ等をみると、こっちまで感化されるよ」と、清舟はいう。
清舟が大会に出した作品「石垣」(島の人たちの名前で石垣を形作っている)を見たとき、自分はさすがに、「うわ、、こらいかん・・」とつぶやいてしまった^^ でもまあ、たぶん、「星」の方が評価は高かっただろうけど、これでいいのだ。
大会の結果は、必ずしも思わしくないものだったのに、清舟は、さほど落ち込む様子がない。「まぁ、いい結果だった」と、こどもたちには淡々と話すのみ。
これもまた、彼の大きな人間的成長を示す、大切な描写だった。。
清舟が、ここで1位になっても、この物語の最終話としては、ほとんど意味がないと思う。それよりはるかに大切なのは、清舟が、いまや自分のスタイルを自信を持って確立しつつあるということなのである。それこそ、彼の成長であり、この物語が描いてきた彼と島の人々との深い交流が生み出した貴重な宝なのである。{/netabare}
今更気がついたが、絵コンテは、「のんのんびより」監督の川面真也さんだったようだ。
最終回への流れは、感動させる演出や泣かせる演出は、あまりめだたなかった。
海も、「普通がいちばん」。状態
もちろん、島のこどもたちは、先生を大歓迎している。ただ、島のこどもたちも大人たちも、先生が帰ってくるのを迎えるのに、まったく自然体なのだ。
しかし考えてみれば、先生が帰ってくる直前に掃除したりしてるこどもたちが、「先生のために、先生のために、、」と言っているのを、視聴者がごく自然なことと受け取れるのは、すごいことなのかもしれない。
最後に、たいへん印象に残ってうれしかったことがある。
最終回、ed のあと、エンドカードで、小野大輔さん(主人公・清舟役)が音頭をとって、こどもたちが「ありがとうございました!」といったところ。
あれは、小野さんも、キャラの声じゃなくて地声だったし、アフレコ現場の雰囲気そのものだなーと思った。小野さんが、アフレコ現場で、こどもたちをかわいがってる様子も、すごく伝わってくる。
視聴者に感謝を告げたのは、ここでは、キャラというよりは、すてきなキャストたちだったな^^
こういうの、すごくいいと思った。
ほんとに、珠玉の名作でした。
すばらしい作品を届けてくださった、スタッフの皆様と、キャストの方々、こどもたちに、心からありがとうといいたい気持ちです。
10/27加筆 最終回アフレコ終了後のエピソード 小野大輔さんの涙
「ばらかもん」の放送はおわりましたが、ウェブラジオ「らじかもん」は、まだ隔週で、小野大輔さん(半田先生役)&ピエール杉浦さん(シリーズ構成&脚本)をパーソナリティとして、続いています。
「ばらかもん」ファンの私は、このラジオも聴いていますが、小野さんたちの思い入れが強いせいか、30分のはずが毎回、40~50分以上、ラジオやってますね^^
これまでも、なる役の原涼子ちゃんや、美和役の古木のぞみさんがゲストで来られて、現場のとても暖かな雰囲気を知ることができました。小野さんの言うには、「この現場って、逐一感動するんですよ」。
アフレコ現場は、こどもの方がときには半分以上、という、「ばらかもん」独特の楽しい雰囲気だったようで、小野さんはこども好きで優しい方だから、こどもたちにすごくなつかれるんですね。
こどもたちは、現場でも、小野さんのことを「せんせい」とよんでいるし、小野さんもこどもたちと話すときはいつも、「先生は、こう思うよー」という感じで、まるで、小学校の先生です。
先日の、ラジオ「らじかもん」16回が、感動的でした^^
最終回のアフレコ終了後の現場のエピソードを話しておられたのですが、慣例通り、お花の贈呈などがあって、そのあとは、小野さんの言葉では、「慣例なんかでは収まりのつかない特別の時間」。
原作者やスタッフ、声優さんたちの間でのプレゼントの交換、とりわけ、こどもたちがみんな、小野さんに心を込めて、プレゼントを贈ったんですね。
で、そのとき、なる 役の原涼子ちゃんが、こどもらしいお手紙を読んだのですが、胸がいっぱいになって、涼子ちゃん、号泣、号泣で、ひともじひともじ、ふりしぼるように読んでたそうです。それを聞いてる小野さんも号泣してしまって、「もう、アフレコ現場みんな、泣いてたよ」。
原涼子ちゃんの、小野さんへのお手紙{netabare}
半田先生へ。
12日間、いっしょにやってくれてありがとう。
なるは、最初、先生と会うとき、ちょっと緊張してたよ。
でも、先生がなるにはなしかけてくれて、あー、いいなーっておもった。
それで、知らないことも、漢字も教えてもらって知ったし、いっしょに遊んだりもして、たくさん楽しかったです。
なるは、ほんとうは、先生とは、お別れしたくないです。
きょうが、ほんとうはおわってほしくないです。
でも、おわっちゃうけど、なるはなるのままだよ。
先生は先生のままだよ。
いつかまた、およーっていって、またきばろうね。
なるは、せんせいのこと、ずーーーと、だいだいだいだい、だいすきだよ。
また会おうね。
こといしなるより。{/netabare}
これ、ラジオで、視聴者に読みながら、小野さん、また、泣いてるし。。
自分は、そんなにたくさんアニメを見てきたわけではないし、アニメのことがそれほどわかるわけではないですが、やはり、スタッフさんや声優さんたちが、ほんとに作品を愛して、だいじにつくっておられるようすを知ると、アニメはほんとにすばらしいと思うし、感動します。