れのん。 さんの感想・評価
4.5
物語 : 5.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
ヒカルと佐為の出会いとわかれ ・文句なしにおもしろい名作(加筆)
原作既読。
2001年10月~ 2003年3月放送。 本編75話。
文句なしの名作アニメ。
本作は、碁をテーマにしたスポ根風アニメで、主人公の少年ヒカルの成長の物語でもある。女子キャラもいるが、恋愛要素はかすかにあるだけ。長いアニメなので登場人物は多いが、それぞれのキャラ設定がすばらしい。ストーリーも大変おもしろく、テンポがいい。1話見だしたらとまらない。
原作は、ほったゆみさん原作の「週刊少年ジャンプ」連載の漫画(完全版で全20巻、累計発行部数は2500万部)。
このアニメは、本来なら漫画やアニメにしにくいはずの碁の世界を、碁を打つ人にも打たない人にも楽しめるように、みごとに描いている。
もちろん、おもに碁をまったく知らない視聴者を予想して制作されており、碁を知らなくても、おもいきり楽しめ、たいへんおもしろいはず。
この作品は、プロ・アマを問わず、碁を打つ人の間でも評価が高い。
アニメや原作漫画に描かれている碁盤上の黒白の碁石の状況は、実際のプロ棋士の棋譜などから描かれており、プロ棋士がアニメや漫画のどのシーンを見たとしても、碁石の配置におかしな点がなく、手抜きはない。碁をかなり打っている人が、アニメ中の碁盤の状況を見て楽しむこともできる、クオリティの高さである。
よく、アニメでは、バンドのアニメならバンド経験者、水泳のアニメなら水泳部経験者、書道のアニメなら書道の高段者、などなど、かなり真剣にその分野にかかわった経験者には、つっこみどころがいろいろ目立ちすぎて、視聴が楽しみにくくなることがあるような気がする。しかし、そうでないアニメもあるわけで、「ヒカルの碁」は、その典型例だ。アニメ化にあたって、日本棋院が制作協力し、囲碁普及の神様みたいな梅沢由香里さんが囲碁アドバイザーをされているのがその理由だと思われる。
佐為という碁の天才の幽霊が、碁をまったく知らない元気な少年ヒカルに取り憑く。この設定が、本作を大成功させた、決定的アイディアである。
このアイディアを思いついたきっかけについて、原作者のほったゆみさんは、「私もあまりうまくはないけど、趣味で碁を楽しんでいます。で、碁を打っていると、よく、次の一手に困って、だれか碁の天才が耳元ですばらしい手をささやいてくれたら、どんなにいいだろうとか、思っていました」というようなことを、インタビューで話しておられた。自分も下手だけど碁を打つので、この気持ちは、とってもよくわかる。
佐為の幽霊は、ぜんぜんこわくなくて、なかなかかわいげがあり、いいキャラだ。主人公のヒカルにしか、佐為の声は聞こえない。ヒカルと佐為は、いわば仲良しでもあり、師弟関係でもある。この二人のやりとりが、じつにいい。
圧巻は60話。
それまで、いわば二人で一つだった佐為とヒカルに別れるときが来る。成仏するべきときが来たことを悟った佐為は、春の陽光の中、ヒカルと最期の対局をし、静かに成仏してヒカルと別れる。佐為は、佐為なりにヒカルに別れを告げるのだが、ヒカルにはそれが聞こえていない。ヒカルの立場では、気がついてみたら、佐為がいなくなってしまったわけだ。このときのヒカルのあわてぶり、必死に佐為を探そうとする気持ち、寂しさ、絶望感・・・、こういう気持ちに視聴者は深く感情移入するので、ここから70話にかけて、ストーリー展開の山場である。
そして、70話。
ヒカルは、大好きな佐為にはもう会えないのだけど、自分の打つ一手一手のなかに佐為がいることを発見し、佐為と再会する。ヒカルは棋士として立ち直る。このあたり、大きな感動がある。
自分は、碁が趣味の一つで、日頃、碁を打っているので、とりわけこのアニメには思い入れが大きい。自分の場合は、ネット碁が中心だが、オフ会にもときどき行くし、大会にも出る。才能ない上、あまり詰め碁&手筋などの努力もしないので、まだ5~6級。 いまは、ネットのせいか、若い世代&女性で碁を楽しんでる人もけっこういる(オフ会参加者も男女半々くらいで、平均年齢もかなり若い。碁会所とかなら、そうでないだろうけど)。
アニメで、アニメ以外の趣味が増えたり、人との出会いのきっかけが増えたりすることもある。