れのん。 さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
百合風味の日常系 ・・・百合ってなんだっけ?(加筆修正)
原作未読
2014年1月 ~-3月放送(全12話)
監督・シリーズ構成 石倉賢一 キャラクターデザイン 坂井久太
制作 スタジオディーン
原作 タチの4コマ漫画(芳文社『まんがタイムきららミラク』)
だいぶまえにこのアニメを視聴したとき、いちどレビューを書いた。しかし、どうも自分でしっくりくるように書けなかったので、いったん削除した。
いまなら、なんとなく書きなおせるような気がするので、書きなおしてみようと思った。
きららの百合風味日常系。 男子向きの百合と思われる。しかし、知人の女性に一人、この作品が実は好きだという人がいる。人それぞれなのだと思う。
自分は、微エロはわりと好きだけど、とくに百合好きだという自覚はない。
というか、百合って何なのか、アニメ視聴歴が浅い自分は、これまで気になっていながら、いまいちよくわからなかった。
このアニメを最後まで視聴したしたのは、一つには百合に興味があったからである。
百合ってなんだっけ?
…… そんなことよくわかっておられる方、多いと思いますが、読み飛ばしてくださいー<(_ _)>
ニコニコ大百科に書かれていることを整理すると、百合という語には、{netabare}
①1970年代にルーツがある表現。
女性同士の恋愛感情(同性愛)、またはそれに近い親密な関係(強い親交関係)のこと。
②戦前の女学校で現実の女学生の関係として流行し、戦後は、少女小説や少女漫画などの中で描かれ続けていった「エス」のイメージが、百合という言葉に吸収されたもの(「エス」は、少女同士の精神的な結びつきを重視した、特別に親密な関係のこと)。
③男性向けのポ○ノのジャンルの一つ。
これらが一まとまりになって(また、その境界線上にあるものまで)、百合という語に含まれている。
現在の百合は、「百合」という語が元来持つ清純なイメージもあって、②の影響が特に強いそうだ。③の意味は「レズ」という言葉がになうようになっているため、「百合は清純でレズは性的」というようなニュアンスで使い分けられる傾向にある。
ただし、心のつながりを描いた百合作品が必ずしも肉体関係にまで発展しないわけではないし、リアルの女性同性愛では、心のつながりも体のつながりも同様に大切だと思っている人が多いと思われる。
同性同士の性的な感情が苦手な人は、百合とレズビアンを分離したがる傾向にあるが、そういった考え方は同性愛者に対し差別的だという意見も多々ある。
→ 私がわりと好きな作品で(登場人物たちが厳密な意味でどう判断されるかはむずかしいだろうが)、アニメ&漫画の「放浪息子」は、淡い水彩タッチで、性同一性障害に近い中学生たちを描いている。
女性同士の親密な関係を一緒くたに百合とまとめるようになっている現状では、百合の中でも性的な感情に発展しているものを「ガチ百合」、そうでないものを「ソフト百合」などとと称する事もある。
「百合」と「レズ」という言葉からそれぞれ受ける印象が異なる以上、表現したいニュアンスによって使い分けられるのは自然なことだが、上述のような歴史的経緯があることを理解して、「百合とレズは違う」「百合はこうで、レズはこう」という自分の勝手な定義を他人に押し付けないようにしたい。
百合市場自体はBL市場と比較してかなり小さいが、ファン層は男女問わず存在し、また百合を匂わす作品も徐々にではあるが増えて来ている。
公式に百合作品とは謳われていない作品から百合を見出すことは現在の百合の楽しみ方の一つとなっているが、百合以外でふつうに楽しんでいるファンも大勢存在するため、自分の楽しみ方や見方を他のファンに押し付けるような事は絶対にしてはいけない。
→ これについて、自分が思い当たるのは、「のんのんびより」の、ほたるんとこまちゃん、および、「響け!ユーフォニアム」の、久美子と麗奈などである。前者は原作者も多少、百合を意識しているかもだけど、後者は原作の小説も読んだが、原作者は女性の同性愛的な関係を意識していないように思う。{/netabare}
話を、本作に戻す。
「桜trick」は百合成分のみの作品ではないけれど、各話とも必ず、女の子どおしの濃厚なキスシーンがある。そっとキスするのでなく、濃厚キスである。
作画は可愛い感じ。
この作品は間違いなく百合である。濃厚百合風味なので、もっとろこつな描写のあるえろい作品より、刺激的だと感じた。
でも、慣れてくると、メインキャラたちの濃厚百合シーンも、ただ刺激的&官能的なだけでなく、ちょっと微笑ましく可愛いモノのように見えてきたから、不思議である。後半ではいちど、メインキャラの女の子二人が、互いに相手をかけがえのない人だとしていることのあかしとしてキスするシーンに、ちょっと感動した。
「このアニメを見ていると、普通の男と女の恋愛がきたないもののようにみえてきて、百合こそ美しいもののように見えてくる」と、どなたかがレビューで書いておられた。自分が思うに、男女の恋愛にも美しいところもあればきたないところもある。そして、百合に美しさがあるというのは、たぶんそのとおりなのだろう。自分自身は上記には同意できないが、そういう風に感じる人がいるのは、うなずける。
ただし、やはりこの作品の「百合」は、男性目線を意識した作品のものであって、本来的には女性目線のものではないようにも感じた。
視聴前、最終話まで観ることはできないだろうと思っていたのに、なんとなくラストまでみることができた。途中、ちょっとしんどくなったけど。
ちなみに、つよい百合的友情(?)or 恋愛(?)によって結ばれているメインキャラ二人の中の人は、戸松遥さんと井口裕香さんだが、キャラの名前も、はるかとゆうなので、このシンクロは、自分的にちょっと、ツボにはまった。この二人の声優さんの百合的演技は迫真のもので、濃厚キスシーンでの吐息 and 思わず漏らす声は、さすがだった。
このアニメは、視聴していて、百合的風味の印象がどうしてもつよくなるが、もともと、きららの編集長も日常系アニメの一つだと言っておられるようだし、百合的シーンより普通のゆるやかな女子高生たちのコメディタッチの日常を描いている時間の方が、ずっと長い。
ただ、自分は、このアニメでのコメディタッチのほのぼの日常描写は、ほかの高校学園アニメでの描写と比較して、とくに個性的でも魅力的でもないように感じた。たとえば、文化祭も肝試しもクリスマスも、定番の範囲内という印象(クリスマス回は、背景がちょっと美しかったかな)。
仲良しのキャラたちのうちの一人がお金持ちである設定も、よくあるパターン。
メインキャラ二人の個性は、わりとよかったと思う。しかし、それ以外のキャラたちには、自分はあまり魅力を感じなかった。仲良し6人組で、百合的カップルがメインキャラ二人の他にもう一組あったっけ。
生徒会長のみつき(めがねの上級生の女の子)と、彼女をめぐる物語が、わりと視聴者に人気があるようだけれど、自分にはあわなかったかな。
原作が日常系の4コマ漫画の、名作&良作はかなりあるけれども、物語を楽しむという意味では、この作品は自分にはいまひとつだったような気がする。
共学の高校のはずなんだけど、男子生徒(もちろん全員、モブ)はどこにいてなにしてるんだろ。そういう現象はしかし他の作品でもあること(百合ではないが「たまゆら」など)
また、もうすぐ廃校になるという設定は、どういう意味があるのかな、と、視聴しながら漠然と感じていた。
ひょっとしたら、女の子たちの百合的人間関係に、ちょっと、はかなさのようなものを感じさせるための設定上の工夫なのかなとも思った。桜の花びらが散る描写もアニメのタイトルも、そういうはかなさのようなものを、あらわしているのだろうか。
その後、自分は、市場規模が百合よりはるかに大きく、まんがやアニメに大きな影響をおよぼすにいたっているBLにも興味を持つようになった。石田美紀の「密やかな教育」(洛北出版)などを読んで、BLの系譜に思いをはせたりしたが、それはまた後日、どこかのレビューで書こうと思っている。