「CLANNAD AFTER STORY-クラナド アフターストーリー(TVアニメ動画)」

総合得点
92.4
感想・評価
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ランキング
21
ネタバレ

OZ さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 5.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

CLANNADは人生と言うけれど

1期は評価程楽しめなかったけれど
2期からが本番と聞いており
視聴済の人も多いので
一度は観ておきたかった作品

■CLANNADは人生と言うけれど■
泣けるアニメと言えば沢山ありそうなものだが
中でも頻繁に耳にしていたのが『CLANNAD~AFTER STORY~』

観る前は「そんな大袈裟な」と高を括っていたが
しっかり涙腺を刺激される結果になった。

評判通りの内容ではあったけれど
気になる点もちらほら。

まず物語だが
メインシナリオを引き立たせる為とはいえ
序盤はサイドストーリーへの寄り道が多く
見所の中盤までは少々長く感じるので
入り込むまでに時間が掛かるのは惜しい。

1期でサブキャラクター達のエピソードが観れたから
今回はシンプルに家族愛だけをクローズアップして欲しかったかな。

次に音楽面。
劇中BGMは要所を盛り立ててくれたが
OPとEDの2曲になると
前作に比べてインパクトが弱い。

EDは明るい曲調である為
もの淋しいエピソードの後だと
思いの外浮いてしまう。
渚が亡くなる第16話では特に感じたものだ。

これによって次回への引きと余韻が
若干緩和されてしまうで勿体無い。
1期のED曲ではあるけれど
折角「だんご大家族」の名曲があるのだから
ここぞの場面で流してもらいたかった。

そしてキャラクター。
おそらく最も引っ掛かりを覚えたのは
主人公 岡崎 朋也についてだろう。

彼は周りの人間に依存しており
5年もの間 育児放棄をしていたのである。
最愛の妻がこの世を去り
ショックを受けたとしても
ここだけは感情移入出来ない要因となった。

けれど どんな人間だって
必ず一つや二つ過ちはあるもので
もう戻せない去っていった時を責めるより
誤った事を素直に認め
そこから一歩ずつ償っていくしかないのだ。

賛否分かれるだろうが
ダメな所は本当にダメな
岡崎 朋也が主人公だからこそ
今作品は輝くのかもしれない。


「CLANNADは人生」
度々目にした言葉だ。
勿論 何を以って「人生」なのかは
その人により物差しが異なってくるだろう。

普通に仕事をして 普通な家庭を築き
普通の幸せを感じながらごくありふれた人生を送る。

その"普通"を当たり前にする事がどれだけ難しいか
しみじみと考えさせられた作品である。

■幻想世界は必要あったのか?■
今一つ必要性の有無を感じたのが
少女とガラクタ人形の幻想世界の描写だ。

現実世界と幻想世界をリンクさせ
未来を暗喩していているのだが
非常に曖昧かつ抽象化された表現なので
遠回し過ぎて正直分かり辛い。

「この為の伏線だったのか!」と
受け止める事も出来るが
あくまで好意的な解釈が求められる為
特別無くても物語に差し支えなかったな。

■涙が溢れる18話■
感情に訴えかける場面が多い今作品。

第16話の汐出産シーンや
第19話 父との和解シーン等多数あるが
中でも涙が止まらなかったのは
第18話「大地の果て」

朋也の祖母 史乃から
父 直幸の話を聞かされる所から始まり
お花畑で親子抱き合う場面も涙を誘うのだけれど
強く印象に残ったのが
電車の中で汐に渚の事を話す場面だ。


旅先から戻る電車の中
網棚には今の朋也と汐の様に
寄り添い合う小さなリュックと大きな鞄
車窓から海へ沈みそうな夕暮れが覗く

優しい父親の顔をして
おもむろに朋也は口を開いた

「なあ 汐。ママの話聞きたいか?」
「うん。」
そう頷いて隣にちょこんと座る汐

「そうだな・・・」
どこから話したらいいものか
渚の面影を辿り 朋也は穏やかに語り始める

「ママはな 何時だって 泣いてるような奴だった
 最初会った時もさ 自信がなくて 弱くて
 学校の坂の下で突っ立ってたなぁ」

「でな その坂の下で何て言ってたと思う?
 目瞑ってあんパンっ!だって
 それがママの癖だったんだ」

「食べたい物を声に出して それで勇気を奮い立たせる
 早苗さんはその頃仕事が凄く忙しくて
 弁当を作ってやる時間が無かったらしい
 無理すればなんとかなったかもしれないけど
 ママの方が遠慮したそうだ
 そういう人だったんだよママは」

「それで・・・ ははっ・・ええと・・・それで・・」

不意になだらかな言葉は詰まり
誤魔化す様な笑み浮かべる朋也

何が起きたのか分からず
無垢な眼差しで汐はじっと見つめている

「それでな・・ママは・・・・・」
渚への想いがまたたく間に瞳を覆う
真っ直ぐに頬を伝いながらポタッと
涙となって零れ落ちた

「・・渚・・・」

彼女と過ごした幸せな日々が頭を駆け巡り
出会った頃の笑顔が真っ先に浮かんだ

自信が持てなかった内気な渚
心が折れてしまいそうな時も傍にいてくれた渚
最後まで自分の事を愛してくれた渚

だけど彼女はもういない
汐と3人でこれから温かい家庭を築いていこうとした矢先
彼女は眠る様に息を引き取った

最愛の妻を亡くして以来
朋也は現実から目を背け
汐に語る事で初めて渚の死を直視したのかもしれない。

この時にようやく受け入れられたのだろう。
朋也の抑えきれない感情と共に
観ている側も涙が溢れ出てしまった。


今作品で名場面は沢山あるけれど
朋也役 中村 悠一さんと
汐役 こおろぎさとみさんの名演技に加え
間の空け方やBGMの使い方が完璧であり
ダイレクトに心を震わせるこの場面は
アニメ史に残る名場面と言っても過言ではないだろう。

■あとがき■
何度も涙してしまい充分満足出来たが
お気に入り作品にはなれなかった。

主な原因はキャラクターを
"亡くならせる事で涙を誘う"
これに尽きるかな。

死を以って泣かせるのではなく
生きている中に感動を見出して欲しいんだよね。
最後は報われたけれど
最終回直前まで救い様がない展開だったから
観ていて辛かったよ。

場面毎に切り取れば
素直に称賛出来るのだけれど
全体を通すとバラつきがあったね。

とはいえ 第18話は
始まりから終わりまでの流れが
見事な構成だったので
実に評価が難しい作品だった。

もう一度観たい!とはなかなかなれないが
身近にある繋がりや環境
そして家族を大事にしようって思える
感慨深い作品でした。

満足度 ★★★★★★★★☆☆ (8)

投稿 : 2014/09/08
閲覧 : 493
サンキュー:

75

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