しかchan さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
やらなくていいことはやらない、やらなければならないことは手短に
文化系部活動が活発なことで有名な進学校である神山高校で「古典部」という廃部寸前の部活に入部した男女4人が学校生活に隠された様々な謎に挑む物語を描いた作品である。
【良い】
・キャラクターの描き方
主人公である折木奉太郎を始め、魅力的なキャラクターが多く、それぞれが非常に丁寧に描かれている。
{netabare}まず、序盤での謎は折木の探偵としての能力を実証するためのものであり、それは視聴者のみに対して向けられたものではなく、ヒロインである千反田えるにも向けられている。
それによって、えるにとっての個人的な事情(謎)を打ち明けるに足る信頼関係が構築されていくことになる。
中盤では序盤での謎解きの実績を買われた折木を始めとする古典部のメンバー達がひとまずは評者として協力するという展開となり、一部の映画スタッフ達がそれぞれに提示する「解決」が妥当かどうかを判断することになる。
ミステリー観がそれぞれの「解決」に色濃く反映されており、また、折木達のミステリーに対する批評的な姿勢が描かれているのが実に興味深い。
終盤では本作のメインと言っても過言ではない謎が浮上してくる。
文化祭ならではの謎に仕立てられているのが巧妙であり、また、謎解きと物語が緊密に結びつけられているのが素晴らしい。
布石を上手く打ち、必要な情報の断片を古典部員達の物語の中に分散させて組み込んであるのが秀逸である。
結果として、これまでの謎解きとは一味違う、どこか少年探偵団風の探偵活動になっているのが非常に面白い。{/netabare}
・作画
各回、クオリティが高くて円盤での修正箇所も少ない。
【悪い】
・ED
前期のED曲である「まどろみの約束」は曲調が作品の雰囲気に合っておらず、あざとさが露呈している。
【総評】
一応、本作は「ミステリー」というジャンルに分類されるが、本格派ミステリーアニメとは少し違うことを念頭に置いて視聴してほしい。
散りばめられた謎を論理的に組み立て仮説を提示し、それを証拠に基づいて検証し、真相を追っていくと同時に視聴者が自ら推理を試みることを期待するような内容ではない。
「ミステリー」と言えば、劇的な事件や犯罪行為を解決するために推理していくことを思い浮かべる人が多いと思うが、本作はそのような劇的な事件等はなく、日常に起こる「不思議な出来事=謎」を解き明かしている。
何てことのない出来事を大袈裟に持ち上げているだけという見方もあると思うが、そこを割り切って視聴すれば、最大限に楽しむことができるだろう。