三崎鳴 さんの感想・評価
4.9
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観たい
光の中揺らめいた言葉も想いも全部、残さず伝えて、きっと。
Key制作恋愛アドベンチャーゲーム『CLANNAD』を原作としたアニメーション作品。王道学園物というジャンル内にて越えられない壁のうちの一作品として屹立する傑作。ノベルゲーム界隈大手ブランドKeyと言う事もあってヒロインの造形が巧い。電波系のキャラから正統派ヒロインまで幅広く用意しており、キャラクター性の魅力においては筆舌に尽くし難い。肝心のストーリーについて、まず学園モノとして押さえるべきポイントは押さえ切っているし、序盤に心霊の話題を持ってくることで物語が虚構であるという認識を植えつけて“話の粗や矛盾”といった要素を覆い隠しているのは実に巧妙。コメディ場面とシリアス場面の切り替えのバランスもよく、物語を緩急自在に操っている。映像や演出においては流石天下の京アニ、文句の付け所もない(キャラデザインは少し人を選ぶところもある様子)。さてここまで絶賛したが、どんな作品でも欠点は存在する。ただこれについては決して作者の落ち度というわけでもなく、むしろ私個人の斜めに構えた視点のせいなのだが一応書き留めておきたい。Keyは“泣きゲー”というジャンルの先駆者ともあり、どの作品にも感動的な結末が用意されている。各々のキャラクターの過去や家庭事情など、視聴者にとっても共感しやすい要素を引き合いに出し、決別や消失、死滅といった結末までゆっくりと動かしてゆく描き方が特徴的だ。病死や事故死といった不条理あるいは緩慢な死を描く事で感動を呼ぶのだが……。何かと“事故”というワードを軽く扱っていないかと感じてしまった。主人公の母親は過去に事故で死亡、風子は事故によって昏睡状態、一ノ瀬の両親は飛行機事故、合唱部の女の子も事故によりバイオリン留学取り消し――。運命の不条理をテーマの根幹に据えているが、描き方がワンパターンではないのかな、と思ってしまうのは私が素直に視れていない証拠なのかな。だからといって決して作品の質が損なわれているわけではありません。