manabu3 さんの感想・評価
4.1
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
六道輪廻の物語、主題歌「KARMA」と物語の結末
この作品は闇を彷徨う罪人の六道輪廻を描いた物語である。本作には少女を傀儡の様に扱うなど不条理で残酷な描写が幾多も包含されており心底生理的嫌悪感を抱く可能性がある為留意が必要である。
物語は全二十六話、主題歌はKOKIAの「KARMA」であり、この主題歌こそが本作の根幹と成っている。
{netabare}この物語は主人公の死を以て終焉する。{/netabare}その至って短兵急な結末には隔靴掻痒の感が否めないが是生滅法の定めならば是非も無く、記憶を回復しても尚己の意志で悪業を重ね、天理人道から背き続けた玲二の最期は自業自得だと言わざるを得ない。特筆すべきは主題歌「KARMA」の存在であり、この歌は玲二の行為を因果応報だと形容しつつ、己の業で終りに出来なかった玲二たちを慰藉し、弔歌としての意味も成している。即ちこの主題歌の選出と玲二が生きながらに罪を贖う結末を製作者が選択しなかった事実は、本作が贖罪ではなく六道輪廻を描いた作品であることに一定の根拠を与えている。主人公とヒロインの結末の相違は意志を持った殺し(業)であるか否かの違いかと推考するが、製作者の恣意性を考えればそれ以上の考察は意味を成さないと考える。一方、クロウディアの信念と徹底した卑俗な業は声優久川綾の好演もあり最早清々しく、十八話のリズィ・ガーランドの仁義と併せて見事であった。
物語の過程や演出に於いては登場人物の成長速度など不合理な点は枚挙に暇がないため最早言及し兼ねるが、「銃弾が当たらない」などで著名な真下耕一氏が監督である事は、其の事だけで物語の合理性の無さの説明に成っている。真下氏と言えば個人的には「NOIR」の「最後の銃声」を想起するが、其の事を本作の結末と関連付けて一貫性を探れば、視聴者に予期せぬ結末を演出して衝撃を及ぼしたい監督のあざとい考えが見て取れる。物語の粗雑な結末の影響もあってか結局のところ本作の根幹を成すのは善かれ悪しかれ輪廻転生を暗示している主題歌の「KARMA」であり、この曲が本作の合理性と一貫性を辛くも保たせていると同時に「救い」にもなっている。即ち本作はこの物語を以て帰結するのではなく、本作で棄世した登場人物の次なる「業」に期待させる製作者の手前勝手な作品に仕上がっている。しかしながら其の主題歌から奇天烈な曲に変更した時点で此の作品の一貫性と世界観は崩壊した。