らしたー さんの感想・評価
3.2
物語 : 3.0
作画 : 3.5
声優 : 3.0
音楽 : 3.5
キャラ : 3.0
状態:観終わった
このもぞもぞする感じはなに
原作もなにも知らない立場から勝手なことを言ってしまうけれど…
純粋にミステリだけでドリブンできない作家さんが、ハードボイルドとジュブナイルと謎ポエムをわけのわからん配合で混ぜ込むと、よくこういう作品が生まれますよね、と。
どこを尖らせるべきかがわからないまま、闇雲に「ミステリ」への憧れだけが形なく膨れ上がっちゃってる、あの感じ。
最後まで観てもやっぱりも背中がもぞもぞするような、髪の毛が一本だけ首筋にさわっとひっついてるような気持ち悪さが解消されることはなく、どうしてこうなった、という感想だけが強く残った。
まず第一にアリスおまえは一体何者なんだという。木の股から生まれたわけじゃなかろうし、親は?家族は?って野暮なことは聞かないまでも、何がお前をこの仕事に向かわせているのだ。お前をNEET探偵へと駆り立てるものは何なのだ。
たしかに第一話において、アリスは探偵になった理由を自らの存在理由と絡めて語っている。3.6秒に1人の割合で子供が貧困で死んでいる状態を「自分のせい」と言及した姿には、いたたまれないほど空疎な響きの中にも、声なき依頼者として「世界」を把握しようとする、何やら強靭な意思があったように思う。
彼女だけが、型破りな哲学で世界と対峙できる唯一の存在であるはずなのに、フタを開けてみればえらく卑近な事件を解決するためにハッキングにいそしんだり、ドクぺをいっぱい飲んでみたり、挙句の果てには安楽椅子探偵という設定を忘れてあっさりと外を出歩くや、昭和チックなヤクザの三下に「姐さん、お疲れ様ですっ!」って迎えられる始末で、立ち位置がどんどん安っぽくなっていくのがどうにも気になった。
アリスという設定の土台が完全に宙ぶらりんのままラストを迎えても、彼女に何が還元され、彼女の何が満たされたのかがさっぱりわからず、事件簿という最低限の枠組みを辛うじて維持しただけの、とっちらかった印象だけが残る残念な着地となってしまった。
余計なお世話なのは百も承知で薄っぺらい方法論を持ち出すならば、この手の事件簿形式の作品には、個別の事件とは別軸に進行する、一段階スケールの大きな謎ってのを用意するのが普通なんじゃないでしょうか。それが唯一の正解とも思ってないけれど、そこは成功セオリーに乗っかちゃってよくね?ていう素朴な疑問がわいた。
さらに余談だけれども、この作品のように、現実の世界を舞台にしたもの(世界観の説明を要しないもの)は、それだけでちょっとずるいと思ってしまう自分がいる。
本当ならいちばん作家コストのかかる苦しい部分をスキップしているわけで、その分のアドバンテージをどこかで見せてくれないと、及第点はあげられない。本作で言えば、各事件のストーリーラインが期待するクオリティに達していなかったように思えた。
あとこう、なんていうか、主人公の男の子のポジション?
染まらない程度にアウトローな世界に身を投じるという、あの都合のいい感じがね……。
もぞもぞしちゃう。
OPはコンテの切り方含め見事な仕上がりでした。