「新世紀エヴァンゲリオン Air/まごころを、君に(アニメ映画)」

総合得点
83.9
感想・評価
1448
棚に入れた
8433
ランキング
308
★★★★☆ 4.0 (1448)
物語
3.9
作画
4.0
声優
4.1
音楽
4.1
キャラ
4.1

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ネタバレ

くらうち さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 3.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

病んでる

TV版24話、シンジがカオルをにぎりつぶしてからの話。TVではできなかった人類補完計画について。
神話面と心理面に分けて観るのがいいと思います。

●神話面
少年よ神話になーれー♪と歌われているように、エヴァンゲリオンは神の物語です。
神話面は、禁断の果実を食べてしまったアダムとイブをモチーフに、その贖罪の物語となっています。
TVと本作をもって物語は一応完結となるのですが、ファーストインパクトに始まり人類補完計画に終わる物語の設定が非常にわかりずらい。
黒き月・白き月、知恵の実・生命の樹、裏死海文書、ガフの扉、聖書との関係など。
一応セリフとしては言ってますし、一般教養レベルのキリスト教の知識があれば気付くことはできるのでしょうが、ネット上の解説を見た方が早いでしょうね。。。
この凝りまくった設定がすごく、エヴァの人気の理由でもあるのでしょう。
(進化論と聖書が呉越同舟になってるって、考えみるとすごいことですよねw)
もっとも、監督の言いたい事は別にあると思いますし、知らなくても十分楽しめると思います。

●心理面
その言いたいことというのは、主に心理面に表れていると思います。
正直、シンジの心理を理解するのは非常に難しかったです。だって、時には自己嫌悪に陥ることはあっても、私は私のことが好きですから。
幼少期に親から愛情を注がれた人は自己肯定感が強くなります。幸せに生きるためにはこの自己肯定感がものすごく重要です。(だからこそ、自分が親になったときには子供にたくさんの愛情を注いでやりたいと思います。)
非行に走る少年少女は家庭に問題を抱えていることが多いように思いますが、親から愛情を注がれなかったことが一因ではないでしょうか。
シンジはゲンドウから捨てられ、母と死別したことにより親からの愛情を受けることができず、自己肯定感が非常に弱かった。彼は一種の非行少年であったといえると思います。
そして、自分のことが嫌いだという気持ちが、自分を殺したいという衝動につながる。この衝動と生への衝動の間で揺れる心理がものすごく細かく描かれていてすごいと思いました。
が、理解に苦しんだことは上述の通りです。

シンジは自分が嫌いなだけでなく、他者を拒絶します。
結局、人は人が怖いんです。よくわからないし、拒絶されるのが怖いから。犬は、見知らぬ存在が近づいてきたとき、低いうなり声を上げて威嚇しますよね。人間も動物なんだから一緒で、他者を威嚇し傷付けてしまう
私はこのことに気付いたとき人間関係に対してものすごく積極的になれました。知らないものが怖いなら、自分のことを積極的に話して相手の不安を解消してあげればいい。うれしそうに尻尾を振って近寄ってくる犬を、かわいいと思いますよね。
そして、人と関わることによりたくさんの恩恵を受けることができました。人は1人では生きていけない存在ですからね。
ですから、シンジの根源的な不安は理解できても、あそこまで過度の拒絶をする心理が理解しがたかったです。
シンジは結局は自己と他者が分け隔てられた世界を選択し、他者から愛されることを望んでいます。
お前が他者が怖いように、他者もお前のことが怖いんだ。だから、愛されたいなら一歩を踏み出せよ!と言いたくなります。
そして、監督が言いたかったことの一つでもあるのかなぁと勝手に思ってます。そうすると、心理面の描写はTV版と本質的には同じであるように思えますね。

そんなわけで、私の率直な感想は、「病んでる」でした。
もちろん、これは作品としての評価が低いことを意味しません。
心理学や宗教と結びついた精緻な設定は素晴らしいですし、アニメーションも20年近く前の作品とは思えないくらいハイレベルです。また、ここまで深くキャラクターの心理描写をした作品も類を見ません。
難解ともいえる設定群が後のアニメに与えた影響も計り知れないでしょう。
私などが言うまでもなく、アニメ史に残る名作であると思います。

投稿 : 2014/08/27
閲覧 : 327
サンキュー:

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