kwm さんの感想・評価
4.5
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
『泣ける』 眩しすぎる青春学園ラブコメディー
原作未読。他の方のレビューを見て良さそうだったので視聴。結果大正解でした。
至って平凡な男の子の主人公と、周囲の人を傷つけてしまう程の才能を持ちながら、残酷なまでに無自覚な同居人達との青春学園ラブコメディです。
特にヒロインの一人である『椎名ましろ』という少女が非常に特徴的。
彼女は部屋の掃除や着替え、喜怒哀楽の表現や日常会話といった人として当たり前の事ができません。
その代わりにそれなりの才能がある者ですら一生かけて努力をしても追いつく事ができない、様々な人外の才能を持っています。
端的に言えば軽度の『サヴァン症候群』で、桁外れの美的センスや記憶力を有する持つ者でありながら、当たり前の事ができないという意味では持たざる者でもあります。
そんな彼女と共に主人公を取り囲む他の同居人達も、彼女ほどでないですが秀でた才能や能力を持っています。
共同生活の中でお互いを刺激しあっていると言えば聞こえは良いですが、時としてその才能や能力は憧れや嫉妬の対象になっていきます。
『隣の芝は青い』と良く言いますがまさにその通りで、他人の才能にばかり目をやってしまう彼らの姿がこの青芝感を上手く描いています。
天才であるはずなのに人並みの行動に憧れてしまう椎名ましろはその典型例です。
誰しも何か凄いものが欲しいのではなく、自分に無いものが欲しいのです。
嫉妬や憧れ、時には恋心など、それぞれの思いが複雑に絡み合う『さくら荘』で、住人である生徒達はお互いに影響を与えながら少しづつ成長していきます。
自分自身と向き合い、挫折して負けそうになりながらも、自分が『どうすべきか』だけでなく『どうしたいのか』を考え、少しづつ前を向いていく彼らの姿はこの作品の見所の一つです。
前半はこうした彼らの成長に焦点が充てられていますが、後半はすれ違うばかりだったそれぞれの恋物語にシフトしていきます。
人によってはこの舵取りがマイナスになりえますが、たまに女性向けアニメを見たりする私にとってはこの色恋沙汰も好印象でした。
過去のエピソードなどを交えて丁寧に描写されているので、特定の人物だけでなくそれぞれの立場に立って感情移入する事ができ、どの人物視点でもキュンキュンしまくりでした。
砕け散っていく想いも爽やかでまさに青春。
シリアスとそうでない展開のバランスが良かったのも好印象でした。
普段は声質が好みでないと男性声優の方は印象に残らないのですが、主人公役の松岡禎丞さん(SAOのキリト君の声の人です)の演技が印象に残った初めての作品でもあります。
この方はコミカルな演技が凄く上手くて声質もピッタリですね。
初めてタイトルを見た時は『量産型おっぱいハーレムかな?』なんてネガティブな想像をしていたのですが、全くの逆で良い意味で裏切られました。
全体的なイメージとして、主人公よりも周囲を固めている仲間達の方が魅力的な作品の一つだと思います。
それぞれが個性的でキャラ立ちが良く、描写や掘り下げも丁寧でむしろ同居人達の方が主人公のようでした。
尺の関係上、目立った掘り下げもなく駆け足で終わってしまったキャラもいたのは残念な所です。
本来の主人公である空太(そらた)の優柔不断さや周囲への八つ当たりを見てイラッとくる事もありましたが、これは同居人達のキャラが魅力的であったからこそ余計にそう感じたのだと思います。
終盤の展開も実に『青春アニメらしさ』が溢れていてとても泣けました。
タイトルでかなり損をしていると思われ、万人に勧めたい大衆向けの作品です。
久しぶりに見終わった後に『ああ、終わってしまった…』と虚無感を味わいました。
以下とても印象的だった場面
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椎名ましろより
『私の中から出ていって!!……知らないっ…知らないものこんな気持ち…』
不器用ながら相手に存在の大きさを伝えつつも拒絶し、自身の感情に戸惑うという椎名ましろらしさが凝縮されていた台詞。
色々な意味で心に突き刺さり非常にリアクションに困る台詞。
三咲の姉 風香より
『ずっと綺麗なままで傍に置いておきたいから、だから抱くのは私なんでしょ』
ほぼ回想だけの出演でスポットが当てられる事はなかったものの、とても切ない台詞でした。
三咲の代わりだとわかっていながら想い人に抱かれ、体で感じ心で泣いていた彼女が爽やかに言い放ったこの台詞は切ないの一言。感動した!(小泉)
あまりにもシリアスでガチな台詞だったので、この一瞬だけ月9ドラマを見ているかのような錯覚を覚えた。
美咲と仁の関係を引き立ててくれた良い脇役でした。
三鷹 仁より
『近すぎて、遠い存在かな』
ありきたりな言い回しだけど、美咲への恋心と自身の不甲斐なさ、才能への嫉妬が入り混じっていた彼らしい台詞。
コンビニ店員より
『あ~とござっしたぁぁ~』
店員の言うありがとうございました。
何故かここだけ凄いリアル。
あまりにもリアルすぎて良い意味で台詞が完全に浮いてしまっている。
このノリを持ち込んだ所からして台詞を考えた人は絶対に悪ノリ好きなVIPPERだと思うの。
【椎名ましろ】
生後間もない赤子のような彼女には、ついつい世話をしたくなってしまう可愛さがありました。
『ほらほら~』とか言いながら口の周りについたチョコレートやアイスを拭き拭きしてあげたい感じです。
あ゛あ゛あ゛あ゛可愛過ぎて鼻血出そっ
【青山 七海】
私は東京生まれなので関西弁がわからないのですが、彼女の関西弁は多分エセです。
それでも素になると関西弁が出るというギャップは氷菓の大天使チタンダエル級の破壊力でした。
女の子のギャップはどんな面でも反則ですね。
上手くいかない事だらけでしたが最後まで理想的な良い子でした。
お前がナンバーワンだ !(ベジータ
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