renton000 さんの感想・評価
3.5
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 3.5
音楽 : 3.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
いろいろ惜しい!
あらすじは他の方のレビュー等をご参照ください。
初見でした。105分くらい。
面白くなりそうな要素は揃っているのですが、あまり活かし切れていないようでした。なんだかもったいない作品に思えました。主にストーリーと作画についてレビューします。
ストーリーについて:
泣ける話ではあるんですけどね。でも、何かを失った人が、がんばったり、取り戻したり、新しい何かを見つけたりっていうのは、感動して当たり前だとも思うんですよ。あと別れも。この泣けるシーンに至る描き方が、作品の良し悪しを決めるわけで、泣けるだけが作品の価値だとは言えないですよね。
で、この作品はと言うと、そもそもストーリーラインがブレてしまうんです。
ストーリーを構築している要素を挙げてみると、「ユウタと父」「ユウタとサエコ」「サエコと兄」「サエコの生き方」「未来の恋人との別れ」「友人との別れ」「ダムに沈む村」などが挙げられると思います。でも、ここに挙げた各要素の根底に一貫性がありません。バラバラのショートストーリーに近いんです。個々を重たく扱っていないので、物語はスッと流れていくんですが、一本の映画というよりは、オムニバスの作品を見ているような感じを受けてしまいました。一貫しているのは、舞台と季節くらいで、これだけでストーリーを成立させようとしているために、むしろ主題を弱めてしまっています。
「失われたもの」と「失われなかったもの」があって、後者が「永遠の夏休み」につながるというのは理解できます。でも、個々の話を有機的に結合できないのであれば、もう少し要素を減らしても良かったのではないでしょうか。主人公がこの作品の中で機能してたかどうかすらも疑問が残ります。途中からユウタの話ではなく、サエコの話にスライドしていますからね。良くあるテーマを使うこと自体には、何も問題はないのですが、詰め込みすぎてストーリーラインを瓦解してしまうなら本末転倒です。
一貫性を作り出せていない要因の一つにアイテム描写があります。キーアイテムは、蛍・指切り・握手・帽子・髪飾りなど、各要素に対して個別に用意されています。もっと絞るか関連させるかしなければ、オムニバスからは逸脱できません。数が多いために個々の印象がとても弱くなっています。そのためにエンディングが「え?それがきっかけ?」みたいな変な驚きを持ってしまうんですね。ご都合主義のエンディングは別に嫌いじゃないですが、それは描写を重ねた上でこそ成立するような気がします。アイテム描写が弱いなら、同じ構図で強調しておくでもいいし、ご都合主義ゆえの説得性が欲しかったです。
携帯電話も強調されてた割に、過去に持っていけないだけ。時代描写くらいにしか役に立っていなかったのではないでしょうか。タイムスリップした先の時代を確認するのもテレビと新聞の日付。分かりやすいけど、あまりセンスは感じられません。神主さんが、鳥居の真ん中を走り抜けちゃうのもやや乱暴に映りました。その後で蛍への思い入れや信仰を語られても説得力に欠けてしまいます。
他にもいくつか注目してたアイテムやセリフがあったんですけど、ほぼ機能せず。細かなこだわりを感じられず、いろいろと消化不良でした。
作画について:
背景はきれいでした。山間部という立体を使って描かれた子供たちの動きは、とても躍動感にあふれたものになっていたと思います。ただ、人物描写は過剰演出が過ぎました。
アニメというのは、動けばいいというものではなくて、動きを表現することに価値があるって思いたいわけです。実写は鼓動がある限り静止させることは出来ません。マンガは動かすことが出来ない。でも、アニメでは止められるし、動かせるんです。この作品は、動きっぱなしで輪郭が不規則にブレるから、どこに注目したらいいのか分かりませんでした。ある意味、実写的なアプローチを試していたんだと思います。ただ、この止められないという制約が、結果として、強調するときには寄るだけといったつまらないカメラワークの繰り返しを許してしまいました。もう少し静止と動きのメリハリをつけてくれるだけでいいんですけどね。ストーリーがあっさりな分、人物描写で味付けしたのかなとも思いますけど、インパクト以上の意味が見出せませんでした。なんというか、好き嫌い以前の表現の部分で不満が残りました。
対象年齢等:
普段の生活にちょっと疲れちゃった人向けの作品ですかね。何も考えずに見れるし、テーマも重くないからストレスないしね。子供はどうなんでしょうか。これを見るならほかの作品を見て欲しいかな。