Dr.コトォ さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
ちょっと面倒くさい、だからこそ
アリエッティに続き米林監督のジブリ作品。
今回もまた宣伝映像の雰囲気から察するとファンタジックな作品であることが伺えますが、
良い意味で裏切られた、と思いました。
アリエッティの時も感じましたが、米林監督のジブリ作品はとことんリアルで、
触れるとなんだか面倒なことになりそうなツボをあえて押してくるような、
そんな作品作りをしているように思えます。
実際、この作品は歴代のジブリ作品の中では最も「現代」を描いています。
(アリエッティではガラケーが出てきましたが、今回はスマホです)
{netabare}
内容ですが、主人公の杏奈は体が弱く、家庭環境にも恵まれていない、
そのことに関して非常に鬱屈した感情をため込んでいる少女です。
体が弱り、周囲の人間とも良好な関係を築けない中、杏奈は育ての親のもとを離れ
北海道の田舎に療養のため滞在します。
そこで見つけた古い洋館にて、マーニーと出会います。
マーニーという初めての友達と過ごすことで、
心に溜まったわだかまりが昇華されていくことまでは予想できますが、
マーニーにはある秘密が隠されています。
その秘密と、杏奈が持つ遠い日の記憶がリンクし、
マーニーと過ごすかけがえの無い時間がつくられていくのです。
マーニーが抱えた秘密と苦しみが、杏奈の心にまで深く痕を残したままでいるという事は
別に良い事でもなんでもなく、むしろ悲しい事だったと個人的には思います。
だから、療養の地で、「普通に」新しく友達を作って楽しく過ごすというよりは、
杏奈とマーニーが出会い、二人の時間を過ごすことが、
この苦しみを癒す一番の方法だったのだと最後になって感じました。
最後にすべての感情が昇華される感覚はこの作品において特徴的な部分ですね。
{/netabare}
見終わってみると、この作品は家族や友人と一緒に観るというより
一人でこっそり観ていたいような気がする部類の作品かも知れない、
と感じましたね。
二人が秘密を語り合うのがこの作品ですから。