イシカワ(辻斬り) さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
見どころと構成について(ネタバレ)
記載されているレビューに対する反論・論戦を行いたい人は、メッセージ欄やメールで送りつけるのではなく、正しいと思う主張を自らのレビューに記載する形で行ってもらいたい。したくない時、受諾しない時は以降の文章を読み進めないこと。受諾する方のみ文面を読んでもらいたい。参考になったと思うときのみ、参キューしてほしい。
構成の仕方、登場のさせ方などに工夫を凝らしているのにも注目したいところ。
例えば……第一話を観察する。
まず、衛兵がロレンスと話をする。衛兵の役割は異端の村があるのだという事を視聴者に知ってもらうことにある。
一神教が大半を占めていて、大攻勢に出て異教徒狩りをした過去がある。異教徒の村でこれから収穫祭が行われる。ロレンスは旅商人である。売買の説明もある……
ワンシーンの間に相当量の情報が散りばめられている。
狼はもう役に立たない、今は伯爵様様だ、と農民にいわせるため、それを突拍子もない出現に見せないために、収穫祭として自然形で見せて行くやり方も秀逸。
収穫祭の中にもふんだんにホロの話題が入る。
そして、クロエという女性を「ホロ」に見立てるというのも小憎らしい演出だ。
ホロとクロエの対立関係が先に待ち構えていることを暗示させている。
ホロの出現以降は、対話によって変身の条件や存在の定義まで話が出る。一見すると自然な流れだが……
実ははじめから今まで、ホロというもう一人の主人公の説明を延々と聞かされているのだ。
一神教と古神ホロの立場の違い、大半は一神教の信徒なのでホロの周囲は敵だらけであること、もちろん正体が発覚すれば身に危険があること。
昔に取り交わした人間とホロとの約束、その約束は人々に忘れられてしまった。大して崇められてもいない事実。
ただ観ているだけでは簡単に聞き流してしまうが、実は多くの情報が隠されている、
それを見つけるのは面白い。原作を読んでいない俺だが、アニメにしようという苦心のほどがしのばれる。
狼の神であるホロと旅商人ロレンス、それぞれの視点で観る心理描写を考えると一つの回で二度面白い。
ロレンス側から見たら、もう一度見直してホロ側を見るのも無意味ではない。
EDの最後に、ロレンスが次の回の題名をいったあと、ホロが同じ題名をもう一度口にする。
これは何の意味もないことではなく、互いの視点から観るとこう違うのだ、という隠喩に思えるのだ。
内容は確かに予定調和なところがある。
一神教の信徒から追われる事件が発生する。一神教教徒のことをホロは面白く思っているはずもないのだが、彼女があしざまにいう台詞は一度もない。
それはロレンスが一神教の教徒のようなところがある分、気を使っているのだろう。そういう口にしない演出も深みがある。
「昔は天地を作ったとかいう神のことなどとんと聞かなかったのだが」というような台詞をホロにさせたりするのも他のファンタジー作品にまずない演出だ。
一神教の拡大のために迫害されてきた古き神々の歴史を知っていて、それを物語に取り込もうとする姿勢もよい。
古き神であるということを題材にするのなら、迫害事件は予定調和だ。
流刑の神々・精霊物語などを作者は読んでいそうな気がする。
ラノベが悪いとはいわないが、ラノベだけ読んで書くファンタジー小説書きばかりがいて驚く。戦闘シーンがないとファンタジーが書けませんというラノベ書きが多すぎる。
そんな書き方ではゲームの焼き直し以上にならない。同じラノベ原作でも資料を読んで執筆したものとは十分な差がつくものだと実感する。
次々に現れる商人の「にこやかな顔の裏にある思惑」も想像すると楽しい。
ちょっとした登場人物はストーリーを動かすための「単なる駒」でしかないし、そこまで考えて作られていないのが普通だ。
しかし、商人が主題のこのアニメだと、どう儲けようか、損をしないようにするにはどうするか、などといった、小説にすると文中にない空白がある。
その空白に隠された意図を読んでいくのはまたこのアニメ独自の楽しみといっていい。
ロレンスはいつものように、危険で甘い匂いのする商談に首を突っ込み、ヒヤヒヤさせ、どうにか切り抜ける。
これもまた予定調和であるし、回が進めば男女関係のもつれも出てくる。
よくよく考えてみるとすべてお約束を綺麗にまとめたに過ぎない。しかし、とても難易度は高いものだ。
商談の話だけなら現代でも可能だが、視聴者に興味を持ってもらえるかである。中核の話だけ持ってくると気難しい話ばかりだ。
それをファンタジー風味に味付けして、面白くしろといっても簡単にはできない。
剣も魔法も中心として出てこないファンタジーは、高難易度の作風だ。それをアニメにするのはまた難しいはず。
難しいから珍しい。珍しいぶん、楽しみ方はいろいろとあるのでどんどん見つけてほしい。
追記
レビューに記載された言論を規制したい人は、個人の意見を以てするのではなく、あにこれの法的論拠に基づいて規約に記載する必要がある。
運営諸氏に連絡し、説得し、規制を規約に付け加えてもらうこと。