しもん さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.5
作画 : 4.5
声優 : 4.0
音楽 : 5.0
キャラ : 3.0
状態:観終わった
宇宙船地球号
刺激的な音楽、CG技術を駆使した緊迫感のある人型兵器の戦闘シーン、独特秀逸な世界設定が魅力のSFアニメ。
王道な感じのラブコメ要素もあるが、正直それはおまけ程度。グロやキモが無理な人にはお勧めし辛い。それ以外の人で、考えながらアニメを見るのが好きな人には是非勧めたい作品。社会的な問題について興味のある方にはさらにおすすめ。
今日、特に21世紀になって、国際規模で、大量生産・大量消費の時代からの脱却が本格的に始まっているように思う。
化石燃料は残り数十年で底をつくとういう話だし、他にも、原子力発電の廃棄物処理の問題、水不足、食料不足、森林破壊‥‥
問題は社会構造まで届く、根の深いものばかりだ。これらがすでに一般人が無視できる段階を超えてきている。従来の資本主義的な考え方も根本から揺らいでいる。
「地球温暖化」はその主となるものだ。
気温変化の速度が植物の移動速度の限度を超えると、生態系が破綻し、周辺の動植物が死滅する。これは食料難を招き、産業の崩壊が起こる。お金を考えるだけでも、尋常ではない損失を生む。下手するといくつかの文明は滅びるとまで言われる。
これが現実味を帯び出しているということだろう。現在、循環型社会の形成が、国や多くの自治体の大きな活動方針の一つとして組み込まれている。
世界崩壊の危機。
フィクションじゃない
重い、現実。
日本にとっても環境問題は今世紀の最大なテーマであると言えるだろう。「持続可能な発展」という言葉が、一般市民レベルでの活動まで影響を与え出している。太陽光発電も、スーパーの袋が有料なのも、企業の宣伝に環境配慮が使われるのも、ごく当たり前になってきたように思う。
一般市民が被害者であり、加害者でもある。この問題はそんな性質を孕んでいる。私たちの、これからの在り方が問われている。私たちが起こした世界の変質は、次の世代へと、確実に受け継がれていく。
残酷な現実として。
このアニメ、シドニアの騎士は、こうした背景を踏まえたSF的な世界を表現している。
食料不足対策としての遺伝子改良による人体光合成機能。火葬場、ではなく有機転換炉。謎のエネルギー源、ヘイグス粒子。生物の源である海の描写。人口減について話合う若者たち‥
これらはシドニアが、限られた資源の中で生き抜くための高度循環型社会であることを匂わせる。
宇宙船シドニアは、過酷な現実の中を突き進むサバイバー。
「人類存亡を賭けた戦い」という言葉が、これほどまでにリアリティを持って訴えかけてくるアニメはない。
強大な力で人類を脅かす存在、ガウナ。正体不明で不気味な敵と戦うために、若者たちは衛人に乗り、残酷で圧倒的な現実と戦う。惨たらしくも避けられぬ道を、決意を持って歩み続けている。
人類の勝利の為に戦い続ける彼らの姿に、熱く、特別な思いを抱くのは、何も不思議はない。
私たちもまた、生き抜くために、戦い続けているのだから。