青陽 さんの感想・評価
4.0
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
心雨
【雨降りの日は憂鬱か、それともワクワクするか】
たしかに雨はなにかと面倒でもあるけれど、お気に入りの傘をさせる日でもある。
それに
ぽつぽつ
しとしと
サーサー
ザーザー
びゅおんぐおおおおおお(typhoon!)
…雨音は非常に心地よい(一番下は除く)
風景はおおかた晴れているときのほうが好きだけど、
(夏だけかな?)雨の日は日没ころに
辺りがなんとも言えない青さに包まれてどこか幻想的な雰囲気となる。
そんな
いつもと違う特別な天気の日、
特別に憧れる少年は
特別な場所で
特別な人と出逢う…
ひと昔前の少女マンガのような浪漫てぃっくなストーリー
浮世絵に雨が描かれたときから何年経ったのだろうか…
ついに雨の描写が奇跡のレベル
実写を超えている
写実的であり、しかし、現実より美しい。
季節の変化による雨の強弱とストーリー展開がマッチするよう構成されていた。
ため息が出るほど美しい雨の描写
新緑は実際に見ても綺麗だけど
雨の日の水たまりであそこまで美しいものは見たことが無い。
水鏡という表現がぴったりなキラキラっぷり。
それはアニメーションならではの美しい嘘。
星空もそう。
登場人物たちが見上げる満天の星空。
都会でも、満月の日も、そこには満天の星空。
実際は他の光に照らされて星明かりは弱くなるけど、アニメでは満天の星空。
それはなぜ?→リアルさを求めたのではなく、彼らの心を表しているから。
心象描写。白箱でも触れてたし、そうじゃなくても
日本人なら誰もが国語の授業で習った「走れメロス」などで使われている、とっくの昔からある表現方法だ。
雨の日の午前、穏やかな雨、穏やかな心、穏やかな空間…
本作でも主人公の心に寄り添うように雨はその表情を変えている。
その逆も然り。雨に寄り添うように物語も主人公も動いていく。
梅雨明け。カラッとした晴天、誰もが望む季節のはず…でも主人公にとってそれは渇きだ。靴も作れず、あの人にも会えない。焦燥に繋がる。
そんな中、突如として明かされる彼女の正体。
事の真相。
言の葉の理由
彼の心に伴い
雨は激しく、風は吹き荒ぶ。
繊細な少年の心は傷ついた。
向こうはずっと知っていた。だけど、だから、何も言わずただ見ていた。子どもだからと、相手にされていなかったとそう誤解して…
彼女は歩けなかった。
歩き出せなかった、歩き方を忘れてしまった。だけど、あの場所で彼に出会って穏やかな時間に癒されていった。本当は彼女も彼を思っていた。しかし、決定的な立場が、遠ざかる距離が、二人の間には広がっていた。受け入れることはできなかった。でも失いたくなかった。
彼女は靴を履くのも忘れて歩き出す、走り出す。
彼を追って、彼へ
本当の
言の葉を伝えるために
烈しさを増す雨、ぶつかり合う感情
…そして、晴れ渡る
通じ合う思い
秒速とは違うのだよ、秒速とは…!
よかった、バットエンドにはならなくて…理解り合えてよかった…。
と思うと同時に流れ出す秦基博カバー「Rain」のサビ、物語は最高潮!
しかし、私は思ってしまった。
…
{netabare}
おい、これ秒速と同じパターンやないかいっ!MVパターンやないかいっ!…と。
新海作品を追っていたが故に起きた悲しい事件。
そんな風に感じて、物語から一気に現実に戻ってきてしまった…そんな自分が残念だった。
{/netabare}
そんなどうしようもない私を置き去りにして
物語はエンディングを迎える。
彼女は実家に戻り、二人は離れ離れになる、が、この遠距離カップルならこの先も大丈夫そうだ。
スマホも普及し、改札もピッと通れる時代に手紙のやり取りというのは
最後まで何とも新海さんらしいロマンチックさ。だが、それでいい。
あの手紙が二人の新たな「言の葉の庭」なのだから…
「恥ずかしいセリフ禁止!」