「風立ちぬ(アニメ映画)」

総合得点
71.8
感想・評価
815
棚に入れた
4290
ランキング
1274
★★★★☆ 3.8 (815)
物語
3.9
作画
4.3
声優
3.3
音楽
4.0
キャラ
3.7

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ネタバレ

かしろん さんの感想・評価

★★★★☆ 3.8
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

生きた証として

宮﨑駿監督の長編アニメからの引退作品。
映画館には見に行けず。
先日発売のブルーレイボックスにて鑑賞。

感想{netabare}
零式艦上戦闘機の設計者堀越二郎の半生を堀辰雄の小説「風立ちぬ」とミックスして描いたフィクション。

見て思ったのは、監督自身のことなのかな、と。
美しいものに魅入られると同時に、飛行機設計という才能を持ってしまったが故に背負う堀越二郎の業を描いている。
これは、ピュアで美しい子供という存在に魅入られると同時に、アニメーション制作という才能を持ってしまった自分が背負っている業を堀越二郎というキャラクターを通して発表しているのでは、と思ったのだ。


劇中の二郎は徹底して美しいものにしか興味が無い。
震災時に出会うジャリの菜穂子は記憶から消し、美しいお絹しか覚えてない。
成長した菜穂子が美しいから興味をもつ。
美しくない妹との約束は尽く忘れている。
鯖の骨の美しい曲線を活かした美しい飛行機の設計にのめり込み、婚約者の菜穂子を二の次にする。
まぁ、酷い男である。
しかし厄介なことに、彼にそれらに対する悪意が微塵もない。ただただ純粋純真に美しいものにしか意識がいかないのである。


また、二郎は美しい飛行機を作りたく実行するのだが、その結果、それは戦闘機として多くの人間を死に追いやることとなる。
一方の宮﨑駿はたしかこんなことを語っていた。
「子供に”自然はこんなに楽しく色んなとこが待っているんだよ”と分かって欲しくてトトロを作った。
ところが、ビデオでトトロをもう何十回も見てます、とか親御さんに言われ、外で遊ばずテレビに夢中になる子を作ってしまった」。
自分の望みとやったことに対する報い。
その先にたどり着いた生と死の間、煉獄。
そこに辿り付いてなお、まだ作り続けたいと思う業の深さ。


こんな人間が自分なんですよ。
こういう風にアニメーションを作って来たんですよ。
自分が背負っている業とはこういうものなのですよ。
これをさらけ出し、引退作とする。

そうか。そうやって考えると、この作品てアニメーション制作者として生きた証を自らの手で表現しているのか。
うん、何というか、凄い作品だ。{/netabare}

声優庵野秀明について{netabare}
主人公の声をエヴァの監督庵野秀明がやっている。
当たり前だが、上手くない。巧いとか以前の問題である。
では、なんで庵野秀明にやらせたんだろうか?
勝手に推測してみよう。

1.感情を込めたくない、過剰な演技をさせたくない
堀越二郎というキャラを考えると、あんまりカチッと演技をしてしまうと、その性格が酷いものになり過ぎる。巧い声優にあまり感情を込めないで、と言えばやってくれるだろうが、それではあくまで感情を込めない演技になってしまう。よって、演技云々以前の素人でイメージに合った人を選んだ。
2.照れくさい
感想にも書いたが、堀越二郎を通して自分を描いていると思う。つまり、自分の声をあんまり格好良い人にパシッとやってもらうことに対する照れがあるのではなかろうか。
3.バトンタッチの顔見世興行
長編映画を去る自分がバトンを渡せるのは庵野しかいないと思ったから。
完成会見で「ナウシカの続編を作ることを許可しても良いかも」と言ってみたり、NHKの番組で「庵野に絵コンテだけは仕上げてから倒れてくれと言われてる。絵コンテだけ仕上げてくれたら後はやるから、って」とか言っているのを見てそういう一面もあるのかな、と。
4.興行的に
声優を使わないジブリだが、有名俳優でもない庵野の起用は、興行的には一般向けとは言い難いから無いか。

庵野秀明の起用は、その意味を考え、意図を汲み取ろうとすると有りなんだが、映画という娯楽を単純に楽しむにはあの上手く無さはさすがに邪魔。{/netabare}

投稿 : 2014/08/20
閲覧 : 277
サンキュー:

6

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