くし さんの感想・評価

3.6
物語 : 3.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態：観終わった

漫画家を夢見て突き進むスポ根的な物語

バクマン、１期から３期まで各25話で全75話。これはそのうちの1期。

中学3年同級生二人が一人はストーリー、一人は漫画の絵と、二人三脚で漫画家を目指し、自分らの作品をアニメへと、リアルな夢見る物語。
そこには漫画家故の葛藤する姿、ストーリーに悩み、作画に迷い、思いのほか困難な作業だと想像できるが、よそ見せずに頑張る、いや、突き進むこの２人の、否応無しに突きつけられる命がけのサバイバルを見る事ができる。
漫画作成のしくみ、仕事場の様子、ネームの作成から編集者とのやり取り、編集者同士の絡み、出版社内の情景も窺えるので、漫画家になった様な気分を味わう事が出来た。
原稿の持ち込みから始まり漫画の入賞を目指し、読み切り、連載、載るも打ち切りの恐怖。何度もネームのやり直し、原稿の描き直し…などなど、この世界の困難さをまざまざと思い知らされ、

俺にはムリ！　よくもまあ、コツコツと。それも長期間にわたって…。
自分も似たような仕事をしているけど、そんな根性は微塵もないとハッキリ断言できる！…w。

アシスタントとの関係、漫画家同士の繋がりや、ライバルとの競い合いから苛烈な生存競争にと人間模様も色とりどり。
しかし、お互いを思いやる心情が溢れていて温かい情感をもたらしている。
また、このストーリーと平行に登場する人達それぞれの恋愛劇もふんだんに盛り込まれていて、凄く面白い。


{netabare}
真城最高（マシロモリタカ…愛称サイコー）中学３年。ごく普通に生き普通に平凡、夢も特に無い。しかし絵は幼い時から上手い。
高木秋人（タカギアキト…愛称シュージン）真城の同級生で学年１位、全国でもトップクラスの秀才。しかし漫画家になりたい夢を強く持つ。

シュージンはサイコーに「俺と組んで漫画家になってくれ」。話はここから始まった。
シュージンは幼い時から漫画が好きで、漫画家になる事が夢で「男に生まれたからには大物に、金持ちに」と熱い情熱と、「俺には文才、お前には画力がある」とサイコーを強く誘う。しかしサイコーはその気は無い。

サイコーには想いを寄せている同級生の「亜豆（アズキ）」がいるのだが奥手でいつも見つめているだけだ。シュージンから亜豆は声優なる事を夢見ている事を知らされた。
そしてシュージンの企てでサイコーは亜豆に「僕達が漫画家になる事が出来て、そして漫画がアニメになって、ヒロインに亜豆に…。その夢が叶ったら結婚してください！」と告白することになる。
「わかった、約束する。だけどその夢が叶うまでは会わない。それまではお互いよそ見せずに頑張るの…」亜豆から答えが返ってくる。夢が叶えば結婚をしてくれる約束を交わしてしまった。
それがきっかけで、サイコーとシュージンは漫画家に、亜豆は声優になる為の奮闘が始まる…。
{/netabare}


漫画好き、アニメ好きなら一度は夢を見て憧れた事があるだろう「漫画家」。誰もが漫画を描く事にチャレンジし、ストーリーを膨らませ、試した事があるだろう。しかし現実のギャップに夢から我に戻ったり、挫折を味わったり、夢はやはり夢だと平凡で安全な普通の道を選んだ人がほとんどだろう。
この物語はそんな普通の道を選んだ漫画・アニメ好きな人にとってワクワクする事間違いなし！で、

自分もこんな世界で活躍したかったなぁ

そんな幻想を現実に転化し露に見せてくれる物語でした。
ただアニメだけあって、「こんなに上手く行くはずないでしょ」と思ってしまうけどね。
だけど、私のように夢見る人間が滅びようとしている世界で、必ずしも根拠が明白でなくても、この心意気は大切にしたくなるものだ。
人生を振返る事が出来て、大変面白いなかなかいい作品でした。