「刀語-かたながたり(TVアニメ動画)」

総合得点
88.3
感想・評価
3065
棚に入れた
16300
ランキング
119
★★★★☆ 3.9 (3065)
物語
4.1
作画
3.8
声優
3.9
音楽
3.8
キャラ
4.0

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ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 5.0 状態:観終わった

旅路の果てにあるもの

 原作は未読。
 広義では歴史もの、時代劇の範疇の作品なのだろうが、時代背景は風俗や政治体制などは江戸
時代に近いが、実際の歴史とはまったく異なるもので、かつ他作品で見られるような実在した
人物などは一切登場せず。そういう意味では一種のファンタジー作品と言えるようで、物の怪や
幻術などの類は登場しないが、伝奇もののような趣きもある。
 キャラデザインは昔話を思わせるような可愛いタッチであるが、ファンタジー作品として
捉えると、このキャラデザインは作風に合っているように思える。個人的にはとがめの左右
非対称なファッションが非常に良かったけど。
 この可愛らしいキャラデザインに反して、内容的には結構派手に人が死んでいくが、この
ミスマッチ感覚もこの作品の個性と言えそう。

 ストーリーは鑢七花ととがめによる完成形変体刀収集の旅を主軸に進められていくチャンバラ
ものだが、チャンバラものであるにも関わらず、主役の七花自体は虚刀流という刀を使わない
異色の流派であるところが面白い。
 この七花と戦うことになる完成形変体刀を持つ者達もそれぞれに独特の個性を持ち、個性と
個性のぶつかり合いといった感じ。
 ただ、内容によっては肩すかしのようなものもあり、その最たるものが日本最強と謳われた
錆 白兵との戦い。予告編で散々煽っておいて、実際の戦いは後日の七花ととがめの会話のみ。
 ここまでやってくれるとむしろ潔い印象で、逆にそこを埋めるべく描かれた鑢 七実と
真庭忍軍の戦いは七実の実力と狂気を知らしめる重要かつ見応えあるものだった。

 実際に映像で一番ウェイトが置かれているのは七花ととがめの道中で、一種のロード
ムービーのような味わいがある。
 まず二人のやり取りがなんとも楽しく、言葉選びのセンスがいいのか、どうでもいいような
内容の会話もそれなりに面白いものになっている。
 特に長々とした会話が続く様は、この作品が一話1時間ものである構成をうまく活かした
ものであるように思えた。
 この会話の妙は七花ととがめ以外のキャラの会話にも随所に見られ、同じ原作者である
「物語シリーズ」や「めだかボックス」などに通じるものがある。
 また、この二人の道中における堂々としたいちゃつき振りも楽しい。映像的にはそれなりに
エロスを感じさせる部分もあるのだが、精神的には子供が無垢な気持ちで触れあったり、
じゃれついているように見えてしまう。実際、とがめはともかく七花の方は本当にそんな気持ち
だったのではないだろうか。

 ロードムービーは旅自体が旅人を人間的に成長させていく作品が多いが、この作品も
そういった傾向が強い。
 特に七花の場合、虚刀流により刀として育てられたことや、島育ちで他人との接触が無かった
ことにより感情が希薄だったのが、この旅によって人間的感情が芽生えていく過程が顕著。
 戦いでも、序盤において何の躊躇もなく人を殺していく様は、雰囲気こそ冷淡なものではなく
飄々とした印象だが、やはり殺人機械といった感じ。
 それが次第に変わりつつあり、特に契機となったのは姉の七実との戦いだったようで、それ
以前とそれ以後の戦いでは心のありようがかなり違う。

 一方のとがめも変わりつつあったのだろうが、復讐自体が己のアイデンティティとなっていた
ようで、変わりきることができなかったみたい。
 可愛らしい容姿と、コミカルな言動や仕草とは裏腹に、復讐のみを生きる糧にしてきた壮絶な
人生を歩んできたのだろうなと思わせるものがある。
 道中において、刀集めの旅を終えた後を楽しげに語る描写が幾つかあったが、とがめ自体は
それが夢のままで終わることが判っていて語っていたようで、なんとも悲しいものがある。
 結局は旅半ばにして死んでしまうが、旅を終えた後の七花との関係を考えると、本人が言う
通り幸せな気持ちを持ったままでの最後だったのだろう。

 終盤において四季崎 記紀の歴史改変という壮大な計画が判明し、作中においてSF的色合いが
強くなってくる。
 史実とはまったく異なる時代背景を描いた作品だったため、先に一種のファンタジーと
書いたが、実際の時代背景や歴史人物が登場しなかったのは歴史改変によるものと、設定的には
それなりに理に叶ったものであった。
 結局、大局的歴史として見ると、七花ととがめを始め、いずれも四季崎 記紀の手の平で
踊らせれていただけなのかもしれない。それでもそれぞれが己の歴史を精一杯描こうとしていた
ことはよく伝わってくる。

 最後の最後に七花と否定姫という意外な組み合わせの旅で幕を閉じる。
 この二人の関係はどう捉えたらいいのか判らなかったが、七花ととがめの旅のように、この
新しい旅も七花と否定姫、そして二人の関係性を変えていくのだろうか。

投稿 : 2015/05/24
閲覧 : 326
サンキュー:

7

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