退会済のユーザー さんの感想・評価

3.0
物語 : 3.0 作画 : 3.0 声優 : 3.0 音楽 : 4.0 キャラ : 2.0 状態：途中で断念した

タイトルなし

ティナ編までの7話を観たので、もうゴールしていいよね……?
ってことで視聴断念でした。

視聴を切った一番の理由は、主人公を好きになれなかったから。
ザ・ラノベ主人公。これで言い表せてしまう造詣。なんだったらPCゲー主人公でも可。
コメディ時、シリアス時、どっちのパートにしろ、言うことやることがどっかのラノベで読んだことがあるパターンなんだ。

そもそも、世界観があんまりラノベに合ってない気がするんだよなぁ。
この世界観で、化け物と命がけの戦いを繰り広げてる人物が、戦闘術の型の名前を叫んでるって、すっごく恥ずかしいというか、萎えるんだけど……。しかもほとんどがただの右ストレートにしか見えないという。
そして、そんな戦闘のプロよりも、腎臓の機能停止してる女子高生が強いって、どういうことなの; ついでに言うとソイツとタイマン張れる重工の令嬢さんェ……。

舞台となってる世界観は非常に冷徹で容赦がないのに、そこにいるキャラがやけに生ぬるい。魔術と科学が交差してるとあるラノベと大差がない。
主人公にプロっぽさはなく(背景となってる過去はとんでもないのに)、序列98位まで登り詰めたスナイパーは問答無用でターゲットを殺す、ということをしない。そもそも、自分とほとんど接点のない警察官一人殺すのを躊躇ってしまうような人物が98位まで上がれる時点で、序列の凄さも曖昧になってしまう。
主人公との戦いで敗北するまで、ティナの内面は隠して描いておくべきだろう。最初から可愛そう感丸出しで仲間になるフラグしか経ってなかった挙句に実際に仲間になっちゃうんだもん。

結局のところ、この作品は「可哀想な幼女が描きたいんだよぉぉぉぉぉぉ!!」という作者の情熱がそのまま素直に表れた作品なのだと思う。
それ自体は別にいいんだ。俺も幼女好きだし。
でもちょっとあからさますぎるというか、もうちょっと自然に描こうぜ。

無茶な提案だというのを承知の上で言わせてもらうと、原作一巻の内容をやる前に、主人公と延珠の馴れ初め、徐々に築かれていく信頼関係、木更とともに天童家を出奔する場面、そういった部分を描いて欲しかった。例えば、ペアを組んだ直後の延珠と主人公の初めての依頼を描いた回とか(オリジナルでもいいじゃん)
というのも、本編中における主人公を形成する大部分を占めるものが、過去なのだ。
でも視聴者である僕らは、その主人公の過去を知らない。これで主人公の言動に共感しようとしても、無理。

だってさ、普通に考えて【呪われた子どもたち】を嫌悪するのって、当たり前の反応じゃん。
普通の人間にはあり得ない超常的な力を持っていて、感情によっては制御できなかったりして、しかも能力を使用した結果、侵食率が50%を超えた時点でガストレアになるんだよ?
正味、そんな子供を前にして「普通の人間として接しろ!」って無理があるわ。君らにとっては一年の付き合いでも、観てる側からしたらまだ2話で、しかも絆らしい絆を感じる場面があったワケでもないんだぜ?

描かれた世界と、用意された設定だけを素直に受け取れば、【呪われた子どもたち】の扱いに対して「可哀想」と同時に「仕方ない」とも思う。
でも、主人公は仕方ないとしない。だったら、それに共感できるような、もしくは応援したくなるような要素は、しっかり用意しておいて欲しい。
主人公には、そう言わせるだけの積み重ねがあったんだろう。でも、観ている側はそれを知らない。主人公の口からポロッと語られただけだ。こういうところは、回想とかでなく、もっとじっくり絵にして欲しかったなぁ。

この世界を最も体現していたのは、主人公が夏世を射殺するシーンだ。この悲劇性をもっと突き詰めていけば、この作品、ラノベの中でも化けると思うんだけどなぁ(人気が出るかどうかはともかくとして)
絶望の淵に立たされた少女の、精一杯の足掻きと、死の間際に一際強く輝く生。心をじわじわと蝕む恐怖の中で、主人公との交流で得られたほんの少しの幸せを噛み締める。それまでの生に満足できなくとも、静かに死を受け入れる。本作で最も印象に残ったシーンだった。何故、このシーンの雰囲気のまま、作品を描かないのか……それが悔やまれる。

どうせなら、【シドニアの騎士】ってワケじゃないけど、天童のジジィの独裁によってすべての【呪われた子どもたち】はガストレア戦は強制参加とか、政府によって【呪われた子どもたち】は保護という名の徴兵を受けてるとか(戦うことで人並み程度の人権を得られる)、ぐらいの勢いでもいい。それぐらいまで突き詰めたら、その容赦の無さは間違いなく、本作の武器になるはずだから。