kwm さんの感想・評価

3.8
物語 : 3.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態：観終わった

男性にもお勧めな女子向けラブコメ

漢なら誰しも、ある日ふとした瞬間に命を懸けた大冒険に出たくなる時がある。
人生に幾度か訪れるその瞬間の一つが、この『会長はメイド様』のパケ写を見た時だった。
一人の少女を囲むように配置されたイケメン達は、私にこの作品が女性向け作品だと理解させるには十分すぎるものだった。
ただそれだけでは細マッチョのイケメン達がどの程度絡み合うのかわからなかったので、男の私が目を覆いたくなるような展開になるリスクはそれなりにあったが、それでも『ひと夏の思い出を作るべく爆死覚悟で見てみたい』そう思わせてくれた。

この物語の主人公となるのは、父親の残した借金が原因で貧しい暮らしを余儀なくされているツンデレ少女の鮎沢美咲（あゆざわみさき）。
彼女が生徒会長を務める星華高校は元男子校という歴史から女子生徒が極端に少なく、そんな肩身の狭い女子生徒達の権利を守ろうと横暴な男子相手に日々奮闘しており、その男勝りな性格や家庭の事情は彼女を恋愛から遠ざけている。
そんな男っ気のない彼女のお相手となるイケメン男子生徒の碓氷（うすい）君は金髪サラサラヘアーで容姿端麗、成績は学年トップで寡黙でクール、女子生徒からの告白を断った回数は数知れず、それなのに何故かヒロインにだけは特別優しいという、まるで若かりし頃の私のような仕上がりになっている。
これは女性向けのドラマや漫画では幾度と無く使われてきた王道の設定なので、女性向けのラブコメ上級者にとっては物足りなさが否めないであろう部分でもあり、どちらかというと場数を踏んだ『女性向け』というよりは『女子向け』作品という表現をした方が正しいかもしれない。
見始める前は、激しいBL展開という緊急事態が発生したとしても『最悪の場合メイド姿の会長だけ見ていれば良く、その周囲を取り囲むイケメン達は全員俺だと思えば良い』などと意味不明な事を考え完全武装していたが、作品のタイトルからは想像もつかないほどコテコテな女子向けラブコメである事に気づくまでそう長くはかからなかった。

結局最後まですんなり見る事ができたのだが、これは恐らく日常的に女性向けアニメを見ていないが故の新鮮さを感じたせいもあったのだろうと思う。
恋敵が出てきたり夏の海イベントがあったり、全体的な流れやこなしていくイベントなどは王道中の王道なので、こうしたジャンルを見慣れていない男性の方が既視感なく見れるという意味ではむしろこの作品に向いているんじゃないかとさえ思う。
『何故そんな事を男のお前が知っているのか』そこは触れてはいけない。
一話丸々茶番劇のような肌に合わない回もあったが、最終的にハッピーエンドとわかっていても最後まで見たくなる面白さはあった。
女子向けのお決まりの壁ドンは多数あり、ツンツンなヒロインの態度が懐柔していく男性向けの描写もあり、女装癖のあるショタなど特殊要因も含め、わりとオールラウンドな印象。
話が進むごとにキュンキュンが増し増しになり、終盤に至ってはクサい台詞を連発するウスイ君が眩し過ぎて死にたくなったが、学園という日常に対してのメイドの非日常感も程よく、概ね満足する事ができた。
最近の男性向けアニメが首から上を挿げ替えただけでどれも同じに見えてしまうような人に対して、たまにはこういうのもどう？と勧めたくなる作品。


べっ、別に面白いと思って最後まで見たわけじゃないんだからっ！