westkage。 さんの感想・評価
3.1
物語 : 4.5
作画 : 3.0
声優 : 3.0
音楽 : 2.5
キャラ : 2.5
状態:観終わった
戦争に対してあまりにも無知である私たちにとって重要な作品
本作は野坂昭如の短編小説を原作とした作品です。制作はスタジオジブリで昭和63年に上映されました。戦時中・戦後をテーマとした作品ですが、軍隊や戦争の描写では無く、戦争というものがいかに社会に対して影響を与えるかを描いた作品になります。
主人公は「清太・節子」の浮浪児兄弟。戦争で両親を亡くし家も焼け出されて、親戚の家に行くところから話は始まります。最初に断言しておきますが、この物語は100%救いの無い物語になります。今の言い方で表せば「鬱アニメ」という部類になるでしょうか。
ただ、こういった作品は「鬱アニメ」としてくくるにはあまりに失礼なものではあります。戦争というものは強者が弱者を虐げる事が基本となりますが、それは戦争に参加している兵隊だけではなく、自国で待つ国民もまた同じだという事です。そしてそういった影響を大きく受けるのは、社会的弱者である子供たちも例外ではありません。
私は子供の時にこの映画を観ました。その後学校などでも繰り返し視聴させられた覚えがあります。合計で5回はみたはずです。おじいさんに戦争の話を直接聞いたりしている方も多いと思いますが、だんだんそういう戦争を経験している方も少なくなってきていると思います。そういった戦争の語り部が少なくなっている今だからこそ、こういった作品も意味のあるものになってきているのではないでしょうか?
圧倒的な力の象徴である銃などの武器や、命を賭ける生きざまなど、戦争に対して憧れや興味を抱くのは人として多々ある事だと思います。私もそういう作品は好きですしね。しかし戦争というものは多くの犠牲を伴い決して繰り返されるべきものではないんだという強い意志を持つために、私たちはあまりにも無知です。火たるの墓は、そういう事を脚色無く教えてくれる貴重な作品だと思います。