kids さんの感想・評価
4.2
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 4.5
状態:観終わった
戦う少女達と見え隠れする人の性(さが)
内容はバトル物で、グロい描写もあり、正直言って観る人を選ぶ作品でした。バトルを中心に楽しく観ることもできますが、僕はもしも自分がこの世界にいたら・・・と思わずにはいられませんでした。
世界観について(説明メイン)
この作品の鍵はガストレアウイルスです。ガストレアウイルスというのは、動物に感染することでその動物を巨大で強力な化け物に変えてしまう恐ろしいウイルスで、これによって誕生した怪物達をガストレアと呼びます。奴らは再生能力も凄まじく、パラニウムという特殊な金属で再生を阻害しなければ倒せません。人類はパラニウムを用いた壁(モノリス)で居住区を囲むことで何とか生きていくことができる環境を確保しました。
対向する戦力として、ガストレアウイルスに感染した妊婦が生んだ少女たち(イニシエーター)が活躍します。彼女たちはガストレアウイルスに侵されながらも免疫がついているため侵食が遅く、しかも常人をはるかに上回る身体能力を手にしています。ただ、侵食率が50%を超えると怪物に変貌してしまうことや、過去にガストレアたちによる悲劇を受けたという歴史的背景から世間の目は彼女たちに冷たく、決して境遇がいいとは言えません。それでも彼女たちは小学生程度の小さい子供ながらも、プロモーターと呼ばれる人々とペアを組んで共にガストレアに立ち向かっているのです。
ストーリー・登場人物について
この作品はバトル物に分類されると思うので、戦闘シーンはCGも含めて確かに迫力満点です。しかし僕の個人的な感想としては、そっちよりも主人公たちの葛藤の方が見どころであったように思います。
この作品の主人公は高校生のプロモーター里見蓮太郎と、イニシエーターの藍原延珠のペアです。この二人は人々の様々な影の側面を見せつけられます。 {netabare}イニシエーターの少女たちを単なる道具としてしか見ないプロモーターの存在、ガストレアウイルスを持っていることから同じ怪物扱いをされ、理不尽な差別を受ける少女たち、そしてこの極限状態ですら戦果をものにするためにペア同士で殺し合いまで演じる始末・・・。{/netabare}こんな一面を小さい頃に見せつけられたらたまったものではありません。
それでも彼らは、そんな影を持つ人々を守る道を選びます。 延珠は{netabare}小学校に通い友達もたくさんいたのに、自分の境遇が明らかになった途端にその日常を失ってしまいます。青空教室では過激な人々により、同じ境遇の友達がみんな殺されてしまいます。世間からは人として見てもらえないという現実に直面します。{/netabare}感情的になりがちなはずのまだ小さい子供なのに、それでもみんなを守りたいと強く思う姿には心打たれました。
一方で里見はそんな壁にぶつかる彼女になにができるのかと葛藤させられます。{netabare}差別をする人々をただその場限り追い払うことしかできないのか、涙を延珠に何て声をかけたらいいのかと{/netabare}思い悩む姿にも胸が痛くなりました。{netabare}そんななかでも最後に「人には光と影の両方があるんだ」といいながらその光の側面がかいま見えた時にはなんだか救われた気持ちになりました。{/netabare}
それからひとつ思うのは、僕には人として生きたいと願う、ガストレアウイルスに侵されているイニシエーターたちの方が、普通の人間よりもずっと輝いてみえたということです。{netabare}侵食率の限界を超えてしまった少女が、人として死にたいから殺してくれと頼む姿からはなんとも言えない理不尽さを感じました。{/netabare}世間から人として見てもらえない彼女たちの方が、ずっと人間として美しく見えたのはこの作品のちょっとした皮肉かもしれませんね。
この作品には様々なことを考えさせられました。例えば差別にしてもそれを悪いというのは簡単ですが、差別する側の気持ちも理解できなくは無いです。彼らは大切な人を失った悲しみを、憎しみを、一体どこにぶつければよかったのでしょうか。人は時に頭で分かっていてもそれを受け入れたくない時や、受け入れられない時があるのも事実だと思うのです。
人は黒い影の側面を持っているのは事実です。そんな一面と我々はどう向き合えばいいのか。そんなことを考えながら観るのもいいのではないかなと思います。