みかみ(みみかき) さんの感想・評価
4.1
物語 : 3.5
作画 : 5.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
よかったよかった
なんというか、あれですね。パヤオ御大では出てこない、いい味わいのある映画だったと思います。
まあ、児童文学なんで、仲良くなる速度が妙にはやかったりするのはご愛嬌。
あと、まあ、ジブリ映画なんで、主人公が後半でキリッとしてきたりするのもご愛嬌。
そういう部分で訓練された視聴者としてはですね、まあ、これで大満足でした。はい。
なんですかね。なんか、ハウルとかと違って、非常にすっきりと最後に伏線も回収されてすっきりと終わりましたよね。主人公の性格もまあ、パヤオ映画には決して出てこないタイプの想像可能な人格の子でしたしね。
あと、ふとっちょの子が、非常に落ち着いてていい子だなぁ、というかんじもよかったですね。
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超絶技巧が相変わらずたくさんあったのもよかったですね。
取り皿にプチトマトとるのを落としそうになりながら、おっとっと、と口調を変える演出とかね、そういう細かいところ詳しくよくつくってあって、相変わらずビビるわけですが。
あと、地方都市の駅前の風景を描いてくれたのもなにげに感動。全国規模のチェーン店の中型店舗が立ち並ぶ、地方の駅前がジブリのファンタジーな風景に入りこんでくるのはいいよねえ。
田舎の子たちがゴミ拾いさせられている風景とかも、現代の田舎の風景をたんたんと描いているという感じでとても好印象。
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そして、全体にとてもわかりやすい構成。
パヤオは天才すぎてイッちゃってて、もう最近わけのわからん夢の世界のかなたに完全に旅立たれてしまわれたという雰囲気だったわけです。本作は、夢の話でありながらも、夢のあちら側と、こちら側をわかりやすく往復しているお話で、オチもついて、すっきり。
あらまあ、わかりやすくて、いいわねぇ。ジュヴィナイル作品って、まあこんな塩梅でいいんじゃないでしょうか。ほんとに。ほのぼの。
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もちろん、これはこれでウェルメイドにきれいにまとまりすぎていて、パヤオが『ポニョ』とかで切り開こうとした新世界みたいなものがここからは見えてこないとか、そういう批判も、まあ可能っちゃ可能かもしれません。
だけれども、これはこれでいいものだと思いましたし、ジブリがゆっくりとこういうブランドになっていったら、それはそれでいいんじゃないかな、という気もいたします。
「こんなのジブリである必要ないじゃん」って言ったら、それはそうなんだけど、パヤオももう年老いていくわけだし。
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あとね、アンナちゃんの心理プロセスの描写なんだけど、
ああいう難しい子がこころを開いていくプロセスって、悩ましいよねえ。周囲からはたらきかけすぎると、本人が嫌がるし。かといって、100%ほうっておくと、それもそれで「ほっとかれた」って思うだろうし。
まあ、無口な保護者というのがベストですよね、と。
そこらへんトイチさんみたいな人が近くにいたというのは条件よすぎなぐらい。
あと、アンナちゃんが人に言われて探索したのではなく、自分から探索した場所に美しくて神秘的なものがあった、というのも良い組み合わせですよねえ。ああいうのは、実際のところはもちろん難しいわけですけれども。あと、マーニーがきれいでさわやかな少女でなかったら、あの子らは仲良くなれたんだろうか、などということも少し考えてしまいました。あれは、そういう物語ですよねえ。
でも、まあキャッチコピーにもなった「あなたのことが、だいすき」という言葉が言われるまでの文脈の作り方はやはり立派。主人公の子の孤独感が、それなりに現実にありそうで、凡庸な孤独感だけれども、凡庸な孤独感であるからこそ、少なくない人に響きうる、そういうものをきちんと選んでいてえらいなあ、とただただ感心。
あとは、あんなちゃんが、保護者のおばちゃん(おかあさん?)が補助金をうけとっている、ということを知っただけで陰鬱な気分になってしまっているという、あそこらへんもねえ、いい話だわ。
基本的に自分が愛されている、という実感が強い人だと、自分の周囲にあるネガティヴ情報を少しひろっても、「なんで、こいつ、こんなことで悩んでんの?」ぐらいの気分になってしまうものだけれども、自分が世の中から歓迎されているという実感の薄い人だと、ああいうネガティヴなことを妙に拡大解釈して、世界からの疎外感をもってしまったりしますよねえ。10代に限らず、20代でも、30代でも、疎外感が出てしまいやすい構造の人はねぇ、ああいうことになりますよね。
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まあ、そんなかんじで。
ほわほわ、と安心して見れてよかったですわ。