三崎鳴 さんの感想・評価
4.1
物語 : 4.5
作画 : 5.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
地味ながら光るところもある小粒の良作
スタジオジブリ20作目。宮崎駿が抜けた後のジブリの方向性を決める一作として注目が集まった作品。原作はイギリスの作家、ジョーン・G・ロビンソンによる児童文学作品であり、1967年に出版された古典名作である。養親から無気力と言われ、友達もおらず、心を閉ざした少女アンナ。喘息を患い養親から離れ療養のため海辺の町で過ごすことになるが、アンナはそこで「これこそずっと自分が探していたものだ」と直感的に感じる古い屋敷を見つける。その屋敷の娘マーニーと親友になり毎日のように遊ぶことになるが、町の人は誰もマーニーの事を知らないという――(wikipediaより引用)。
ミステリ的な捻りがアクセントになっているが全体に通っている軸は内向的な主人公の心理描写であり、退屈と取れる部分は多い。簡潔に纏めれば養親との間に心の溝がある主人公は出会いを通して自らのルーツを知り、最終的には養親を認めることとなる、というものでラストシーンでの「私の、母です」という台詞には主人公の成長や心境の変化が一言に集約されており、非常にぐっとくる。『千と千尋』では大人の世界に触れることで成長するというのが根底にあったが、本作では自分を見つめなおし、自分を知ることで成長するという意識が根ざしている。しかしながら演出面においては、後半の核心に持っていくまでに伏線とも言うべきものを垣間見せる前半部だが、映像としてやや分かりにくさが強めか、『パーフェクトブルー』の多重妄想演出に似たものがあって、(あえてミスリード的にしているのかも知れないが)「主人公、こいつ頭おかしいんじゃないの」と思わせる。この演出が起伏の薄い前半部の大部分を占め、冗長な感じを出している気がしなくもない。総評として、微々たる百合要素もある、少し大人向けのほろ苦い良作といったところか。