三崎鳴 さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.0
作画 : 4.0
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 3.5
状態:観終わった
君と夏の終わり 将来の夢 大きな希望 忘れない
『あの花』の劇場版。内容は総集編7割+後日談3割程度の構成だが総集編パートは回想という形で駆け足なので一見さんお断りといった構成で、単品の映画としては評価出来ない。
ということでここでは『あの花』再考の試みとする。本作は2011年に放映されたアニメ作品であり『まどマギ』『シュタゲ』『タイバニ』『いろは』等の作品と同列に、11年を代表するアニメの一角である。小学校時代、幼馴染の女の子の死をきっかけに仲間達とは疎遠になって行き、高校受験に失敗した主人公は引きこもり生活を送っていたがそんな彼の元に死んだ筈の幼馴染が現れ、「願いをかなえてほしい」と頼まれる。彼以外には目視できない幼馴染の復活をきっかけに再び仲間達は集まり始める。といったテーマが明確かつ共感を得やすい切り口のストーリー、そしてEDテーマ『secret base』とともに若者達の涙腺を刺激する作品として高い評価を得た。初見時はグイグイ引き込んでゆくストーリーにつられ、好評価をせざるを得なかったがこうして冷静に見てみると違うものが見えてくる。まず、本作の登場人物は皆一様に『めんま』の死に囚われており、過去のしがらみによって彼らの時間は止まったままである。ここがポイントで、学生時代は恋愛関係にしろ友達関係にしろ、出会いと別れはつき物であるが、若さゆえ、別れに対して強大な喪失感を得る。数年の長い時間をともに過ごした人間との別れ、この体験と本作のシチュエーションは見事にマッチし、共感度を高める。又、青春ものというジャンルを取っている以上は映画『スタンドバイミー』のようにノスタルジー要素で大人をも惹きこむ力がある。登場人物の言動や行動には痛々しいものが多く、こちらが恥ずかしくなるようなものばかりだが、それがむしろ感情の奥まで勝手に潜り込んでくる。その痛さには妙な現実感が伴うのだ。しかしながらめんまの死の際の状況描写は省かれており、意図してダークさを避けているのか微妙なラインだが,ようするにそんなことも気にならないくらい“心がピュアな人向け”の作品なのだろう。個人的には、泣けはするが感動は出来ない作品という評価にしたい。各キャラの掘り下げが中心の映画版は久しぶりに本編が見返したくなった時等に視聴することを勧めたい。