作ろう作ろうと思って机に座って考えているときというよりも、なにげないときにふと思いつくということが多いですね。一番多いのは電車に乗っているときとか、飛行機に乗っているときとか、あとジョギングをしているときとか。
体が移動している時に思い浮かぶような気がします。
だから、脚本や絵コンテでいきづまったときには「ジョギングに行こう」と。走っていると、何かいいアイデアが思い浮かんだりしますね。
設定を細かく組み立てることが楽しいというタイプの方もいると思うんですけど、僕は、物語の器として必要最小限の設定を作って、あとは登場人物の心理の動きのほうを追いながら作品を作っていきたいと思っているので、設定はそんなにガチガチには固めないですね。
どういう瞬間にどんなふうに感情が揺れ動くのかとか、そういったことのほうにより興味をひかれます。
質問の「絵」というのは、キャラクター、背景、どちらのことを指しているのかな。アニメーションは分業なので、キャラクターを描いている人と背景を描いている人は別なんです。
例えば『星を追う子ども』の絵でいうと、ここに立っているキャラクターは「作画」、背景の絵は「美術」と呼びます。
作画は、僕は今は描いていないです。このポスターに描かれているキャラクターは作画監督の西村貴世さんが描いてくださいました。作画を僕がやっていたのは『ほしのこえ』までで、それ以降の作品では、プロの作画スタッフの方々にお願いしています。
背景美術は、今でも、僕も描いています。もちろん全部ではありませんよ。『星を追う子ども』にはたくさんの美術スタッフが参加してくれています。
ですから、僕の作品を見て「新海さんは絵が上手い」と思ってくださっている方がいたとしたら、それはちょっと違っていて、実際には長年経験を積んできたスタッフ全員の素晴らしい仕事の結果なんです。
「美しい絵ですね」と言っていただけることが多く、うれしいですが、それは「ここを美しく見てほしい。美しく見せたい」というポイントを特に意識して描いているから、こちらの意図が伝わって、そう感じてもらえているのでは、と思います。
ですから、おそらく絵を描くうえで大切なことは、「どういう絵にしたいのか」というイメージを明確に持つことなんじゃないでしょうか。
絵を描くときのポイントってたくさんありますよね。「キャラクターの目力を強調する絵にする」とか、「背景の光の当たっている部分を見せたくて、そこを美しく引き立てるように描く」とか。それによって使うツールも、色づかいも、絵のタッチも、全然違ってきます。
ですから、まずは理想の絵をはっきりとイメージすることから始めてみてはどうでしょうか。
理想の絵が頭の中でイメージできれば、あとはひたすら練習して経験値を増やしたり、技術的なことを後から追いかけていけばいいと思います。
※Dancingkidさま
質問いただいた、「映像としてメッセージを伝えるときに心がけている事はなんでしょうか?」の回答はアニメ作品秘話『星を追う子ども』をご参照下さい。
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