『雲のむこう~』での反省点を踏まえて、『秒速5センチメートル』ではスタッフの数を減らしましたし、短編集ということで1話あたり20分から30分のものを3話つなぐ、という形にしました。スタッフも尺も少なくすることで、自分できちんとコントロールできる範囲で丁寧に作ろうと思ったんです。だから制作体制的な課題というのは、『秒速5センチメートル』ではほぼありませんでした。
スタッフも僕も日曜日はちゃんと休めるようなスケジュールにしましたし、絵のクオリティーに関しても、1カット1カット、満足のいくまで細かく手を入れることができたので、自分が思い描いていたイメージ通りの作品に仕上がりました。
『秒速5センチメートル』を制作後、国際交流基金の仕事で中東に行き、3つの国でアニメーション制作のワークショップをやったんです。その後さらにロンドンなどにも滞在して、合計で1年半ぐらい海外で生活していたんです。
その間、何度か『秒速~』を上映させていただく機会があって、観た方はとても喜んでくださるんですが、僕はちょっとそこで居心地の悪い思いをしていたんです。
『秒速5センチメートル』という作品のスタイル、フォーマットとしては、ある種の日本的な「前提」を踏まえていると思うんです。
日本での変わらない日常生活の中にある、細かい感情の起伏をどこまでも拡大して描いていくというタイプの作品ですから、そうすると、前提となる文化が違ったり、興味の対象が違う人にはまったく楽しめない作品なんじゃないかな、という思いがありました。
ですから、最新作の『星を追う子ども』では、作品の語り方そのものを変えようと思ったんです。文化や関心の違いを超えて、観た人に単純に「楽しかった!」って思ってもらえる作品にしたかった。それが今回の『星を追う子ども』を作ろうと思ったきっかけです。
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