世界の名だたるクリエイターにリスペクトされる、日本が誇る大傑作『AKIRA』の上映会が、11月21日にテアトル新宿にて2回、12月5日に川口スキップシティにて、全3回行われた。これまでにも『AKIRA』上映会は幾度か行われていたが、今回は現時点で2本しかないというHDCAM Master5.1ch版で画質、音質ともに非常に高いクオリティでの上映となる。12月5日には主人公・金田役の声を務めた岩田光央氏を中心としたトークショーも開催された。今回はその模様をレポートしていく。
11月21日に新宿テアトルでは立ち見席チケットまで完売するほど大盛況。12月5日は都心からすぐとは言い難い川口が会場だが、チケットはすでに完売し、朝早くから観客がつめかけて会場は熱気に包まれた。なかには東北や大阪、広島など、『AKIRA』をスクリーンで観ようと遠方からやってきた観客も。
共同主催である、あにこれβの大塚真理氏が「ネット上ではたくさんのユーザーの方にご利用頂いてる、あにこれβですが、実際にユーザーの方とつながる機会がなかなかないこともあって今回の上映会を開く運びとなりました。いまもまだ、上映会の問い合わせがあるほどの反響があって、今日はこんなにたくさんの方々に来ていただいて嬉しいです」とコメントを述べて上映は開始された。
当時の35ミリフィルムにクリーニングを施し、ハイビジョン仕様の超高画質企画にニューテレシネ補正したという映像は驚くほどキレイ。「少し都心から遠くてもココで」とマンガアーツ菅野氏がこだわったスキップシティのホールの音響は非常に良くて、5.1チャンネル立体音響が効果的に体感できる。
そしてやはり、『AKIRA』の作品自体が持つパワーが凄まじい。筆者としても原作よりも劇場版アニメのほうが好きという数少ない作品のひとつだ。それはおそらく、原作者である大友克洋監督自身が壮大なストーリーを潔く削ぎ落とし、エキスと見せ場を抽出してエンターテインメントに昇華させた賜物だからだろう。
ドラマと映像が一体となって、全編クライマックスと言えるぐらい迫力あるシーンが息つぐ暇なく見る者を圧倒する。四半世紀過ぎた現在でも文字通り色褪せない、CGに頼らずとも現在の作品と遜色ないどころか凌駕する『AKIRA』の世界を堪能する2時間弱を観客は堪能した。
上映のあとは興奮冷めやらぬまま、ゲストトークショーが行われ、主人公・金田役を声優として演じた岩田光央氏が壇上に現れると歓声とともに盛大な拍手が沸き起こった。
当時、『AKIRA』の主演に大抜擢となった岩田氏は「僕の人生は『AKIRA』前と『AKIRA』後に分かれます、僕の人生を変えた作品ということは確実に言えます。声優をやらせてもらってるなかで、名刺代わりになる作品を持ってる声優って意外といないものなんです。でも、僕の場合『AKIRA』の金田だと言うとわかってもらえる。それを使用できる有効期限がどれだけ長いんだってことにも驚かされます」と、声優として携わった喜びを改めて語った。
また、岩田氏はプライベートでオーストラリアに旅行に行ったときに、ダイビングのインストラクターの方が「君は日本人なの?じゃ、『AKIRA』は知ってるか? すごい作品だ!!」と『AKIRA』のすごさをとうとうと捲したてられたという裏話も披露。海外でも日本の傑作として認知されているということを実感したのだとか。
岩田氏は制作当時を振り返って「制作会社の垣根を越えて全国のアニメ関係者がみんながみんな、“大友克洋が『AKIRA』を映画化するらしい”っていう話が出ただけでわき上がった。アニメ業界が1つの作品にあんなに集中して、ちょっとしたことにも盛り上がったのは後にも先にもないと思う」と、作品が制作されること自体が映画史に名を残す出来ごとであったことを述べた。
その後、会場の観客から質問を募るコーナーでは、金田の名台詞をお願いしたいというファンならではのリクエストが。たびたび名台詞のリクエストを受けてきたという岩田氏によると、“さんをつけろよ、デコ助野郎!”と“やっとモーターのコイルがあったまってきたところだぜ!”、“葬式帰りか?”がベスト3で“さんをつけろよ、デコ助野郎!”がなかでも1番多いのだそうだ。今回はファンのなかでもツウ好みな“ピーキー過ぎてお前にゃ無理だ”をリクエストされて、岩田氏はクールに決めてくれた。
最後には前述の1番人気の名ゼリフ、“さんをつけろよ、デコ助野郎!”を岩田氏と観客で掛け合いで叫びつつ、記念写真を撮影。まさしく『AKIRA』ファンが一体となった瞬間が生まれ、この傑作を皆で共有した熱い感動を胸に抱きながら、上映会は幕を閉じたのだった。(文:入江奈々/ライター)
AKIRA 復活上映会記念写真販売&特別抽選
AKIRA 復活上映会皆様の支援により大盛況のうちに終了いたしました。
12/5川口スキップシティにて撮影した金田正太郎役、岩田光央様との記念写真を限定販売し、
抽選で10名様に岩田氏直筆サインプレゼントいたします。お越しになれなかった方も記念にどうぞ。
商品仕様 A4判 カラー写真(パネル無)
価格 2,500円(送料込)
販売数 限定200枚
発送予定 2016年2月中旬
お支払方法 郵便振込
お申し込みはこちら
AKIRA
©1988マッシュルーム/アキラ製作委員会
※1988年公開自宣伝物より引用
HDCAM Master 5.1ch version Screening
2015/11/21 & 12/ 5
原作・監督:大友克洋(講談社・ヤングマガジン連載)/製作:アキラ製作委員会/脚本:大友克洋・橋本以蔵/作曲・指揮:山城祥二/キャラクターデザイン:大友克洋/作画監督:なかむらたかし
作画監督補:森本晃司/美術:水谷利春/音楽:芸能山城組(ビクター)/音響:明田川 進/録音:瀬川徹夫/撮影:三澤勝治/編集:瀬山武司/アニメーション制作:東京ムービー新社
せっかくの再上映。超ハイクオリティなAKIRAが観たい!
最上の映像を極上の音響で。
今回の「AKIRA-アキラ-」上映を行うにあたって、まず用意したのがHDCAMSR版。
昔の映画は光学35ミリフィルムなので、そのマスターは経年変化による退色やキズによって画質が落ちています。
そこで当時のネガから、カラー・バランスと画面のクリーニングを施し、24コマポジをハイビジョン仕様の30フレームの超高画質規格にニューテレシネ補正したものがHDCAM Masterです。
これにより35ミリフィルムを遥かに上回る迫力のハイクオリティ映像を再現しました。
更に、オリジナルの音源を出来るだけ活かしながら、5.1chデジタルPCMサラウンドのハイクオリテイ立体音響で細やかな音の質感を表現。
かつて感じた、あの引きずり込まれる感覚が、さらに深まること間違いありません。
映画館で初めて見る人はもちろん、当時オリジナルを観たファンのみんなにも楽しんでもらえる仕上がりです。
もう一度観たい、カット2212枚、セル15万枚。
3D全盛の時代だからこそ感じる驚異的な作画力。
「AKIRA-アキラ-」の映画化で最も重要視されたのは、舞台となる“2019年ネオ東京のリアリティ”でした。
なんとこの未来都市を描く為に、当時のアニメ映画以上最高の10億円という製作費が投入されました。
カット数2212枚、セル枚数15万枚と言われてもピンとこないかもしれませんが、通常のアニメ映画であれば2~3本作れる量なのです。
もうすぐ2019年。最新のHDCAM Master版でしか見られない“生命力あふれるネオ東京”を体感してください。
色の数も半端じゃありません。
アニメ映画の常識を打ち破った327色の色彩設計。
色彩設計も凝りに凝っています。大友監督は従来のアニメの定型的な色使いを避け、「遊園地のように、遠くで見るとカラフルだけど、近くによるとくすんでいる」という、これまでにない色調を生み出しました。
このために使った絵具は327色。そのうち50色はなんと「AKIRA-アキラ-」のためだけに特別に作られた絵具です。。
ネオ東京新都市街のイルミネーションに彩られた極彩色の華やかさと、ダウンタウンの薄汚れた街並みの対比、単なるブルーだけではない夜のシーンの色使いなど、じっくりとご堪能下さい。
ドルビーサラウンドシステムで聴く、声と楽曲
プレスコ方式と芸能山城組。
「AKIRA-アキラ-」では日本のアニメでは珍しい「プレスコ方式」を採用しています。「アフレコ方式」と違い、作画より前に声を録音し、セリフを聴きながらアニメーションを作成する方法で、画面のキャラクターのセリフと口の動きをぴったり合わすことができます。
この「プレスコ方式」を採用することにより更なる「声のリアリティ」を追求しました。
音楽を担当したのは芸能山城組。バリのガムランや日本のお経など、ジャンルにとらわれない、時代に左右されない楽曲を創りだしました。
2019年ネオ東京に存在しても不思議はないという未来的なリアリティと1988年の音楽として聞いても通用するというインパクトのある音楽をもう一度映画館で聴いてみるチャンスです。
STORY
英国メディアが選ぶ世界のアニメ映画第五位
世界に誇るJAPAN ANIME最高傑作
1982年から90年にかけて講談社「ヤングマガジン」に連載された大友克洋による本格派のSFアクション漫画を原作とし、1988年に劇場アニメーション化された「AKIRA-アキラ-」は、業界に革新をもたらすとともに、日本のアニメを海外へ広めた代表的な作品です。
舞台は2019年超高層ビルが林立する新首都「ネオ東京」。2020年の東京五輪をこの当時から予言していたなんてすごいですね。
物語(1988年公開時宣伝物より引用)
1988年7月、関東地区に新型爆弾が使用され、第三次世界大戦が勃発した。そして31年ー東京湾上に構築されたメガロポリス=ネオ東京は、翌年のオリンピック開催を控え、かつての繁栄を取り戻しつつあった。
2019年のある夜、ネオ東京郊外に閉鎖された高速道路に侵入するバイクの一団があった。
健康優良不良少年、「金田」をリーダーとする職業訓練校の生徒達だ。一団は無人のはずの路上で掌に26と記す奇妙な小男と遭遇、先頭を行く「島鉄雄」は転倒、負傷する。この26号=「タカシ」は、アーミーと対立するゲリラが求める最高機密=アキラとまちがわれ、軍事基地にあるラボ(研究所)から連れ出され、アーミーに追われていたのだ。あっけにとられる金田達の眼前に突如軍用ヘリが下降、26号と同じようなしわだらけの子供27号=「マサル」の乗るカプセルと大佐が降りて来て、26号と倒れた鉄雄をヘリに収容し、飛び去った。
翌日、警官の取調べ受けた金田達は美少女ゲリラ、「ケイ」と知り合う。彼女もアキラを追っていた。
その頃、鉄雄が運び込まれたラボでは大佐が鉄雄の脳波に関する報告を受けており、鉄雄が魅力ある研究の素材であることが告げられる。
強力なクスリの連続投与により、鉄雄はタカシがもつのに似た不思議な力に覚醒し始め、看護婦襲ってラボを飛び出した。
夜の街を爆走する哲雄は暴走族クラウンの襲撃にあうが、駆けつけた金田の一隊に救われる。
逃げ遅れたクラウンの一員を半殺しにし、制止する金田に「俺に命令すんなァ!」と凄む鉄雄の体から、凄まじいエネルギー波が放電された。「アキラーッ!?」と叫ぶ鉄雄の姿に驚天する金田たち。
鉄雄の内部で何かが変わりつつあった。
ネオ東京市街ではゲリラとアーミーの銃弾戦が始まり、各所で火災が発生、大混乱となる。
ゲリラの主導者「根津」、新興宗教団体の教祖「ミヤコ様」は、ネオ東京の破滅とアキラの覚醒を予言していた。金田は銃撃戦からケイを救い、ケイの仲間の竜らが住むアジトへ向かった。
一方、鉄雄が連れ戻されたラボでは深刻な事態が発生していた。ラボの奥深く存在する異様なベビールームを訪れた大佐にタカシとマサルの仲間「キヨコ」(25号)が恐ろしい予言をしたのだ。
「アキラくんが・・・恐ろしい夢を見たの。人がいっぱい死んで、街が壊れて・・・。」
狼狽した大佐はアキラの眠りを確かめに秘密基地へ飛んだ。アキラは墓地の地下深く、デュワー壁に囲まれた絶対零度の世界で眠り続けている・・・
不安な予感にかられて大佐は緊急会議を召集、アキラの目覚めが生む国家的規模の災厄に対処すべく、莫大な予算を要求する。
ゲリラと合流した金田は鉄雄を取り戻すべく、下水道から基地へ潜入。ケイと共にラボのアーミーと一戦を交え、一大アクションシーンが展開する。目ざすは鉄雄のいるベビールーム!
いまや想像を超えるパワーに覚醒しつつある鉄雄は、意識の中に現れては消える「アキラ」の存在に苛だち、狂暴な力でキヨコ達を屈服させると共に、居あわせた大佐に激しくアキラの居所を詰問する。
キヨコ、タカシ、マサルは鉄雄の存在に危機感を抱き、行動を開始した。ベビールームからのコントロールでケイを動かし、アキラの眠るカプセルへ向かう鉄雄を襲わせるが、炸裂するエネルギー波の中、アキラのカプセルがまわりのケーブルを引きちぎりながら浮上した!
アキラの目覚めたのか!?大佐はネオ東京を守るため、鉄雄もろともアキラを葬り去ろうとSOLを発射。そして金田と鉄雄の最後の戦いが始まった! 結末に向けてドラマは意外な展開をみせてゆく・・・・・・。
大友克洋監督からのメッセージ(1988年公開当時)
「現実の向こうには宇宙の彼方にも続く世界が拡がっているのです。より大きなスペクタクルとカタルシスに挑戦してみたい。」
解説(1988年公開当時)
あの「アキラ」が遂に映画化される! 連載開始直後から話題を呼び、単行本が発売されるや人気は爆発300万部を突破するベストセラーとなった「アキラ」。脚本・監督とも原作者である大友克洋が担当する。83SF大賞を受賞した「童夢」、映画「迷宮物語」等で今や日本のコミック・アニメ界を背負う鬼才である。
最高機密「アキラ」を中心として、現代の政治と宗教が入り組んで抗争し、それに若者たちのエネルギーが炸裂し、スケールはますます大きくなってゆく。予測不可能なストーリー展開はもちろん、細密画のように綿密に描きこまれた各カット、息つく間もないスピディーなアクションシーンは圧巻。
そして映画のテーマである、破壊のあとの再生への願い・・・・・「アキラ」は壮大なSFアニメであると同時に、熱いヒューマン・ドラマでもあるのだ。