yuugetu さんの感想・評価
4.7
完成型主人公と成長型ライバルの極致〈全47話視聴完了・追記あり〉
2018年6月放送開始のカードゲームアニメ。
前番組のバディファイトバッツのラストだけ観ていて、そのまま継続。
シリーズ構成が川崎ヒロユキさんであることにOPで気づいたw私得だw
ジーベック好きだし、キャラデザが堀たえ子さんなのも嬉しいです。子ども向けに合ったはっきりした絵柄は好みだし見やすい。作画は長期アニメとしては標準的かな。
キャラクター描写の丁寧さや明るい作風が気持ち良くて、ストーリーの進みはゆっくりだけど伏線をきちんと回収してくれるので楽しめています。
【14話時点での感想】
{netabare}
ランマの葛藤がどんどん深刻になっていく描写が丁寧で良かったです。それが思ったよりずっと大きな事態になったことは意外だったけど、こういうアニメで主人公の最初の友達の役割が大きいのは私は大歓迎。
14話は本当に良かったです。ランマが友牙に決別する橋の名前が「ともきりばし」であることに気付いて、とても驚いた。何話か前の演出からこれを予定していたのかな…。思った以上に丁寧なストーリー展開になっています。
ランマの「バディっていいもんだな…やっとこの気持ちがわかったよ」っていう言葉がちょっと切ないけど、楽しみでもあるかも。
というのは、ファイターとバディとの関係性がどう描かれるかが気になるから。
主人公も他のファイターたちも、バディとはそれぞれ信頼関係を築いているのが見ていて楽しいし、ランマについてはちょっと違う関係性が見られるかも。
今のところヴァニティ・骸・デストロイヤーは悪役ですけど、友牙とランマとの仲直り展開はあるだろうし、ただ倒して終わりにはならないと思うんですよね…多分ですけど。
これからも楽しみ。{/netabare}(2018.9.20)
【33話時点での感想】
{netabare}
第33話とても良かったです。脚本の青木由香さんは今の注目株。
33話だけでなく、ここまでの何話かはラストへ向けて助走に入っている感じ。物語上で大切な布石をいくつも打ってきている印象です。
今回は初めてのライト回であり、友牙の性質を端的に表現した回でもあります。キャラクター性を会話にしっかり反映させつつも、小難しくなくすっと入って来ました。軽妙な会話劇、わかりやすい心理描写、ライトとの独特のファイトなど見所がとても多い。表情豊かな作画も見ていて楽しかったです。
ライトは「運命」という言葉が嫌い。ですが、自分の目で確かめ考え抜き自分の意思で選び取った未来なら、それは彼にとって「運命」なんですね。良いキャラクターです。
ゲイルがいなかったら家出してたっていう台詞でええっ?て思いつつも和んだw
カードゲームアニメなので必然なんだけど、このアニメ何か(キャラとか境遇とか)を対比して描くのが本当に上手ですね。
今回なら、父親との関係に言及させることで友牙とライトを対比させて掘り下げています。
父親のバディを借り受けているライトと、バディが居なくて悩んだ時期があるランマの対比も見て取れる。ライトとランマにとっては不安や鬱屈を埋めたのがバディなんですね。
ファイターとバディの関係性も順調に掘り下げられてきています。
友牙以外のキャラクターには何かしら悩みがあったり、自分の力だけではどうにもならない問題を抱えていたり。大なり小なりファイター(子ども)の心の隙間や苦手な部分を埋める存在としてバディは描写されている。前のシリーズを見てないので何とも言えないけど、方向性は変わってないんじゃないかな?
大人同士のバディものだと役割分担したり苦手部分を補い合う関係になるのだろうけど、この作品はバディが子どもキャラクターの成長や目標達成の助けになっている。それでも基本的にはファイター(子ども)が決定権を持っているので、バディが精神的には大人であっても、本人の成長として説得力を持たせられるのが良いですね。
ただ、第32話での友牙とランマの考え方や性格の違いから見て、屈託のない友牙にはそういう暗い感情というのは理解しきれない部分かも、というのが今の正直な感想です。
14話で感じた主題はここまで揺らいでいないと感じるので、この先も楽しみです。{/netabare}
(2019.1.23)
【最終回視聴後感想】
友牙周りは明るく楽しくランマ周りはずっとハラハラしっぱなしで、最後までとても楽しめました。
最後まで計算されつくした、素晴らしいアニメでした。
終了時期が早い段階で決まったことでスッキリ終わった気持ち良さもあり、魅力的なサブキャラやゲストキャラが出番少なく終わってしまった残念な気持ちもあり、複雑な心境です。
{netabare}
友チューブも上手く展開に取り入れていて、子どもやモンスターの楽しい遊びや挑戦する姿勢も随所に描かれています。
「神」と呼ばれる友牙、スバル、マサトのキャラクター性は完璧に近くアニメ的。普通の子どもに近いランマとの対比が凄かった…。
バディについても、最初から最後までファイターを見守り支え、欠点を補い成長を促す描写を一貫していて素晴らしかったです。
それから、意外とシュールな絵面が多くてそれが楽しかったw最終話のデストロイヤーのSDが特にw
作画がいつも楽しそうでしたね。
音楽や音響も好きでした。特にバディモンスターに付けるSEが多彩で楽しかったです。
このアニメで最初に気になったのが、遊びの神と戦いの神って相性悪くない?ってことでした。
ガルガとデストロイヤーは命懸けの戦いの中に身を置いています。もしランマもそちら側になるとしたら、友牙はそれを理解するのか?それとも3人を友牙側に引き込むのか?
最終話の「ここからが本当の遊びだろ!」という台詞が素晴らしかった。友牙は最初から最後までブレない「遊びの神」で完成していました。
完成型主人公は周囲に影響を与える展開になることが多い。ファイトの中で自分の姿勢を貫き、言葉よりも行動で示す展開が一貫していて良かったです。 {/netabare}
【ランマについて】
ランマは、弱い所もあるけど本当に良い子だと思います。
空回りする姿は痛々しく、でもそれを丁寧に描いたからこそ成長した姿が良い。
友牙からの影響、関係の変化もしっかり練ってあって素晴らしかったです。
実をいうと、終盤まで{netabare}デストロイヤーが全くデレてくれなくて{/netabare}どうなるんだろう…とかなり心配していたのですがw
以下ランマについて。長いので閉じます。
{netabare}
ランマの本質は「良い所も悪い所もある、心の弱い子ども」です。ポジティブな面もネガティブな面もある本当に普通の子。
このアニメ、家庭が描写されるのは友牙とランマだけ、というのが結構重要なのではないかと思っています。
友牙の家庭はいつも明るく温かいのに対して、ランマの両親は影も形もない。ランマには帰るべき家はあっても、それは心安らぐ場所ではない。
私はこの対照的な描写で、ランマは自己肯定感が薄いんじゃないか、と感じました。
ランマは小学校に上がった頃から友牙の家にお世話になっていて、友達というには距離が近すぎるんですよね。兄弟のような過ごし方をしていても、友牙には実の弟の晴がいる。幼馴染としては後に登場するミコの方がランマよりも古株ですし。
友牙の隣がランマが最も安らぐ場所だけど、友牙にとってはそうとは限らない。
それがバディの有無によって明確になります。
ランマ自身が自分を友牙と対等だと思えないため、ランマの気持ちは拗れていきます。原因の一つは本人のネガティブさ、もう一つは友牙です。
友牙は生来の明るさで、周囲の人に笑顔と元気を自然と与えます。ネガティブな人間は、そういう人に精神的にとても助けられるもの。
けれども、それがかえってランマに自分の矮小さを自覚させてしまう。ランマ自身が自分の心の暗い部分を受け入れられなかったのではないかと感じるのですよね。
しかも後々明らかになりますが、友牙は屈託が無さ過ぎて他人の心の暗い部分をなかなか理解できない所がある。
誰かが悪いわけではないのに、ランマの気持ちは拗れていきます。そういうデリケートな描写がこのアニメはとても上手でした。
友牙とランマの個性の違いは、クリエイターとしてのタイプの違いにも現れていたように思います。
友牙は「0から1を作り出す」ことができる。小学生の中でとはいえ「遊びの神」と呼ばれるカリスマなだけあって、豊かな発想力、それを実現する行動力、何度失敗してもトライし続ける強い精神力がある。
対してランマは「1を10に膨らませる」タイプ。それは本当は凄いことだけど、ランマに劣等感を抱かせたかもしれない。正確に言えばそれは個性であって優劣ではないのだけど、12歳の子どもにそれを理解するのは難しいでしょう。
一緒に動画を制作しているぶんにはこの二人、非常に相性が良いのですよね。ネタ出しは友牙の十八番だし、撮影で面白くできなくてもランマが編集で楽しい動画に仕上げていたことも言及されていました。
ですが、1対1の勝負事となれば相性は最悪です。
敗北を再挑戦の機会と捉える友牙とは違って、ネガティブなランマは勝敗を単純に優劣だと感じてしまう。しかもランマはなかなかバディを得られません。
本作において、バディはファイターを精神的に支え、時には欠点を補い成長を促す存在です。ランマはそれを最も必要とする子どもだったと思う。
それがデストロイヤーに付け込まれる隙になります。
「その望み、叶えてやろう」という言葉の通り、デストロイヤーはランマの決めたことを忠実に実行します。デストロイヤー自身の思惑もあるけど、ランマの心の在り様を肯定も否定もしない。
ランマはその中で自分の心の暗い面と向き合ったのだと思います。
一番大事なのは、ランマ自身がありのままの自分を受け入れること。
言葉少なで何を考えているかわからなくとも、何も言わず力になってくれるデストロイヤーはランマにとって自然体で一緒に居られる初めての存在でした。
準決勝を前に、ランマはデストロイヤーの存在を肯定し、自分と一緒に居てくれることに感謝します。自分の進化のためにランマを利用した面もあるし、ランマもそれをわかっているのに。そのことがデストロイヤーの心境に変化をもたらします。
ロストワールドはあらゆるワールドから存在を否定されたワールドです。その出身であること、破壊と殺戮を好む(とされる)本質すら含めて、デストロイヤーはバディとして受け入れられた。
ランマはデストロイヤーのお陰で自分を肯定し、デストロイヤーはランマに肯定される。ここに至り、ようやくランマとデストロイヤーが互いが本当に必要としていたものを補い合うのです。
決勝戦で友牙と対戦しても、ランマは揺るがなくなっています。けれども、友牙は周囲の人に笑顔を自然と与える。全力のファイトの中で、今度はランマのポジティブな面…ランマの本質のもうひとつの面が浮かび上がるようでした。
自分の本質を取り戻したランマは、友牙が勝って嬉し泣きするのを見て、最初から自分と友牙は対等な関係だったことを理解したのだと思います。
修繕されたともきり橋の上で、ランマは友牙に「お前は良い奴だ。ずっとずっと友達でいたい」と言います。14話で友牙に「ずっと一緒にいたい」と言われたことへの返答ではあるのですが、そこに少し距離が感じられました。友達としての正しい距離が。
39話で描かれた通り、「神」と呼ばれる3人がランマの心の暗い部分を本当の意味で理解することは、多分ない。あるとしたら大人になってからでしょう。
ともきり橋が架かる川は二人のどうやっても埋められない溝のようで、でも人が自分の生き方を貫く時にはむしろ必要な距離なのだと思います。
ランマが一つ大人に近付いた証であり、「人間は必ずしも理解しあえるわけではないけど、友達でありたいという気持ちの障害にはならない」という結論でもあると感じました。
ランマが「ずっと一緒に居ようぜ」と言った相手は、バディであるデストロイヤーでした。
このバディ好きだなあ。ハッピーエンドがとても嬉しかったです。{/netabare}
(2019.4.1)
【総集編を見終えて】
面白くて楽しい総集編でした!
{netabare}
43話で内容には満足してたけど終わってしまって寂しかったので、日常回のような後日談のような1ヶ月間はとても楽しめました。
ミコとアマテラスはレギュラーとしては活躍が少なくなってしまった印象なので、ここで色々サプライズがあったのも嬉しかった。47話のルミナイズ祭り、レギュラーでもゲストでも全てのキャラクターが愛されているのが伝わって来てとても良かったです。
まさか友牙がランマに対して「ランマも遊びの神なんだ」って言うとは思わなくて吃驚した…。
ラストすごく良かったですね。
ランマが「ロストワールドを広める」と言ったこと、友牙とガルガがそれに協力するのが良かったです。デストロイヤーも喜びそうですし、ランマは自分自身の道を選んだのだと感じられました。ここまで描いてくれたことで、ライバルであり裏主人公でもあったのだと改めて感じました。
ガルガは43話でデストロイヤーに「お前のことも信じている」と言っていましたね。デストロイヤーはその言葉に対して、ランマを守り、地球の社会規範を受け入れることで応えたのだと思っています。
そしてロストワールドを封印した神々のひとりであるガルガが、バディの友牙と共にランマたちに協力する。とても嬉しいし燃えました。
こういう色々な良い結果を引き出し、良い関係を構築する下地を作ったのが主人公の友牙なんだよね。葛藤の少ないキャラクターだからレビュー内であまり言及できなかったけど、とても良い主人公でした。
友牙役の真野拓実さん、とても合っていたと思いますしもっと長く見たかった。
ランマ役の真堂圭さんも素晴らしかったです。なかなか大変な役でしたねw
そしてミコのお父さんの声が…声がw
{/netabare}
総集編を作ることになり制作側はかなり大変だったようですが、視聴者としてはとても楽しかった!
考えさせられる良い作品でした。
(2019.5.6)