ビアンキ さんの感想・評価
4.5
不愉快で、素晴らしい。
半年ほど前
アニマックスにて放送の「広島アニメフェスティバル 特別番組」番組内で視聴
第18回(2014年)
文化庁メディア芸術祭 アニメ部門大賞受賞作品
ロシアの女性アニメ監督:アンナ・ブダノヴァ
が、自身のかつての体験をもとにして制作したという、
負の感情渦巻く、繊細なダークファンタジー
10分ほどの短編作品。
何をやってもうまくいかず、その上運の悪い、
太った少女が、ある日怒りに任せて落書きをする。
その落書きは化け物となり少女の「友達」になる。
化け物は少女が大人になっていくと共に、
少女が経験した不幸な体験や、少女の悲しみ、苦しみを糧とするかのごとく成長し大きくなっていく。
そして…
…以上あらすじ
本作の魅力を書いていく
まず、
絵本のようなタッチのアニメーションが素晴らしい。
絵本をそのままアニメ化したような、
画面全体がチラついているアニメーション。
「スノーマン」に近い感じ。
しかし全体的な色使いは、黒や灰色が圧倒的に多く非常にダーク。
作画クオリティも非常に高い。
一見すると余計な線が多すぎて雑なように見えるが、
これだけ多くの線を、アニメーションとして違和感なく動かすことの苦労を考えると、
恐ろしく労力のかかったアニメーションだと言えるだろう。
腕のいいクリエーターじゃないと作れない。これは。
そしてこの線の多いアニメーションは
かなりリアルなタッチで描かれた「人物」と、
完全に架空のものである「化け物」を、作品中に違和感なく共存させるには最適だと思う。
非常に手の込んだ、
クリエーターの情熱の「結晶」と言えるだろう。
音
本作は音、あるいは音楽にこだわりが見られる。
「不協和音」というのだろうか?
どれも痛々しい。
弦楽器が「ギィーーー」 と不快な音を奏で、
その弦楽器の中に、尖った高音を置いていくピアノの音。
それらが基本単発的に、時に集中的に流れている。
そういった「音」が混じり合い、本作の「音楽」を形作っている。
その他にもおそらく実際に録音したのであろう、
ハエの飛ぶ音や、赤ん坊の泣き声なども、音や音楽といえるだろう。
どれも不快だ。
どれも少女の「心の傷の痛み」が反映されたように、妙に高く、尖っている。
聞いてて気持ちのいいものではないが、
作品全体に「負」が満ちあふれている本作には非常に合っている。
演出としては優秀だろう。
「The Wound(ジ ウーンド)」というタイトルは日本語に直すと
「心の傷」という意味らしい。
本作に「救い」はない。たぶん。
上記のアニメーションに関しての感想で私は
「絵本のよう」と言ったが、
それはアニメーションだけではなく、この作品そのものもそうなのかもしれない。
私個人は、
本作は監督が贈る、
一種の昔話、教訓、あるいは伝説とか、反面教師に近いような
「萬話」だと感じた。
本作の解釈に関しては ほかの方の感想も是非聞いてみたい。
最後に、
短編ながらいろいろと考察の余地のある作品だった。
そのため さっきも書いたが、是非他の方の感想も聞いてみたい。
しかしこの評価を書き込んだ今現在時点で本作は
DVD化、Blu-ray化はされていない。
非常に残念だ、もったいない。
もっともっと知られて欲しい、
もっともっと色んな方に見てもらいたい作品だ。
もし見る機会があったら、是非見ていただきたい。
「傑作」と評価する。
下手くそで纏まりのない文章、お読み頂きありがとうございます。
あ、本作を登録していただきありがとうございます。
本当に最後になりますがこの場で感謝申し上げます。
ありがとうございます。