ワドルディ隊員 さんの感想・評価
4.1
公明正大
このアニメは、1979年に起きたイスラム革命を題材とした
白黒のフランス映画である。原作である漫画名は
同名の「ペルセポリス」。
ちなみに、漫画のペルセポリスはベストセラーになる程、世界では
注目されている作品でもある。
内容を一行で言い表すと、マルジャン・サトラピ監督の体験談である。
いわば、伝記物だ。冒頭で、イラン革命に関する説明はされる
ものの事前に知識を入れておくと、理解がスムーズに進むの
ではないかと思われる。
見終わった感想だが、多少コミカルになっているものの
少女マルジが懸命に生きる姿をきちんと描いた作品だった。
監督自身の体験談ということもあり、非常に濃厚な作りに仕上がっている。
社会風刺がかなり強いのも大きな特徴。
印象に残っているのは、ゴジラを風刺として登場させたシーンだ。
余りにもストレートすぎて流石に笑ってしまった。まさか、
こういった形でゴジラを見れるとは思っていなかったからだ。
だが、当時のマルジたちの心境を表している大事な場面なので必要だと
いうのはよく分かる。やはり、ゴジラは比喩表現としても非常に
使いやすいということだろうか。ゴジラが世界でも愛される
理由の一つなのかもしれない。
ユーモアセンスあふれる点も忘れてはならない。
留学先で恋人ができたのだが、長続きはしなかったらしく、
本人はそのことを後悔していた。当初は、恋人が王子様に
見えていたのに、冷めたころには一転して
ダサいオトコに様変わりする場面は特に印象的だ。余りの落差に
腹を痛めそうになった程。
これは私だけかもしれないが、マルジが成長期を迎えたシーンは
特に印象に残っている。ぶっちゃけ、やりすぎである。
顎の肥大化、手や目の巨大化に留まらず、胸が大きくなった
反動を、尻が大きくなった反動で打ち消すなどセンスが
ずば抜けているのだ。どうすればそのような
発想を思いつけるのだろうか。
ここまでネタにできるのは、彼女自身の伝記物だからなのかと
自らレビューを書いていて改めて納得した。
そして、マルジを心から愛するお婆ちゃんの存在。
マルジと接する際、彼女が主人公に常々言い続けている
言葉「公明正大」。この作品を象徴しているといっても過言ではない。
お婆ちゃんの愛が骨の髄まで伝わってくる。
マルジャン・サトラピがどういった人生を歩んでいたのかに興味がある方
イランに興味がある方、強い女性を描いた作品を見たい方なら
一度視聴してみてはどうだろうか。
個人的には間違いなく良作だと思う。