鸐 さんの感想・評価
3.8
哀愁漂う一輪車
50%OFFの一輪車がドラマづけによって、同情を誘う一人のキャラクターになってしまった。
なんで私は一輪車に対してこんなにも同情を抱いているのだろう。
物語は雨の夜、店の一角におかれた50%OFFの値札がついた一輪車の夢からはじまる。
{netabare}
作画事故ともいえる、ピエロの動きに突っ込みを入れて楽しんでいると…
ピエロは退場し、一輪車へとスポットライトが当たる。
ありえない動きは夢である証拠。
夢の中で喝采を浴びる一輪車。
これは一輪車の夢だったことを思いだす。
すると、今度は現実世界へ。
現実世界でうなだれて元の場所へ戻る一輪車。
そう、これはファンタジーな物語だったのだ。
一輪車のキャラクター性が増し、一気に一輪車へと意識がひきつけられる。
そして、一輪車は元の場所へ。
始まりと同じ場所だが、一輪車の様子は最初とは違うものとなっている。
物語の作り方でみた、同じところに戻っても、それによって与える印象は変えなければいけないというお手本のような演出。{/netabare}
なんて面白いんだろう。
キャンパーになったヒロシの芸風のような哀愁漂う世界。
{netabare}
スポットライトも、ピエロの失敗も、雨の夜の街角も、雨漏りで置かれたバケツも
全て哀愁につながる要素になっている。
一輪車が立てかけられている壁に貼られたSEALの文字は視聴しているこちらの気持ちを代弁するかのようだ。{/netabare}
作画に関しては雨を合成するという技術が使われており、映像づくりに対する柔軟な発想がポイント高い。
意外とカロリーコントロールをしているのはルクソーJr.もそうだった。
少ないカロリーで作品を仕上げる技術も映像制作者の手腕だなあと感じる。