ワドルディ隊員 さんの感想・評価
3.5
ミッキーマウスの原点
このアニメは、ミッキーマウスの短編映画シリーズと
して最初に制作された作品である。
調べてみて分かったことだが、この作品も元々は
サイレント映画として作られていた。
しかし、本作より前に一般公開されたトーキー映画『蒸気船ウィリー』
が大ヒットしたことを機に、トーキー映画として作り直された経緯を持つ。
大まかなあらすじとしてはこんな感じ。
チャールズ・リンドバーグにあこがれるミッキーマウス。
友人たちの協力の元飛行機を完成させる。直ぐに飛行試験を行うが
案の定失敗に終わる。そのことでショックを受けていたミッキーだが
偶然目の前にあった自動車を改造して再び飛行機を作ろうと試みる。
今度は、それを用いながらミニーマウスを空へと誘うのだが…。
まず驚いたのは、滑らかに動く作画。1920年代とはいえ
ここまで優れた物は中々ないだろう。蒸気船ウィリーよりも
前に作られているので、それと比べると多少見劣りはするものの
度肝を抜かれた。ディズニー映画の神髄を垣間見たような気がする。
カメラワークも非常に良い。特に、中盤以降に発生する飛行機
トラブルのシーンでは臨場感をきちんと出せている。非常に驚かされた。
笑いの部分でも楽しめる所が多かった。
一番好きなのは、飛行機と衝突するのを察知した建物が自動的に
折りたたまれるシーン。不意をつかれた。笑いのセンスにおいても
非常にクオリティの高い物を作っていたのだなと改めて認識した。
これは賛否両論あると思うが、非常に個性的なミッキーも
この作品の魅力につながっている。最初の時点で、危険な香りが
漂うミッキーだが、真似事だけで終わらないのが初期のミッキーなのだ。
ちなみに、蒸気船ウィリーよりもだいぶワイルドなデザインに
仕上がっているというのも相まって、卑劣さに一層磨きがかかっている。
一人の友人を道具のようにこき使っているのは勿論のこと
車を強奪することに何のためらいもない。
お前の物は俺の物を地で行くキャラクターだったのだ。
これには驚かされた。頭の回転も速く、鳥の羽を利用すれば
飛べるはずと考え、躊躇せず鳥の羽を抜き取る姿には感動すら覚える。
飛行機から投げ飛ばされたミッキーが、持ち前の知力を
活かして飛行機を離陸させることに成功したまでは良かったものの、
その謝礼としてミニーにキスを要求するのだ。
ミッキーの強情さを表しているといっても過言ではない。正に外道。
その後の展開で、報いを受けたのでざまあみろという感情が残ったのは
私だけではないはずだ。
ミッキー以外のキャラクターも非常に個性的。
まず、気になったのは肉体を柔軟に変えられるお犬様だ。
階段状になるのはお手の物で、飛行機の駆動部までも
対応できるとは…恐れ入った。
一番凄いのは、自ら快くその役を引き受ける寛容さだ。
私なら断固拒否する。少なくとも、ミッキーから絶大な
信頼を受けているのは間違いない。
次に気になったのは、中盤から登場するお牛様。
首の長さを調節できる機能がついている素晴らしいキャラクターだ。
飛行機にしがみつく場面が多いのだが
飛行機の仕組みを知りつくているのだろう、飛行機が壊れないように
バランスを保ちながらしがみついているのだ。誠に感服した。
もしかすると、トムとジェリーはこの作品から影響を
受けたのかもしれない。少なくとも、ディズニーの歴史を語る上
では重要な作品の一つだと私は判断した。
ディズニー映画が大好きな方で尚且つ、この作品を見ていない方は
一度視聴してみることをお勧めする。個人的には良作だと思う。