nyaro さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 5.0
音楽 : 3.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
女性の描き方が秀逸でした。ガンダムで最高の作品の1つです。
映画の話がありますので、再視聴中です。とはいえもう何度も見ている作品です。
素直に言って、非富野ガンダムではこれが一番面白いです。富野ガンダム含めても最高の作品の1つです。エンタメとしての出来はもちろんですが、やはり女性の描き方が非常に秀逸な作品だと思うからです。世間の評判通り、ロボットアニメという視点だけで見ると子供っぽい点は否定しません。が、女性の丁寧な描写では最高傑作だと思います。
ルナマリアはガンダム史上もっともビッチでしょう。それもただエロいだけではありません。優秀なキャリアで最前線のバリバリエリートです。一見、男に依存しないような立場にありながら、アスランに対する腰の振り方はすごかったです。なぜ彼女はピンクのミニスカなのか。ガンダムでは珍しくパンツの描写を入れたのか。その意味は明らかに意図的です。
名前を知ったときの表情とか、「お・て・ほ・ん」とか、ミーアとくっついているときの嫉妬とか本当に秀逸な描写でした。シード無印のフレイは父の復讐とか生き残らなければならない、古いタイプの女性像として股を開いたわけです。その比較が非常に面白い。エリートでいながらどこか本気にならないで男に依存する感じが一流企業にいるキャリア志向女性のような感じがします。
しかも、妹メイリンです。姉のルナマリアはアスランがシンに劣ると思うとすぐに乗り換えます。ですが、メイリンは弱っているアスランをかばいます。この対比ですね。だからこそ、カガリはメイリンにアスランを託しました。妹のコンプレックスの問題もあり、この姉妹だけでも見る価値があります。
カガリは結婚について、ですね。仕方なく流されて国に殉じようとした前半と、ラストの決意の比較が彼女のノブレスオブリージュの自覚が感じられます。この成長が素晴らしかった。圧巻はラクスと共に行ったスピーチですね。あのシーンは本当にカッコ良かった。
ミーアもいいキャラでした。憎まれざるをえないキャラ設定でしたが、ルックスに対するコンプレックスと、ラクスになりたいという努力と想い。その夢がかなって有頂天になりつつも自分が偽物だという負い目。そういう複雑な内面が実に物語上の特に彼女の結末において、丁寧に描写されました。
ラクスはディスティニーにおいては聖女の役周りになっていました。それが物足りなくはありますが、ミーアが活躍している場面を見てちょっとヤキモチを妬いてましたね。それをキラが否定したときのちょっとうれしそうな顔とか、可愛い一面が描かれていました。
タリア艦長ですね。彼女は管理職の辛さと威厳の象徴のような面がありつつ、女の面をちゃんと持っていました。その弱さは女性の中間…そう部長職くらいの立ち位置に通じるところがあります。
ステラ…ステラは強化人間の系列の悲哀のドラマの為に作られたキャラの感じはあります。が、男性の管理職やコーチなどに依存する女性の様でもありました。〇〇さんのために頑張るは、やはり女性と男性では意味合いが違います。女子バレーなどで問題になりますけどね。
また、男性(シン)から見た場合は、無垢でロリな女性ですけどその本質を男は知らないという意味でもあるでしょう。
と言う風に女性を見事に、リアリティとアナロジーをもって描き切った名作だと思います。そして、無印では悪女フレイと聖女ラクスの対比からの、フレイの人間としての根性というか最後まで生きようという執念が素晴らしい描写でした。(なお、無印のラクスの聖女性は一面の見方で、アイドルという偶像から自立して、解放のシンボルとしての聖女になるというストーリーです。キラに対してだけ女・少女の顔を見せ、アスランに見せる仮面との違いに注目でしょう)
このガンダムシードとディスティニーはロボットと男キャラだけ見れば、幼稚で奥行が無いように見えるかもしれません。ですが、女性については、キャラ設定もストーリーも、細かい表情なども含めて、非常に丁寧に奥行がある作りになっています。
Vガンダムも女性描写について富野節として秀逸ですが、よりリアリティを持って女性が描けているのは本作だと思います。
私はやっぱりメイリン推しのミーア、よく頑張ったという感じです。そして無印のフレイとラクスは素晴らしかった。
ロボットと男は、まあ、どうでもいいです。