ossan_2014 さんの感想・評価
3.2
物語 : 2.0
作画 : 4.5
声優 : 3.0
音楽 : 4.5
キャラ : 2.0
状態:観終わった
魔界都市の秘密
原因不明の〈魔震〉によって異界と混淆し〈魔界都市〉と化したニューヨーク。
そこには〈あちら側〉との均衡をはかるべく、〈闇ガード〉として〈妖魔〉と戦う異能の〈魔人〉たちの姿があった…
あと何だろう。
木刀ではなく血流に〈念を込めて斬る剣法〉と、〈一人称の変る多重人格〉の魔人あたりだろうか。
なにかに似ているとか真似ているとか言いたいわけではない。
「異能を持った異形の超人たちの異次元的な戦い」という想像力は、伝奇SFのみならず、SF抜きの伝奇や忍法帖、ひょっとすると講談まで遡れる普遍的なもので、どこかにオリジナルがあるというものではない。
設定上のアレコレの類似よりも、その世界がどれほど魅力的に見えるかの描写力を楽しむものだろう。
変貌したニューヨークの、軽金属とガラスではなく石造りの摩天楼や、『スターバックス』の代わりにダイナーの並ぶ50年代的な街並みは十分に魅力的で、ジャーナリスト志望である主人公のガイドで進む、異世界の観光旅行のような趣だ。
少し意味の分かりにくい描写があっても、ちょうど街のルールを把握しきった確信が持てずに微かな不安と苛立ちを常に引き摺るような、独りで外国を歩く時のあの独特の感覚を思い出させて、観光旅行的な気分を触発する。
ビジュアルもハッタリが効いていて、「必殺技」を叫ぶケレンに一歩も引けを取っていない。
特にED映像は、楽曲とよくマッチしていて出色の出来だ。
(それにしても、第一話の冒頭で設定を解説するトーク番組のシーンは、どうせなら伊武雅刀と小林克也に演じてほしかった。無理なら、せめて声帯模写で)
ただ、例によって引っ掛かりを覚えてしまうのは、「秘密組織」だ。
「異界」の存在が現前していて、その混淆のバランスの崩れがこの世界全体の存続に致命的な影響があると広く知れわたっている状況で、全人類の運命を背負って侵攻を食い止める「秘密」結社が「人知れず」に「暗躍」することにどのような理由があるというのか。
異界の脅威は公開されているのに、「暗躍」の最中に「秘密」結社員が「人知れずに」異界勢力に敗北してしまったら、全人類は何が起きたか知ることがないまま破滅してしまうという事態が、原作でどう合理化されているかは知らない。
共感してくれる視聴者がほとんどいないのは承知しているが、「秘密結社」ライブラの拠点は、金銭的にリッチなばかりでなく品格〈クラス〉があり、社会の底辺近くにいる主人公の生活ぶりと比べ、はっきりと階級〈クラス〉の異なる上流的な豊かさを示しているものとして表現されていることが引っかかる。
わざわざ導入されている必然性の薄い「秘密」は、結社の「富」と、設定上の理屈とは無関係に、製作者の脳内イメージとして無自覚のうちに相関付けられていると感じられてならない。
あまたのアニメ作品の中で、貧困にあえいで貧乏くさく描写される「秘密組織」を、ほとんど見たことはない。
「秘密」=富と無批判に結び付けてイメージしてしまう感性は、「金を持っている奴は 『裏』 で 『上手く立ち回って』 『甘い汁を吸っている』 に決まっている」というオヤジ週刊誌の妬み根性と同根に見えて、若さか知性のどちらかが欠けていると感じてしまう。
結社の上品な拠点を保つ「富」の為に必要な「秘密」なのかと一旦印象付けられてしまうと、ストーリーの神秘性が少なからず損なわれてしまって、残念な気がする。