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「虐殺器官(アニメ映画)」

総合得点
74.2
感想・評価
252
棚に入れた
1857
ランキング
934
★★★★☆ 3.8 (252)
物語
3.8
作画
4.0
声優
3.8
音楽
3.7
キャラ
3.6

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虐殺器官の感想・評価はどうでしたか?

ネタバレ

聖剣 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 3.5 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

ポジティブな意味でステレオタイプ

非常に好きな世界観であり
抵抗なく話に入っていくことができた。
つまり、
ある種の典型であるとも言えるだろう。

小説が原作にあるため、
以下はできるだけ映像作品としての内容としている。


【インターフェイス】
{netabare}
いつの頃からかアニメ制作スタッフ内に
インターフェイスデザインなる肩書を見かけるようになった。
近未来を舞台とした場合、
その先進性を表現するのに
最も簡単で効果的なのは電子デバイスであり、
そのインターフェイスに手抜きは許されないと思っている。

本作においては
軍用に最適化された視覚デバイスにおいて
その表現が確認できる。
が、
それはあまりにもFPS的で、目新しさは感じられない。

邪推すると
あまりにゲームライクなインターフェイスは、
受け入れ易いというメリットを優先した結果なのだろうか。
よりゲーム的にすることで
残酷なシーンをフィクショナルな位置に移行し
痛さや怖さ、罪悪感といった
負の感情を軽減させることを期待していたのかもしれない。
ただ、
これによって残虐的表現が肯定できるとは言えない。

むしろ、
作中の『痛覚マスキング』という概念と併せて
感情調整を受けている主人公の追体験として
好意的に捉えたほうがポジティブといえようか。{/netabare}


【キャスティング】
{netabare}
おそらく声優のキャスティングについて
異論を挟む人は少ないと思われる。
特に
主役二人による掛け合いは
展開の核心に迫るヤマ場であり見せ場でもある。
声優ファンにはその声質だけで魅了されているのでは?
と、想像に難くない。

確かに
声優に無知な自分でも
さすがに声を聞けば「あっ、あの役の人か!」となる。
実はここが曲者。
本作で演じている役より先に
他の作品のキャラをイメージ出来てしまうのは本末転倒であろう。
慣れ親しんだ声による安心感は、
意外性や驚きといった面白みを欠いていることに少し無自覚だ。
第一、
映像作品を見ているのであって
声優の声を聞くための映像を見ているのではない。

主役二人の声質が
どこか似通った印象を受けたのは個人的心象だとしても、
候補となる選択肢の幅が少ないのは
現実に存在している事実。
狭い範囲内での人選しかできない現状を憂慮すべきであろう。{/netabare}


【レトリック】
{netabare}
物語の核心についての評価はかなり高く見積もっている。

要約すると、
種としての生存・存続のために『虐殺』という本能があり、
その発動には『言葉(文法)』がキッカケになっているということ。
おそらく
『子殺し』からの着想と勝手に思っているが
あくまでフィクションであるため、
発動条件が語音なのか語彙なのか、
それを科学的に議論するのは不毛であるし、
本質はその議論を求めていない。

着目すべきは『文字』である。

例えば
文章を書こうとした場合、
その選ぶ単語や語順、そして形容詞や副詞など多くの選択肢の中から
たったひとつの組み合わせを選ぶことになる。
仮に、
多少、語順が入れ変わったとしても、
似た意味の単語に入れ替えたとしても、
伝えたい意味が大きく変わることはないだろう。
ただ、
一つの作品を作るには
この工程を際限なく続けていくことになる。
そんな単調な作業中に、

『ある特定の組み合わせの場合には、
表向きの意味とは別に、別の意味がこの文章に生まれているのでは?』

と、あらぬ方向に想像が飛躍しても何ら不思議ではない。

ただ
それを映像表現にするのは難しく、
仮説の正否を確かめるまでには至っていない。
むしろ
原作に手を伸ばし
作者の紡いだ言葉を理解しながら、
どこかのタイミングで
『あっ、虐殺器官が働き始めたかも?』と
想像力豊かに読み進めるのは、実に楽しそうではないかと思う。{/netabare}

投稿 : 2018/03/29
閲覧 : 282
サンキュー:

10

アトランティス さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 4.0 作画 : 3.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

ジェノサイド

あにこれである方のレビューを読んで見ようと思っていた作品。

内容は、文明が進んだ(といっても2020年代の)現代世界で
人間の意識の根源に眠る本能について自分の生き方との中で葛藤する
アメリカの特殊部隊所属の主人公のストーリー。

主人公の物語と書いた理由は本作を最後まで見て頂けると分かると思います。

硬派なSFものでタイトルからして疎遠している方もおられることと思いますがグロ描写は多いです。(サイコパスに近いかも)

文明が進み豊かな生活を送る人間、
遅れた文明の中で常に誰かの負の意識に囲まれて生きる人間、
その両者の線引き。
人間の生存本能。

現代社会を生きる人へのメッセージを多く含んでいる内容です。

いろいろ考える所はありますが
中でも印象に残ったのは
「現代の私たちが使っている便利なものがどんな残虐な過程
を踏んで作られているか、人は考えようとしない」
って言葉でした。

投稿 : 2018/03/17
閲覧 : 392
サンキュー:

24

藤乃 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 4.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

虐殺器官

ノイタミナムービー第2弾「Project Itoh」の一環として、2017年2月に劇場公開されたSFアニメ映画。
近未来の世界では、徹底的な監視社会が先進諸国に形成されていた。
一方で、発展途上国では内戦や紛争が頻発し、その黒幕として言語学者ジョン・ポールが浮かび上がる。
米軍特殊部隊員が潜入捜査でジョン・ポールの目的と、市民を扇動するその手法を探るミステリー作品です。

複雑で難しい題材ですが、しっかり説明されているので問題なく観れます。
まず、本作の重要なファクターである虐殺器官という発想が見事でした。
また、あまりにメッセージ性が強いストーリーも衝撃を受けるほど素晴らしいです。
痛覚麻痺や感情抑制によって殺人マシーンとなって任務を遂行する軍人。
自分達を豊かにする情報だけを取捨選択し、他国の内戦や紛争から目を逸らし続ける先進国の人々。
決して夢物語ではない設定の数々に現実味を感じて、まるで未来を示唆しているようで恐ろしくなりました。

豪華声優陣の演技はさすがだし、音楽も見せ場を盛り上げていて良かったです。
作画はとてつもなくキレイで、近未来技術を駆使した戦闘シーンはすごくカッコいいです。

「Project Itoh」の中ではストーリーが文学的でよくまとまっているしるし、テーマも明確で一番楽しめました。
同じく近未来SF作品の「攻殻機動隊」や「サイコパス」が好きな方にオススメです。
ただ、これはきっと活字で読んだほうが面白いだろうなぁと思います。
映像作品では内容を咀嚼する前に次々と進行してしまうので、そのうち小説でゆっくり味わいたいですね。

投稿 : 2018/02/25
閲覧 : 234
サンキュー:

6

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 3.5 音楽 : 3.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

すべての人間の心の中に潜む闇

それを浮き彫りにする言葉。
戦争を引き起こし助長させる無意識の悪意や集団心理、それらを作り出す社会の大きな波や流れを「文法」として可視化してみせるという発想が見事だった。

ただ、これはきっと活字で読んだほうが良い。原作未読でもかなりはしょられているのがわかるし、この言葉の面白さは活字でこそきっとよくわかる。
映像作品では見せ方としてどうしてもアクションに寄ってしまうし、そのスピード感についていこうとすると、そこで語られる言葉は頭で内容を咀嚼する前に次々とこぼれ落ちて行ってしまう。

舞台は近未来だが設定は9.11後の現代。戦争へと突き進むアメリカや世界へ警鐘を鳴らしたいという気持ちはわかるが、第3世界の描き方は本当にそれで良いの?という疑問は拭えないし、アメリカ人なのに日本語で会話するという違和感も若干残るから、欲を言えばできれば設定は完全に架空の近未来にして欲しかった。

それでも、テーマも明確でよくまとまっていて文学的、映像作品として十分見応えもあり、伊藤計劃の3作品の中では一番良かった。

投稿 : 2018/01/23
閲覧 : 210

明石 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

原作も読みたい

伊藤計劃プロジェクト第3段。3作品の中では1番好み。初見だと分かりにくい部分もたくさんあったので、原作読んでまた観直したい。

投稿 : 2018/01/13
閲覧 : 227
サンキュー:

0

かんぱち さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 5.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

見る人を選ぶ作品かもしれないけど…

タイトルからもお察しの通り、楽しい!とかスカッと感はないですが、見て色々と考えさせられるという意味ではとても面白かったです。お話の舞台も2020年等でそう遠くなく、何となく現実と重ね合わせて見てしまう所もありました。
ただ、私みたいな予備知識のない人が見ると頭が痛くなるかもw説明台詞も多くて、頭をフルに使った気がします。日本語音声だけど日本語字幕が欲しいなと思ってしまいました…。でもおかげで?アニメに終わらず原作も読んでみたいなと思いましたし、原作を読んでからもう一度見直してみたいなとも思いました。

また、女性や子どもが撃たれる場面など残酷な描写があるので、そういう描写が苦手な方にはおすすめできません。そういった条件をクリアした上で、SF好きな人、「歴史」や「言語」分野に関心がある人に一度見てほしい作品です。
声優さんに関していえば、普段は吹き替えで活躍されている方々の声を聴くことができて個人的に嬉しかったです。洋画っぽい雰囲気が出るように考えられたのかなーとか勝手に思ってしまいます。

投稿 : 2018/01/01
閲覧 : 192
サンキュー:

6

さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

タイトルなし

本来は「死者の帝国」、「虐殺器官」、「harmony/」の順番で公開される予定でしたが、制作会社の倒産に見舞われて最後に公開されることとなりました。
原作の公開順的にも、内容的にも最初に公開されるのがより良い気がしますが、それは言っても仕方のない事です。

内戦・紛争の中心にいつも姿を現すジョン・ポールの目的と、市民を扇動する方法をめぐるミステリー・SF作品となっています。

論理的な小難しい話に後半画面が暗くなりますので、視聴者の皆様におかれましても戦いを挑まれる可能性がございます。

初見時、後半で一部記憶が飛んでいたので最近見返しましたが、主に記憶が飛んでいたのは何故やったのかの理由づけにあたる部分でした。しかしまあ…その、人間が追い込まれる理由なんて大概見当つきますよね。
足りなかった部分が補完されても、あまり印象は変わらず。まあそうだろうなという感じにもなりましたけど、思ったより丁寧に描かれていたことは意外でした。
そして、内容が補完されてもなお、もう一度見たいと思える面白味・設定の練り込みが良く、あり、近代有数の、SF/ミステリー作品に間違いないと思います。

お気に入りの作品の一つとなりました。

投稿 : 2017/12/25
閲覧 : 261
サンキュー:

8

ネタバレ

ossan_2014 さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 3.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

虐殺の言語

【微修正。大意に変更はありません】

伊藤計劃作品アニメ化の三作目。

一人称で描かれる、情報量の多い原作小説のビジュアル化に、よく健闘している。

原作から膨大な思弁を伴う重要エピソードを大きく削り、ビジュアル化可能な行動=アクションで物語を語る手法だが、思弁=言葉を大幅に制限されながら、簡易化することなく虐殺をめぐるストーリーをとりあえず語りきったとは言えそうだ。

そのビジュアルに関しては、次々に登場するガジェットやテクノロジーに過剰な解説をすることなく、映像だけで機能を理解させていく手際は見事で、製作者の映像センスの確かさを窺わせる。

世界で頻発する虐殺の謎を追う物語は、冒頭のジョージア=グルジアで、ほとんど全ての観客に理解できないであろうグルジア語の中に放り込まれる導入から始まり、チェコ、インド、アフリカと、各地の言語の中に送り込まれることで、異言語に象徴される敵性地へ侵入する特殊工作員の皮膚感覚を表現するとともに、観客に「言語」への意識を喚起する巧妙な仕掛けが施されている。
(外国へ行ったとき、現地空港に着いた途端に周囲から「日本語」が消えている事に気付き、「外国」へ来たと強く意識する感覚を思い出させる)

一方で、英語の「文書」が必ず瞬間的にしか表示されないのは、アメリカ人という設定で日本語セリフを話す主人公を観る日本語話者の観客が、英語を「読もう」として外国語=異言語だと意識してしまわないようにする計算だろうか。
外国人を主役にした日本アニメに付きまとう問題だが、本作では英語が「自言語」と了解されていなければ具合が悪い。

「言語」に対する慎重な配慮を持った描写は、勿論、本作の主題に直結しているからだ。



{netabare}特定の文法で記述される言葉によって、意思決定が「虐殺」へと誘導されてゆく。

人間の意思を操作する技術や仕掛けは、SF作品には、しばしば登場する。

本作のSF的な独創は、「虐殺」の意思決定が「脳内のスイッチが「言語」によって押されて」発生するのではなく、「意思」決定の実態が、脳内の情報処理モジュール群のせめぎあいであり、単一の自己同一的な人格の発揮する能力ではないという、脳科学的な知見を参照した、唯一無二の確固とした「私」という人間性への懐疑だ。

人格や意思といった「私」の特性が、環境に自動反応するモジュールのせめぎあいによって「動的に」生じる現象に過ぎず、「私」や「私の意思」がモジュールを誘導する「テクノロジー」や「虐殺器官」によって変貌するSF的な設定が、他者を殺す「意思」の無根拠性をも暴きだし、実存の不安という伊藤計劃的な思弁へとつながる。

原作の母親の死をめぐるエピソードが削られることで、意思決定をめぐる理論が十分に語ることが出来ず、アクション主体で進行させざるを得ない映像作品という制約の中で、本作はかろうじて「秘密の脳内スイッチ」といった単純化に陥ることを免れ、最低限の設定を描写することには成功している。

しかし、量的に少ない脳内モジュールの「説明」からは、虐殺を発生させる「器官」が現代では必然性がないように、虐殺=他者を殺すと決意した「殺意」さえも、モジュールのせめぎあいの上に浮かぶ、必然性のない廃棄可能な泡に過ぎないという批判性までは、少し見えにくい。

モジュールの動き一つで、虐殺を「しない」という「意思」もまた、何時でも発生するほどに「人格」は不確かであるという批判性。

そして、アメリカに虐殺の文法を流通させる主人公の「意思決定」もまた、環境に反応するモジュール群の運動の産物である以上、アメリカ(および先進工業国)という「環境」に反応した「私」、の「物語」に過ぎないという、本作オリジナルのラストの批判性。
(言葉の断片を「文法」通りに配列して「虐殺の言語」を探る作業を表現する、附箋紙に覆われたボードは、「意思」を析出する脳内モジュール群の運動モデルとパラレルの巧妙な描写だ)

引き起こされている惨劇がどれほど悲惨なものであるか、「虐殺」という強い言葉の使用で想像させるだけで、十分に具体化されているとは言えないため、全体として、ややゲーム的な追いかけっこに見えがちになり、余計にこのラストの批判性の衝撃が見えにくくなっているようだ。

主要人物や少年兵のように、感情移入する固有性を持った死によって悲惨さを表してしまうと、個人の死が埋没する大量死である「虐殺」に特有の悲惨がぼやけて、ゲーム感を強める。
明らかに「悪」である、射殺される少年兵の「明確な感情」を想起させる死は、「明確な」目標と「明確な」得失点のルールが設定された「ゲーム」に親和的で、個別の死者に対する個別の理由が明確でないまま大量死が累積する「虐殺」の、不定形な得体のしれない不気味さから遠ざかる。
具体的な大量の死体の描写はしなくとも、もっと惨劇を想起させる表現の仕方はあっただろうと、少し惜しい気持ちを感じさせた。



虐殺をモチーフとした、脳科学と進化心理学に依拠したSF設定の描写は、映像作品にとっては確かに表現上の制限は多いが、人文的な視点からでも、本作の解読を試みることはできる。


人間をなぜ殺してはいけないのか、という問いに対して最もシンプルな答えは、「人間は人間を殺さない性質があるからだ」というものだろう。

「殺してはならない」という法があること自体が、人間は人間を殺す自然な性質が備わっていないという証明ともいえる。

殺すことが、人に備わった自然な性質で、不可避に常に発生するものであるならば、そもそも「殺してはならない」の法は発生しない。
「水を飲んではならない」という法があり得ないように、「殺すな」の法は発生=発想のしようが無いだろう。
そもそも「殺さない」からこそ、「イレギュラー」の発生に備えた法が発想される。

しかし、にもかかわらず太古から部族間の闘争=戦争は絶えない。

伝統社会の言語の研究によると、伝統社会では「人間」を表す言葉と、その部族あるいは「われわれ」を表す言葉は、しばしば共通しているか関連している例が見られるそうだ。

そう、「人間」同士は、「われ-われ」同士は、互いに殺し合わない。殺す「性質」を持たない。
殺せるのは、「やつら」が、われわれ「ではない」=人間「ではない」からだ。
「人間」でないものは、殺せる/殺しても構わない。

現代において、戦争で「敵」を殺すことに無条件で納得できない=抵抗を感じるのは、「敵」もまた「われわれ」と同じ「人間」であると把握されているからだ。
地上の人間は全てホモ・サピエンスという単一種であるという生物学的知見や、人権という社会思想が広範に共有、認識されることにより、現代人は敵対する敵であっても同じ「人間」であるという信憑を強固に抱いている。

したがって、現代において敵を殺す、あるいは虐殺をするには、まず相手は「人間」では「ない」と規定しなくてはならない。

ナチスはユダヤ人を「シラミ」と呼称した。
中国共産党は文革の弾圧実行に際して、敵対者を「害虫」と規定した。
ルワンダのフツ族はツチ族を「ゴキブリ」と呼んだ。
最大限の侮蔑の表現として「犬」や「豚」といった言葉を使用する言語はいくつもある。

虐殺に先立って、まず相手を「人間」以外の呼称で呼ぶこと。それは現実世界の「虐殺の言語」だ。
もしも、特定国の国民や特定集団を人間以外の動物の名で呼ぶような言説が広くみられるようになったとしたら、それは「虐殺の文法」が作動し始めた予兆であるということかもしれない。

こんな観方をしても、本作の虐殺の言語をめぐる物語に、リアリティを追加することが出来そうだ。{/netabare}

投稿 : 2017/11/11
閲覧 : 498
サンキュー:

4

ネタバレ

いさ さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

893さんには

どっかの島に引きこもって勝手に殺しあってもらって・・・
というのと同じ理屈ですな

{netabare} やっぱかー
ラストあっさりし過ぎでおかしいと思ったんだよね
あんなに文法研究して、ねりにねった返答だったのに
あの後に大鬱エンドがあったなんて
それで納得しました~ {/netabare}

投稿 : 2017/11/02
閲覧 : 254
サンキュー:

0

ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

原作も良作

原作も既読、アニメは映画館で鑑賞。
原作作者は若くして亡くなった伊藤計劃。
制作会社倒産を乗り越えて完成した作品でした。

非常にによくできています。もっと評価されていい作品です。
確かに原作の {netabare} 虐殺器官が都合のいい催眠術に置き換えられているように感じられるのですが {/netabare}
限られた時間で、しかもアニメの演出ではよく表現されていたと思います。

ラストシーンが意味不明に感じられるのですが、
{netabare} この後、アメリカで大虐殺が起こり、その後ハーモニーの世界に繋がっていきます。 {/netabare}
近未来SFの表現や痛覚が遮断された兵士同士の殺し合いなど、
よく出来た設定だと思います。

残念ながら作者の続編は読むことができませんが、
これからも日本のSFはアニメでこそ表現出来ると思います。
是非この分野でもアニメスタッフには頑張ってほしいものです。

投稿 : 2017/09/05
閲覧 : 214

revlis さんの感想・評価

★★★★☆ 3.9
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

もう一度観たい

まさに槙島聖護でした。
櫻井さん、こういう役似合いますね。

中村悠一さんも、さすがの安定感。

投稿 : 2017/05/14
閲覧 : 229
サンキュー:

3

KY21 さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 3.5 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 5.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

タイトルなし

吐き気がするほどの虐殺ではありませんでした
他人事の虐殺に感じてしまいました

投稿 : 2017/04/17
閲覧 : 214
サンキュー:

2

ネタバレ

退会済のユーザー さんの感想・評価

★★★★★ 4.3
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.5 状態:観終わった

近未来SFと現実と絶望の哲学

食料難などの原始的な群れの存続危機を回避するため、

仲間を虐殺する器官(心臓とか小腸と同種の器官の一つという意味)を人間は持っていて、それを解明し、悪用する犯人を追う話。

言語という音の連なりを、ある一定の並びで聞かせると、人間は虐殺のリミッターが外れやすくなるという設定が面白い。

脳内マスキングが衝撃だった。痛覚、恐怖の部分を脳にこないようにマスキングした軍人同士が戦闘するとどうなるか。

互いがミンチになるまで戦うはめになる。こんな未来イヤだなと感じた。正直怖い。

グサっと来たセリフを一つ

「すべての仕事は良心を麻痺させるためにするんだよ」

仕事でなかったら、ナチスの軍人はユダヤ人を大量虐殺しなかっただろう。

普通の仕事は人を殺したりしないから、そこまで深く考えなくて良い。

しかし、拡張していけば、一般の仕事も同じなんじゃないか。

仕事は便利な言い訳だが、使ってはいけないんだなと感じた。

投稿 : 2017/03/08
閲覧 : 257
ネタバレ

kakelu さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

我々は身近に存在するものは、誰の手によってどのように作られたか考えた事があるだろうか?

□はじめに

伊藤計劃による映画の第3弾。
前作「ハーモニー」に登場する『大災禍』の部分にあたる内容だそうです。
私はSF初心者にして、虐殺器官&ハーモニーともに原作は未読ですので、裏事情や真意なのが異なるかも知れませんがそのつもりですのであしからず。


□メッセージ性の強いストーリー

{netabare}事前知識ほぼゼロだったので最初、物語の根幹は「ジョンポールを倒す」だと思っていましたがそれは間違いでした。
確かに、ジョンポールが大虐殺を引き起こした元凶であることは正しいですが、最も大切なものは「なぜジョンポールが大虐殺を引き起こしたのか」ということでした。
その原因は、世界情勢や貧富の差、発展途上国での治安の悪さ。
これは、現実の私達の社会でも存在しているもので、まるで私達の未来を暗示しているかのように……
視聴後、伊藤計劃の先見性にビビりましたw
この文だけだと、何だか難しい内容にに感じられるかも知れません。
正味、難しいです。
ですが、未来の可能性の1つと想定すると、「なるほど!」と思える部分が多々あり、こんな感じでいろいろと考えるのがこの作品の楽しみ方だと思います。
違ったらごめんなさいm(_ _)m
{/netabare}

□作画の素晴らしさ、そして、それによるグロさの倍増

今作の目玉のもう1つは何と言っても迫力満点の作画。
戦闘シーンの派手は伊藤計劃の三作品中断トツのトップでしょう。
ただ、作画が素晴らしいことによりグロさが強調されてしまったのは善し悪しの分かれる部分だと思います。
血肉が飛び散るシーンもあり、グロ耐性が無い人にはかなり厳しいと……
また、{netabare}少年兵たちを次々と銃殺していく{/netabare}シーンもあり、「R-15ですが私的にはR-18の方が良かったのでは…」と思ってしまいます。


□豪華声優陣&主題歌はEGOIST

この作品は主人公のクラヴィス視点で物語が進んで行くので、声優の中村悠一ファンには堪らないかも知れません。
もちろん、私もファンです(笑)
他にも、梶さんや櫻井さんなど豪華声優陣が出演しています。

主題歌のEGOISTによる『リローデッド』は作品の世界観と一致するしていて、上手く狂気を表していると思います。

ちなみに、私の伊藤計劃シリーズの3作品でのEGOISTの好きな曲のランキングは、
1位 ハーモニーの「Ghost of a smile」
2位 虐殺器官の「リローデッド」
3位 屍者の帝国の「door」
でした。

投稿 : 2017/02/22
閲覧 : 267
サンキュー:

11

くまくまちゃん さんの感想・評価

★★☆☆☆ 1.7
物語 : 1.0 作画 : 3.0 声優 : 2.5 音楽 : 1.0 キャラ : 1.0 状態:観終わった

不倫は嫌!

人間って何、国家って何、平和って何って感じで、とても考えさせられる作品でしたが、不倫を美化するような作品は私は好きになれません。その点だけが残念です。

投稿 : 2017/02/18
閲覧 : 350
サンキュー:

6

cbr さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

心地の良い理屈っぽさ。

好き嫌い分かれるところですが・・・
個人的には良かったです。ちょうどよい理屈っぽさ。
面白かった。
観終わった人と話がしたくなりました。

投稿 : 2017/02/17
閲覧 : 210
サンキュー:

5

ネタバレ

tinzei さんの感想・評価

★★★★☆ 3.3
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 3.5 音楽 : 2.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

ドーナツ

人の頭がドーナツになります。ヒロインも最後ドーナツになります。終わった後ドーナツを食べたくなります。

投稿 : 2017/02/13
閲覧 : 246
サンキュー:

3

双真 さんの感想・評価

★★★★☆ 3.7
物語 : 3.5 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.5 状態:観終わった

★★★★☆☆

おもしろかった!展開が読めてしまうのが△

投稿 : 2017/02/12
閲覧 : 235
サンキュー:

3

ネタバレ

remma さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 3.0 状態:観終わった

現実の虐殺の歴史を知っているとさらに楽しめそう

劇場で見てきました。夜中に一時間車を運転した甲斐はあった。

原作を読んで、映画化が決まってとても楽しみにしていた映画でした。色々あって延期されたけど無事公開されてよかったです…!

{netabare}
この映画は少し未来の話です。
網膜上に地図やニュースを映し出したり、軍人のスーツに光学迷彩が施してあってほぼ透明になることが可能だったりしますが、実現可能と思える範囲です。あえて言えば空から兵士を収めて落下する侵入鞘は、地上に落ちればそのままマシンガンに、水中に落ちればくじらのように潜水したりして、使用が終われば自己分解とあまりに高機能なので難しそうですが……。

軍事用科学技術はすごいですがそこを注目する映画ではありません。言葉と、虐殺。そして人間の行動理念。歴史は繰り返される、と通り一遍の表現でなく「虐殺には共通のにおいがある(でしたっけ…)」「虐殺には文法がある」という登場人物のセリフにはぞっとするような現実感がありました。臨場感でなく、現実感です。実際の歴史上の事件が劇中で挙げられているせいもありますが、学校で習ってきた世界の戦争の歴史を思い返せば「言われてみれば……」と思い当たる所があるのです。

ジョン=ポールは、文法を利用して戦争の火種のある国のエネルギーを内に向け虐殺の起こる場所をつくり、平和で大切な人が突然奪われることのない世界と分離して守ろうとしました。
それが正しいことなのか、劇中では語られていません。主人公のクラヴィスがどう判断したのか、それも語られていません。審問に答えるクラヴィスの口の動きにどんな答えを乗せるかは観る者に委ねる、ということなのでしょう。
{/netabare}
R15+指定映画ですが、絵のグロさではなく事前知識の観点からR18+にしても良いと思います。ナチスドイツのヒトラーの台頭の背景、革命期のヨーロッパ等々現実に起こった虐殺、戦争について少しでも知っているとより楽しめる作品です。

投稿 : 2017/02/11
閲覧 : 231
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7

ぶたどん さんの感想・評価

★★★★☆ 3.4
物語 : 4.0 作画 : 3.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.0 キャラ : 3.0 状態:観終わった

心地の良い理屈っぽさ!

舞台は、今とそう変わらない、紛争地と安住地が点在する近未来。
主人公"クラヴィス・シェパード"は、米国に所属する特殊部隊員。
彼は、国家の指示により過激派による虐殺が後を絶たないグルジア(現:ジョージア)で、過激派の指導者を暗殺する司令を受ける。
部隊員とともに、ターゲットを追い込むが、隊員の一人"アレックス"が、急に正気を失ったことによりターゲットは死んでしまう。
不可解な隊員の暴走が頭に残りながらも、国家による次の司令が言い渡される。
「彼が訪れた所は、必ず民間人が虐殺される地獄絵図が蔓延する。
彼の名は、ジョン・ポール」
多くは語られない作戦、彼の捕縛をクラヴィス始め部隊は言い渡される。


久々にお硬いアニメを見れて、新鮮な気分でした。
しかし、個人的には、つていけなくなるほど難しい台詞の羅列はなく、
理解しがたい台詞があっても、必ずその後にワンクッション置かれて、
状況がおおよそ理解できるように優しく作られており、
エンタメ性もそこそこある作品だったと思いました。
タイトルにも描かせて頂きましたが、理屈っぽい、思想の強さ、メッセージ性を楽しめるかどうかで評価が別れる作品だと想います。
それだけでなく、紛争地の音響や、部隊の動き、緊迫感
ハリウッド映画のような臨場感が、視聴側も少しづつクラヴィスとシンクロしていくような感じで、ミリタリー映画としても秀でたところがありました。
伊藤計劃の映画企画で、いくつか作品は有りましたが、自分はこの「虐殺器官」が一番楽しめた映画でした。

投稿 : 2017/02/09
閲覧 : 195
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4

朝霧麻衣 さんの感想・評価

★★★★★ 4.4
物語 : 5.0 作画 : 4.5 声優 : 4.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

自由を捨て監視社会を形成した先進国、内戦と虐殺が蔓延る貧しい国々

原作者は伊藤計劃、34歳という若さでお亡くなりになったSF作家です。伊藤プロジェクトの一つで、既に放映された「屍者の帝国」「ハーモニー」の原作者でもあります。

【あらすじ】
テロの多発をきっかけに、徹底的な監視社会を形成することとなった先進諸国、それとは反対に後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。急激に増加する内戦や虐殺の黒幕として浮かび上がった「ジョン・ポール」、彼を追うのは主に暗殺を主任務とする米軍の特殊部隊。暗殺ミッションに従事する彼らの潜入捜査の内情とジョン・ポールの目的とは何なのか。

【キャラ】
声優が同じということもあり、ジョン・ポールが「サイコパス」の槙島に見えてきました。

【所感】
登場人物達(特にジョン)が語ることは、現代を生きる人達に投げかけられた強いメッセージだと感じました。私が感じたことを挙げていきます。

①今後の世界情勢によっては決して夢物語ではない設定

現地テロリストと特殊部隊員の激しい戦闘、最新の無人兵器や隊員達に当然のように殺されていくテロリスト達とそれを平然と遂行していく隊員達...痛覚麻痺や感情抑制によって完全な殺人マシーンと化していました。ただ機械のように引き金を引いていく、腕や足が千切れても任務を遂行していく、こんな現実が起きてもおかしくない時代に生きているのかと思うととても恐ろしく感じました(;一_一)隊員達がよく「仕事だから」と言って自分たちに正当性を持たせる行為..本当に恐ろしい(;一_一)タイトルやあらすじからもわかる通りかなりグロい描写が多々ありますので苦手な方ご注意ください!※R15指定の作品です。

②現実から目を背け、都合の良い情報だけを取り込もうとする民衆

厳しい監視社会によって約束された治安の良い先進国で豊かに暮らす人達、一方では内戦によって命を落とすかもしれない中で生きる貧しい国の人達がいる。自分達を豊かにする情報だけを取捨選択していく。今の世の中ですらそういった風潮にあります。これだけ情報が発達した社会でなぜ人々は世界に目を向けないのか?作品内では紛争・内戦の規模が違いますがそんな中でも目を逸らし続ける人達を見て自分たちもこうなるだろうと安易に予想できてしまう自分が怖かったです。

③言葉がもたらす人の感情に対する影響

作品内では言葉による人の感情への影響についてといった話がされます。自己の意思によって決定し行動を起こす、果たして本当にそれは自分の意思なのか?ちょっとこの辺難しくてよく分かりませんでした。

【まとめ】
ストーリーの核心に触れず思ったことだけ書くと無駄に長文になってしまいました。とにかく現代を生きるたくさんの人達に見てもらいたい作品です。この映画を見てどこか背筋が冷える、ナイフを突き付けられたかのような感覚がありました。こんな世界にはどうかならないで欲しいと願います(;一_一)近未来を想定したSFものだと「攻殻機動隊」や「サイコパス」が好きな方には是非お勧めします!原作を読んでいないので、読んでもっと深掘り出来たらレビューまとめ直します。

投稿 : 2017/02/09
閲覧 : 256
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19

ネタバレ

ぽ~か~ふぇいす さんの感想・評価

★★★★★ 4.2
物語 : 4.5 作画 : 5.0 声優 : 4.0 音楽 : 3.5 キャラ : 4.0 状態:観終わった

たぶん原作既読の方が楽しめると思う

Project Itoh3部作最後の一つ
伊藤計劃のデビュー作であり
ハーモニーの世界を作り出した元凶の事件を扱った作品なので
時系列順に考えても世に出た順番を考えても
ハーモニーよりも先にこちらを見るべきです

当然製作サイドとしてもそのつもりで考えていたのですが
マングローブの倒産によって
公開が一年以上遅れることとなり
結果的に順番が逆転してしまいました

ハーモニーと虐殺器官を比べると
SF作品としての完成度はハーモニーの方が上だと思います
しかしハーモニーはそもそも映像化が非常に難しいテーマな上に
映像化する旨味がほとんどない作品でした
虐殺器官はいわば社会派SFガンアクションなので
映像化と非常に相性が良かったと思います

近未来的な様々なガジェットは
伊藤計劃の緻密な筆致により
映像なしでも十分に楽しめるものでしたが
映像化によりさらに実感しやすくなったと思いますし
戦闘シーンも緊迫感があって良かったです

とはいえインドでのシーンで{netabare}
薬物投与で感情制御した殺人マシーンとして
貧弱な武装で練度の低い少年兵たちを
淡々と撃ち殺していくのは{/netabare}
R15+のレイティングだとしてもやりすぎ感があります
それが本作のテーマの中核に近い部分にあり
本当に必要なシーンであるのは間違いないのですが
それでもあまり観ていて気持ちのいいものではないですね

しかし、そこをぼかしてしまったら
映像化する意味がなくなってしまうのも確かです
この作品は近未来を舞台にしたSF作品ですが
扱っている内容はそのまま我々が生きている現実世界が直面している問題です

経済格差から起こる内戦
金と権力のために戦争に身を投じる傭兵
消耗品として扱われる少年兵たち
それら地球の裏側の悲劇を対岸の火事として目を背け
平和を享受し安穏と生きる人々

作品はあくまで近未来の空想の社会を描いたものですが
そのテーマははっきりと我々の生きる現実世界を捉えています
こういった現代社会に対するメッセージ性の高いSF作品というのは
この虐殺器官以降一大ムーブメントとなり
様々な作品が生まれました
同じノイタミナのPSYCHO-PASSシリーズもその一つです
SFというジャンル自体に閉塞感が漂い
SFは死んだなどと言われていた時代に
一つの風穴を開けたのが伊藤計劃だったのだと思います

計劃が亡くなってから
シリアでは激しい内戦がおこり
世界中でテロの嵐が吹き荒れ
アメリカ最優先主義のアメリカ政権が誕生
現在はまさに計劃の描いた社会の歪みが
そのまま具現化したような世界情勢です
我々はサラエボが核の炎に包まれる前に
社会のあるべき姿を模索しなければならないのかもしれません

~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~

以下映画版のみならず小説版も絡んだネタバレあり

映像化にあたり尺の都合かいろいろと端折ったり改変されています

序盤の導入に関しては非常にうまくやったなという印象
{netabare}原作では最初の任務から帰ってチェコに行くまでの間に
アレックスは自殺したことになっています
カトリックにとって自殺は罪
敬虔なカトリックであるアレックスが自殺するというのは
それだけ過酷な環境であることと
感情制御技術が完璧でないことのあらわれではあったのですが
そもそも映画だとカトリックの教義さえわからずに見る人もいるでしょうし
あまり映像化して面白い演出でもありません
映画では現地語を唯一理解できたアレックスが
感情制御のおかげで虐殺の文法に過剰に反応し暴走した
というオリジナル展開に変更
非常にうまく機能していました{/netabare}

逆にうまくいっていなかったのはラストシーン
{netabare}クラヴィスは最後に
虐殺の文法を英語にして公聴会で使用し
アメリカを内戦の渦に巻き込み
ハーモニーで語られる「大災禍」の引き金を引いて終わります

母の死、同僚の自殺、インドでの敗戦、ルツィアの死
だんだん精神的に追い詰められていく過程が
一人称視点でじっくり描かれている原作版でさえ
最後のオチは予測はできたものの
ルツィアが死んだあたりから
それまでの緻密で過剰なほどの説明から一転し
急に展開が雑になった印象を受けました

実際原作を読んでいない友人たちは
「ただ内部告発したのか、文法でテロを誘発したのか
曖昧なラストに見えた」
「クラヴィスが文法を使う理由が見当たらなかった」
などと言っています

たしかに映画版のクラヴィスは最初から最後まで
基本的に冷静でタフな人間に描かれています
ところどころ独白は混じるものの
3人称視点に近い映画版のクラヴィスからは
祖国に向けて文法を使うほどの闇が見えませんね

限られた地域だけの偽りの平和の中でぬくぬくと生きている人々が
最後にはそのツケを利子付きで支払うことになるラストが
この作品のメインテーマを考えるうえで
非常に重要なファクターなのは疑いようもありません

ラスト部分の描写はもう少ししっかりしておかないと
原作未読の人からしたら物語そのもののテーマがぼけて
いまいち締まらない印象になってしまっているんじゃないでしょうか?{/netabare}

ハーモニーは正直原作だけで十分という感じでした
こちらは原作を補完する映像作品として非常に質が高かったと思いますが
映画だけを見るという楽しみ方はやはりあまりお勧めできません

映画→原作の順番でもいいのかもしれませんが
映画→原作の後もう一度映画で確認するよりは
原作→映画→原作なら追加でお金もかからないので
私のおすすめは原作→映画の順ということにしておきたいと思います

投稿 : 2017/02/08
閲覧 : 718
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25

amZ さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.5 声優 : 4.5 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

近未来の特殊部隊

近未来が舞台の特殊部隊を描いた作品。

中東で起こったテロをきっかけに、先進国では誰がいつ何処に居たかの情報が管理される監視社会となっている。
一方開発途上国や発展途上中の治安の悪い国では内戦・テロが頻発し虐殺が行われていた。
どの内戦・テロの中心に必ずジョン・ポールという男が名前があり、この男が引き金となって虐殺が行われていた。 
その男を捕らえるために特殊部隊クラウディス・シェパードが戦地に赴く。

あまり書いてしまうとネタばれになるのでCM程度の内容で。


こういう風に描いてしまうとハリウッド映画の特殊部隊物かと思ってしまいますが、もっと深い作品でした。
戦闘シーンや、近未来の技術等を駆使して戦うのはもちろんカッコいいのですが、近未来でこういう事件が起きた場合、発展途上国・先進国はこうなるであろうという考察が深いです。 
また人物ひとりひとりの掘り下げや感情等についても丁寧に描かれ、虐殺に共感する感覚すら覚えました。
また「言葉」の持つ力についても多く語られているので、単なる戦闘作品ではないと断言します。
R15+作品なのでグロが強いシーンもありますが、攻殻機動隊やサイコパス等の作品が好きな人は大いに楽しめる作品かと思います。

一度制作会社が潰れてダメになったと思いましたが見れてよかった…!!

投稿 : 2017/02/07
閲覧 : 468
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13

コレでイイよね! さんの感想・評価

★★★★★ 5.0
物語 : 5.0 作画 : 5.0 声優 : 5.0 音楽 : 5.0 キャラ : 5.0 状態:観終わった

現代社会に一撃を与える作品

一言、圧巻でした。
僕は小説を読まずに映画から初見の状態で見たのですが、あまりにメッセージ性が強く、終始衝撃の連続でした。
人々が見たくないものをマスキングして見ないように生きている現代社会の裏側というか、そのマスキングを廃した時に見えてくる本当の世界はこういうものなのかとしみじみと感じました。
思考は言語に規定されるのか、世界が平和になるためには何が必要なのか、そもそも平和とは何なのか。 「ハーモニー」とは似たようでまた違った不気味な世界感を味わうことが出来ました。
自分のあり方、世界の在り方を非常に考えさせられる作品です。是非鑑賞してみてください。
ps 予告編でも見てわかる通り、眼球を撃ち抜かれるシーン等少々グロテスクなシーンがあるので苦手な方は少し注意してください。

投稿 : 2017/02/06
閲覧 : 159
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6

TAKARU1996 さんの感想・評価

★★★★★ 4.6
物語 : 5.0 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

「僕達」は「終末」である。それとも、「始まり」であろうか?

これは心に「覆い」が被さる前に、「無感覚」になる前に、「罪」を背負って「罰」を受けなければならない、「僕達」の物語だ。



『虐殺器官』と言う小説が出版された時の事は、今でもよく覚えています。
小松左京賞なんてど偉い賞の最終選考に、円城塔氏の『Self-Reference ENGINE』と共にノミネートされた本作『虐殺器官』
2006年は、約10年と言う歴史を紡ぎ終えた賞において、最上級の激論と最大級の衝撃が巻き起こった年だったといえるでしょう。
賞が作られてから初めての受賞者なし
小松左京賞を作った小松左京氏自身が、『虐殺器官』受賞を反対したと言う事実
しかし、反対された当の本人は時代を切り開いた、鮮烈な立役者でありました。
発売された当時、「傍観者」であった私も書店へ行って購入した事が記憶に新しいです。

そして、昨日、この映画を観て、ああ、また思い出してしまいましたよ。
ページを捲っていく中途に段々と生じていった、あの「緊張感」
他人の「業」を眺めていく内に、自らに薄汚い性悪説を見せ付けられていく、あの「嫌悪感」
そう、あの最後に至ってしまった時に生じた、ざわざわとした感情も…
「恐怖」と俗にカテゴライズされる物が、私の脳裏を一色に染め上げて行く感じ
原作もそうだが、この映画も同じくそう…
下手すると、この『虐殺器官』と言う作品は、べたなホラー映画よりも恐ろしい。
「共感性」も「罪悪感」も持たない、感情を操作された、相対するゾンビ共の紡ぐ、実に「人間らしい」物語です。
詳しくは他の方がかなり緻密に、詳しく説明されているので私は割愛するとしましょう。
また、「虐殺の経済学」について知っている人は、ジョン・ポールの目的にもやすやすと辿り着くと思いますので…
驚きたい人は無理に調べない事を推奨します。

さて、これから観る方達は、映画を見終わって自分達の家に帰るまでに、様々な「傍観者」を見る事でしょう。
スマホを見ながら、脇見せずに画面だけ見て歩く人
音楽を聴きながら、外界と隔絶した世界を自身の中に構築してる人
和気藹々と語り合う家族や友人同士、恋人同士などの群れる人
世の中には様々な人間がいます。
しかし、そんな彼らに違和感を感じたなら、あなたの鑑賞姿勢は大成功、充分に映画を理解したと言えるでしょう。
人々は「見たいものしか見ない」もの
あなたは「見たくない物」をきちんと見据えられていますか?
映画を観終わった後に「見た者」を見て、あなたが「違和感」を感じる事の出来る、「ほんとうのこと」を見咎められる、強い人間である事を祈っています。

今作は終わらないノイズが語る、「終わらない終末」「滅びのない滅び」
つまり、これは「僕達の終末」を描いた物語
そして、これは「僕達の始まり」を描く物語
決して終わる事のない、これから先も紡がれるであろう「終末の物語」です。
彼の言葉を阻む事は決して出来ない。
私達に出来るのは、彼の遺志を、他者に語り継いで伝える事だけ…
あなたは『城』の住人であり続けますか?
それとも「測量士」となって、周囲を見渡す覚悟を持ちますか?
「終末」を選ぶか、「始まり」を選ぶかはこの映画を観た私達にかかっていると言えるでしょう。
さあ、決断の時だ。

P.S.
もう既に原作『虐殺器官』をお読みになった方へ1つご忠告を…
この映画では、原作において恐らく最も印象深かったであろうシーン、「母親」とのシーンが丸ごとカットされています。
しかし、違和感は全くありません。
寧ろ、制作側も苦渋の決断だったようで、パンフレットを買うとそのカットした「意思」が大変よく分かる物でした。
気になる方は是非ともご購入を…

P.P.S.
http://www.news-postseven.com/archives/20120425_101144.html
本書が発売された当時は「夢物語」だと想っていた産物が、10年経った現在では「預言書」として扱われています。
どうか、この「預言書」が「預言」のままで…
「預言書」が「歴史書」に変貌を遂げない事を願います。

投稿 : 2017/02/06
閲覧 : 771
サンキュー:

16

ネタバレ

esso-neo さんの感想・評価

★★★★☆ 4.0
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.0 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

僕は、知らない

伊藤計劃曰く、我らの世代の絶望とは週末が続くこと。発展も滅亡も許されない日々のこと、だそうで。
つまりは読者にとって警鐘という形になる作品を映像化。制作会社がぶっ倒れようが彼らは意地を通して上映させたようで。ありがとう
いわゆるSFの構造である知的好奇心の快感、世界変革のラストなんてものを踏襲しつつ主人公の一人称視点で話を進めていく。原作から生い立ちや「メタヒストリー」という単語をオミットしてなおかつ軸はぶれていない。こいつはいい、他とくらべればあまりにも伊藤計劃であり、アニメでありながらロトスコープに迫らんとする写実性に突き進んでいる。普通逆だろ。
迂闊な変更がないからこそ、そこに選ばれた画面の1つ1つが布石として効果を最大限発揮し俺の胸をかき乱した。たまらんばい

投稿 : 2017/02/06
閲覧 : 211
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5

ネタバレ

STONE さんの感想・評価

★★★★☆ 3.6
物語 : 4.5 作画 : 3.5 声優 : 3.5 音楽 : 3.0 キャラ : 3.5 状態:観終わった

今だから、より大きな意味を持つのかも

 原作は未読。
 原作者の伊藤 計劃氏作品のアニメ化の「Project Itoh」の3作目だが、スチームパンク的
だった「屍者の帝国」、ガゼットなどに未来感が強かった「ハーモニー」と較べて、現代より
少し先の世界といった感じで、一番現実味を感じる。
 それぞれの雰囲気、世界感こそ違うものの、「ハーモニー」のレビューでも書いたように、
人間の心や意識の問題に焦点を当てるというテーマ性は変わらず。まあ、この辺は伊藤氏のみ
ならず、最近のSFではこのテーマを扱った作品は多く、それだけ掘り下げ甲斐のあるテーマ
なんだろうなと思う。
 あくまで局所的描写に留まりながらもその影響は世界全体を変えてしまうようなスケール感の
大きさも三作品に共通したところかな。

 本作の主要なファクターである虐殺器官と、それを活性化させる虐殺文法がまず興味を
そそる。
 種の保存のために同族を殺す生物は幾らでもいるわけで、人間にも種の安定化のために同族を
殺す機能があったとしてもおかしくはない。
 また洗脳などに代表される、言語による意識のコントロールも存在するわけで、虐殺器官や
虐殺文法自体は作者の創作したものだろうが、真実と虚構が入り交じった嘘と
いった感じで、やけにリアリティを感じてしまう。

 そして、虐殺文法の利用により、テロの要因となる国家に内輪もめを起こさせて、アメリカを
テロから防ぐという計画だが、これは一種のアメリカとの分断政策。
 本作は制作会社のマングローブの経営破綻により完成が遅れたわけだが、アメリカが
ドナルド・トランプ政権となった今、より大きな意味を持つ作品となった感が強い。
 原作自体はおそらく911とそれ以降のテロの多発に影響を受けて書いたのかなと思うが、
現在のアメリカを予見していたかのような伊藤氏の凄さを感じてしまった。

 主役のクラヴィス・シェパードが特殊部隊の隊員であるため、戦闘描写が多く、ミリタリー
ものの側面もある。
 本作自体は特に電脳化、ネットワーク社会などに焦点を当てていないため、いわゆるサイバー
パンク作品ではないが、ミリタリー関係で登場する各種装備は「攻殻機動隊」などのサイバー
パンク系アクションものに共通する部分があり、その辺も興味深かった。

 いわゆるアニメ作品としての作画、キャラ立ちなどは割と平凡。
 殺害シーンは割とグロっぽいが、これは3作品いずれも共通するところか。

投稿 : 2017/02/06
閲覧 : 257
サンキュー:

8

ネタバレ

zu さんの感想・評価

★★★★★ 4.5
物語 : 4.5 作画 : 4.0 声優 : 5.0 音楽 : 4.5 キャラ : 4.5 状態:観終わった

「虐殺器官」って、今のアメリカとテロの現実がリンクしてるんじゃないのかなぁと思ったり・・・

待ちに待ってました!

アニメ制作会社のスタジオmanglobe突然の経営破たんから制作が中断、新設のジェノスタジオが引き継いで制作再スタートをして、当初公開予定から約1年3ヵ月遅れて、全国公開されたProject Itohの最後の作品「虐殺器官」を公開日と2日目のレイトショーで2回観てきました。

2回とも客席はほぼ満席で「ハーモニー」「屍者の帝国」の時よりも期待して待ってた方が多かったんだなぁと実感!!

原作は以前に読んでいたんですが、映画を観る前にもう一度読み直してから鑑賞してきました。

その感想ですが、基本的には原作に沿った作りになっていましたが、映画としての尺の都合だと思いますが、主人公「クラヴィス・シェパード」の母親の話、「死者の国」の悪夢などはバッサリとカットされていたり、細かなところの改変がありますが、そのおかげで作品のテンポを良くして、映像作品としてのエンターテインメント性が高められていて、原作を未読でもある程度はわかりやすくなっていると思います。

改変の一部ですが、序盤で虐殺を行っている元准将とジョン・ポールの暗殺作戦中に現地語のわかるクラヴィスの部下アレックスがラジオから流れてくるプロパガンダに織り込まれている「虐殺の文法」よって汚染されてしまいクラヴィスが尋問中の元准将を虐殺してしまい、異変に気が付いたクラヴィスに射殺されてしまうのですが(原作ではクラヴィスが元准将をナイフで殺害していて、アレックスは2年後に自殺している)このアレックスが汚染された事が、中盤くらいのクラヴィスとジョン・ポール会話の中の伏線になっていたり、ジョン・ポールのセリフが元愛人だったルツィアに変わっていたりしていたけど、作品においてもっとも重要な会話は残し、時には別の場面のセリフを早めに表示してメリハリをつけるなど、原作からの選別と再構成が見事でした。

グロさに関しては、市民の虐殺、少年少女の民兵と戦闘(腕、足、頭が吹っ飛ぶ)痛覚マーキングをした軍人同士の戦闘(特にクラヴィスの部下リーランドの下半身が無くなっても戦っている)シーンなどは、かなりグロかったけど、ルツィアの最後の描写は分かっていても音と映像でビクっとしてしまった!

それでも原作の文章として読んでいる方がインパクトが大きく感じたので、映画を観たあとに原作を読んでみる事をお薦めします。


映画の公開延期でタイトルのようにアメリカのトランプ大統領が誕生して、テロ関連国家からの入国拒否、移民制限、貿易制限といった極端な一国平和主義になろうとしているとは、偶然とは思えない絶妙なタイミングで、この時を狙っていたかのようにすら感じたし、原作者の伊藤計劃は、まるで10年前に現在を予測していたのでは?と思えた作品でした。

ジョン・ポールのCVが櫻井孝宏さんで、その言葉使いと雰囲気が「PSYCHO-PASS サイコパス」の槙島が年をとったらこんな感じかなと思えたのは、自分だけでは無いはずですw

最後に個人的には、原作の最後の「ぼくはソファでピザを食べる。」「けれど、ここ以外の場所は静かだろうな、と思うと、すこし気持ちがやわらいだ」のところまで、映像として観てみたかったなぁ(^^♪

投稿 : 2017/02/05
閲覧 : 274
サンキュー:

31

ネタバレ

ねごしエイタ さんの感想・評価

★★★★★ 4.1
物語 : 4.0 作画 : 4.0 声優 : 4.5 音楽 : 4.0 キャラ : 4.0 状態:観終わった

高レベル会話みたいなやり取りがある大人向きアニメですかねぇ。

 初日昼間、見に行ったです。平日昼間で、満席に近い客数だったので驚いたです。題名の通り、虐殺シーンR12の多い内容があって凄まじかったです。それ以外では、人間の言語器官に置いてどこか深い意味合いを表すとでもいうようなアニメだったです。その内容、難しいかもです。

 いろいろな場所での出来事が折り重なるとでもいうのかなぁ?です。そこから、主人公のクラヴィスに偉そうな人たちの質問攻めの場面が、間のいろいろな展開を挟んで最後の場面につながるというものだったです。

 世界の内乱で、虐殺が起こされているところに必ず、ジョン・ポールという人物の関与があるということで、クラヴィスと同僚のウィリアムズが、ジョン・ポールを捕まえる使命を帯びるです。で、ジョン・ポールが最後に接触したルツィアという女性を張り込み関わることで、話は進むです。クラヴィスは、ルツィアに惚れるみたいだけど・・・だったです。

 人口筋肉、オルタナ、ナノディスプレイ、痛覚マスキングと言ったいろいろな用語、その現場が出てくるです。
{netabare} オルタナ、ナノディスプレイは、ハーモニーのWatchMeを思い起こすというのか?コンピューターのように自分が見た人物をスキャンするとでもいう、テクノロジーのようだったです。
 痛覚マスキングなんか麻薬、ドーピングのようなもので、重傷であったとしても痛みを感じないというものだったです。その極端な例は、終盤に差し掛かるとクラヴィスの乗った輸送ヘリが撃墜された後の場面で誰でてもわかると思うです。
 戦闘前にクラヴィス達が、痛覚マスキングなどリアルに施される場面があるです。それは、相手が誰だろうと殺すことに違和感を感じさせない非人道的な精神状態にするドーピングも施されるです。

 クラヴィスとジョン・ポールが対面したとき、ジョン・ポールが訪れた地域にとった紛争を起こさせる方法は、言語法式だったか?特殊な言葉で人間の心の奥底に誰もが持っている悪い感情を引き出すというものだったです。{/netabare}
 まるで、ハーモニーでミァハが、多数の人を何かの暗示に懸けて自殺させた場面を思い起こすです。

 そこから、場面が2回ほど変わりとジョン・ポールを追い詰めていくけど、仲間同士のもめ事まで起きたり、話は思わぬ方向にだったです。

 このアニメの世界においてあらゆる場所で、都合の良いものだけ人々に報道などで伝え、都合の悪すぎるものだけ、何もなかったように隠ぺいするとでもいうのか?を感じさせるものがあったです。世界の先進国とテロ組織などもそうなのか?です。

 それは、平和な国と戦争の虐殺などをする国を分けて、平和な国に絶対に被害を及ぼさせないというある意味、ジョン・ポールの行動を正当にする内容が、これまでクラヴィスの聞いた会話で私には受け取れたりもしたです。
 気になったのは、「仕事だから」という言葉で、なんでも正当化してしまうクラヴィスのしてきた行動は、虐殺をも正当化してしまうところがあったことです。言葉や何かのせいにして現実を無視するのは、このアニメに限ることではないと思ったです。

 初めのほうに戻り、「これでいいのか?」と思ったりもしたけど、クラヴィスが出した答えは、正面から真実から逃げないで、自分が背負っていく覚悟というか?使命を受けていたみたいだったです。

投稿 : 2017/02/04
閲覧 : 310
サンキュー:

14

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虐殺器官のストーリー・あらすじ

世界の紛争地を飛び回る米軍特殊部隊クラヴィス・シェパード大尉に、謎のアメリカ人の追跡ミッションが下る。その男、「ジョン・ポール」は、紛争の予兆と共に現れ、その紛争が泥沼化するとともに忽然と姿を消してしまう。かつて有能な言語学者だった彼が、その地で何をしていたのか。アメリカ政府の追求をかわし、彼が企てていたこととは…?(アニメ映画『虐殺器官』のwikipedia・公式サイト等参照)

放送時期・公式基本情報

ジャンル
アニメ映画
放送時期
2017年2月3日
制作会社
ジェノスタジオ
主題歌
≪主題歌≫EGOIST『リローデッド』

声優・キャラクター

中村悠一、三上哲、石川界人、梶裕貴、小林沙苗、大塚明夫、櫻井孝宏

スタッフ

原作:伊藤計劃『虐殺器官』(ハヤカワ文庫JA)、キャラクター原案:redjuice、 監督:村瀬修功、脚本:村瀬修功、デザインワークス:荒牧伸志/山根公利/臼井伸二/神宮司訓之/山田正樹、美術監督:田村せいき、撮影監督:山田和弘/中西康祐、色彩設計:茂木孝浩、CGディレクター:増尾隆幸、アフレコ演出:長崎行男、編集:長坂智樹、音楽:池頼広

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