ナルユキ さんの感想・評価
4.0
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 4.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
バディファイト、面白ェじゃねーか!!
カードゲームアニメならその金字塔は遊戯王やデュエルマスターズ、より対象年齢を上げてWIXOSSの名が挙がるだろう。自分の覚えている範囲ではこれらの決闘シーンは、召喚されたモンスターがその場で立ち止まったまま火を吐いたり魔法を撃ったりとあまり動的ではなく、使用プレイヤーとの掛け合いもなく無口だったりする。「毎週やるカード販促アニメだから仕方ないね」で済まされてた常識を正に“破った”のがバディファイトだ。
【ココがすごい!:よく動き、よく喋る個性的なモンスター群】
この作品に登場するモンスターはバディモンスターというメインもそれ以外のモブもよく動きよく喋る。必殺技を自ら叫んだり、自分を使うプレイヤーを応援したりプレイングをダメ出ししたりしてしまう、1枚のカードという枠組みを超えた立派なキャラクターなのだ。例えるならマハードとマナの魂が宿ったブラックマジシャン師弟、キサラの魂が甦り喋るようになった青眼の白龍といったところか。
近接武器を身に付けた武装騎竜と呼ばれるドラゴンたちは攻撃のために相手の陣地へ乗り込んで大きな武器を振り回す。モンスター同士であれば中央の広場で格闘戦を繰り広げて雌雄を決する。この種族を主人公が主に使用するのでほぼ毎週アクション要素が多く、ルールが全然わからなくても目で楽しめるようになっているのだ。
【ココが熱い!:俺で攻撃!? アイテムや必殺技、独自ルールが光る演出】
バディファイトにはアイテムと呼ばれるカードがある。これはモンスターに重ねて強化するといった物ではなく、モンスターとは別の領域に置いて攻撃できる代物だ。
これがアニメだとなんとプレイヤー自身が装備する。手札は空中に浮かせて後方に回しフリーとなった両手で剣を握る。攻撃するときはモンスターと同じく闘技場を駆けながら敵陣に乗り込むのだからその迫力や動画カロリーは当時のアクションアニメと遜色ない。飽くまでもターン性のゲームなのでぶつ切りのテンポにはなってしまうが。
さらに必殺技カードの演出とその存在によるゲームの緊張感が凄まじい。ライフが10あるゲームだが、必殺技はその内の4~5をモンスターやアイテムの総攻撃の後に一気に奪ってしまう代物。なのでライフが少ない状態は遊戯王では「鉄壁に入った」とか「次のターンで逆転するヤツだ」と言われる安心フラグだが、本作品では「次のターン?そんなものはない」と言われてしまう死亡フラグとなっている。
必殺技もプレイヤー自身が撃つ描写だ。アイテムでの攻撃参加もあり、他TCGのようにその場で手元を動かすだけでは終わらない。人間キャラクターが決闘中でもその性格を色濃く見せてくれる。
【ココが面白い?:王道シナリオの随所に散りばめたTCGあるある】{netabare}
さて肝心の物語面はどうかを言うと、主人公がカードゲームを通じて相棒や仲間との友情を積み重ねていき最後はディザスターという悪の組織を壊滅させてめでたしめでたし、といった何の捻りもないシナリオだ。正直に書くと、名作アニメを求めてこちらを視聴する意味は限りなく薄い。
しかしアクセントとしてTCGプレイヤーがニヤリとするようなキャラの発言や展開が加えられているのは同胞としては大きく評価したいところだ。デッキから特定のカードを手札に加える“サーチ”と呼ばれる能力に対して「つええええ」と興奮する大盛爆。敗けが込み入ったりライバルの活躍を見てイライラしてしまい、「バディファイトなんて運ゲーだ!クソゲーだ!」と販促アニメあるまじき発言をする虎堂ノボル。これらへの共感はカードゲームの深みに嵌まったことのある者でないと難しいマニアックなネタだと思う。
“メタカード”についての議論があるのも本作ならではだろう。これについては賛否両論出るものだが、確実に言えることとして「使われた方が萎える」という心理描写も“TCGあるある”だ。
普遍的なシナリオの中に突如としてTCGプレイヤーが物凄く共感できるネタや展開が入ると、対象は次のネタ探しに話を追ってみる気分になる。そうやってこのアニメはTCG業界で認知度を上げていったのではないだろうか。
{/netabare}
【キャラ評(主人公とバディのみ)】
未門牙王
デュエマの切札一家と同じく素直な熱血漢である主人公。武道をやってるおかげか、目上の人物に対してきちんと礼儀正しくコロコロ特有の下品な所作も見られない。オフ時の面白みには欠けるかもしれないが自分含むいい年のアニヲタには刺さる人物像だ。{netabare}
カードゲームの主人公は大概「運がいいのがスキル」と言ってもいいが、牙王はちゃんとプレイングで強さを魅せてくれる。相手の手札を意識して必殺技の有無を探り、無いと踏めば敢えて守りの薄い陣を敷いて次の攻撃の邪魔にならないようにしておく。上級者だけが行える棋士の如し先読みを最初から見せるので初心者という設定が疑わしい。ただ彼にとって“幸運”はどんなピンチでも助けてくれる便利屋ではなく、自分の最善のプレイングで捕らえる獲物のようなものだ。同じ幸運でも意味合いが全然異なることを第1~2話でショップ店長から受け売った「運は捕まえる準備をしなければ~」という口上で主張している。プレイングを最適化することで、来る幸運と捕まえる幸運の二つのチャンスに巡り会うので怠っている人より勝ちやすいというのは道理であり、それを品行方正で熱血なキャラクターで伝えようとしてるのがよくわかる。大概の視聴者がビジュアルは別としてそのスタイルに憧れを抱くだろう。
{/netabare}
ドラムバンカー・ドラゴン・ファングスレイド・テレス(ry
上記でも書いたが本作のモンスターはキャラ付けが濃く、決闘中でもオフの時でもよく喋るのが特徴だ。『デジモンアドベンチャー』のパートナーデジモンのようなものと捉えて構わない。
{netabare}
主人公の相棒であるドラムならとりわけその傾向が強い……と思われたが、悲しいかなTCG販促アニメは時として残酷だ。新しいカードや人気の出たモンスターのためなら躊躇いなくメインモンスターであるドラムの出番を削ってしまうため、ポジションにしては活躍がやや少ない。テキスト上、牙王の戦法と相性が良くなかったので話によっては1度も召喚されないまま終わった決闘もある。相手にトドメを刺す“フィニッシャー”と呼ばれるポジションもまるで見えていなかった。
そんなわけで視聴者からは決闘の始めにワールドフラッグを振るだけの『旗振りトカゲ』なんて渾名を付けられる羽目・風潮にもなったが、そんな不遇から「今のオイラは牙王のバディとして相応しくない」と考え修行を決意する…というドラムの牙王への献身に繋げたのはシナリオ・キャラ付けとして上手い部類に入る。牙王には様々な相棒の組合わせがあるが、初期のこのコンビの人気が比較的根強いのはこういった暗黒期を乗り越えたからだと今は考えられる。
{/netabare}
【総評:バディファイト、面白ェじゃねーか!】
とかくTCGアニメは新しいカードや強い切り札を見せるという販促が先行してしまい、アニメとしては名作にはなれないものだ。この作品も例外ではないが、第2話「ルミナイズ!爆ドラ!!」だけは1番最初の決闘ということもあり、バディファイトに加えてTCG対戦そのものの面白さを表現している。
{netabare}
対決する牙王とタスクは相棒が異なるだけで武装騎竜という同じ種族のドラゴンデッキを使う。だが牙王がアイテムとモンスターを駆使して常に最大回数の攻撃ができるオフェンス重視なスタイルに対し、タスクは魔法の連打で牙王のカードを破壊し使った手札を補充、その後にモンスターを壁とした攻防一体の陣を敷く。同じデッキを使ってもプレイングが真反対になる当ゲームの奥深さがたった3ターンで示されている。ゲームスピードも相当早く、アニメで言えばテンポが良い。TCG対戦の理想である高度な駆け引きも行われており改めて主人公の本気TCG思考には脱帽させられてしまう。
{/netabare}
テンポの良さは後話でもずっと受け継がれており、30分アニメの中で地球と異世界が入り交じる独特な世界観やキャラクターの説明に併せて必ず決闘シーンを挿入させているのはTCGアニメとして素晴らしいと評する。主な要因としてゲーム性の他にも奈々菜パル子が実況という形で決闘の流れをおさらいしてくれたり召喚するモンスターの余計な情報を非表示にすることで、カードを使う描写自体は簡潔な描写で済ましているからだろう。熱い・見やすい・わかりやすい展開の3拍子だ。取っ付きやすさと豪快な描写からは製作側の「バディファイトが流行ってほしい。みんなに遊んでほしい」という想いが今でもひしひしと伝わってくるようで、初めて観たときはまんまとほだされてしまって沢山のパックを買い続けたものだ。
今となっては後の祭りという奴で、せめて5年前にこういったサイトを見つけてレビューしたかった。今や商品展開を終了してトレカ専門店も取り扱いを辞めた本作であるが、現物を手に入れる方法はまだまだある。気になった方は2話までの視聴を、そして実際にカードを入手してみてはいかがだろうか。ニンテンドー3DSからソフトが3本出てるのでそちらをプレイしてもいい。様々なカードゲームをプレイしTCGアニメも見てきたからこそ、今でも現物とアニメの両面でこう評価することができる。
バディファイト、面白ェじゃねーか!!
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