どらむろ さんの感想・評価
3.7
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.5
キャラ : 4.0
状態:観終わった
大人向けのハードコアサスペンス。資本主義批判と変態異能バトルが見所
GONZO制作のオリジナルアニメ。全24話。
バブル崩壊して失われた10年、金満日本社会への不信が渦巻いていたであろう2005年当時の雰囲気…からの、資本主義への疑問符が前提にあるストーリー。
ハードコアサスペンスだが大筋は逃走劇かつ勧善懲悪で分かり易い作風。
異能バトル系で、敵がほぼ例外無く変態的なのも特徴かw
金満資本主義への批判だけでなく、大人社会全般の汚い欲望を「ユーフォリア」という異形存在によって分かり易く描写されているのも良いです。
かなり猟奇的なグロい展開多いのでニガテな方は御注意を。
{netabare}『物語』
33歳の戦場カメラマン・雑賀辰巳(さいが・たつみ)が、日本の政財界を闇から牛耳る謎の儀式クラブに利用される15歳の少女・天王洲神楽 (てんのうず・かぐら)を助け出し、彼女の自由の為に逃避行する。
舞台背景がハードコアな腐敗資本主義のディストピアで、「ユーフォリア」という人間の欲望が解放された超人と異能バトルしていく。
…敵が超変態ばかり!
ユーフォリアはその人間が持つ潜在的な欲望を暴走させ、欲望に応じた異能や異形発現させる。
そのユーフォリア誕生の鍵が、ヒロインの薄幸少女・神楽ちゃんなのであった…。
序盤はまず、すっかり腐敗しちゃってる資本主義の汚い部分強調しつつ、秘密クラブやユーフォリア、女神様などのキーワードを見せられつつ、籠の鳥な薄幸少女を守って戦う展開。
逃避行→追手のユーフォリアと異能バトル…の繰り返しなので、些かワンパターンです。
それでも敵がいちいちド変態というか、壮絶なフェチ持ちなので、見ていて飽きないですw
…異能バトル面では、やや地味というか、ワンパターンな上に盛り上がりに欠ける面があるのが難。
それでも苦戦しつつもしぶとく逆転していく雑賀の戦い方は、嫌いじゃないです。
敵の水天宮寵児(すいてんぐう・ちょうじ)の徹底的なまでのお金への拘りや秘めた野望、神楽に隠された秘密、神楽と雑賀の関係性の変化などは、丁寧に描かれており、後半~終盤のドラマに繋がっていく。
展開自体は地味でワンパターンですが、次第に真相に迫っていくサスペンスとして伏線がしっかりしている為、中盤までは意外と飽きさせないです。
…初見では気付かなかったけれど、二度目の視聴だと、伏線が丁寧な作品だったと気付きました。
また敵の変態怪人たちは、いずれも「大人社会の汚い欲望」を象徴的に見せてくれるので、その面で「大人向けの童話」という本作のキャッチフレーズ通り、中々分かり易い。
後半のハイライトは敵ボスの水天宮が資本主義の鬼と化した(一方で金満社会を憎んでいる)経緯にあり。
悲劇的境遇で狂っていく水天宮が、何を求め、何処に行こうとしているのか…?
…一方の主人公側は、雑賀が神楽の辛い運命を知りつつ彼女を助けたいと願ったり、神楽もまた雑賀に惹かれたり。
33歳と15歳ではラブコメの波動を感じる…のは無理があり、恋愛では無い別の感情の機微が見所でした。
雑賀の葛藤は良く分かるのですが、神楽ちゃんは恋するヒロインとしては些か存在感薄かったのが難。
雑賀をヤンデレ気味に愛する女刑事・銀座ひばりの方が、回を重ねる程に可愛げが増していき、ヒロインとして目立ってました。
終盤、雑賀にとって作中一番の強敵だった政治家の音波怪人とのバトルが異能バトル面では一番の山場でしたが、ここは些か地味。
外道政治家の演説がゲスい。
これもまた社会批判な本作の醍醐味でしたが、ここら辺は別にどうでも良かった。
本作は終盤からラストへの流れが素晴らしかったです。
真の主人公は雑賀よりも、水天宮でした。
序盤から、実は本作はダブル主人公だった事に気付く。
資本主義の鬼と思われた水天宮の真の狙いは、逆に憎き資本主義を葬る事であった!
雑賀と水天宮の最終決戦…で、二人ともに勝利している、意外な結末が小気味良いです。
水天宮は憎き資本主義や腐敗政治を完膚無きまでに粉砕!(アニメでも、ここまで見事にやっちゃったキャラは他に記憶に無い)
今まで散々金満社会や腐敗の悪を描いてきた分、そのカタルシスは絶大でした♪
…一方の雑賀も、渇望していた「自由」な生き方、大切な神楽の人生を救う事が出来、万々歳。
結果的に雑賀と神楽が生き様として勝利出来たのは、水天宮のお陰…
なので、本当の意味では敵では無かったという意外性が、全体構成として面白くもあり、そして好感が持てました。
総じて
社会批判の強い社会派アニメ…ではあるのですが、良い意味で描き方が「幼稚」な面あるので、あまり社会派臭が鼻に付かないのが本作の良さかと。
この手の社会批判系は説教臭くて嫌いなのですが、本作は意外に説教くささ感じさせない。
(私は穏健寄りな資本主義者なんで、社会批判で説教くささ感じたら切ってた)
欲望解放の化け物が「大人の童話」として分かり易い。
伏線丁寧で終盤~ラストが後味良く理想的なのも高評価。
異能バトル系としては地味なのと、中盤ダレるのと、ラブコメとしては神楽ちゃんの印象薄いのが残念。
…とはいえ、総じて中々面白かったです。
『作画』
作画クオリティーはやや低い模様。
キャラデザも、神楽ちゃんが萌えるには些か足りない(十分可愛いとは思うけど)。
神楽ちゃんがもっと可愛ければ本作の評価もっと上がったのに。
それでもユーフォリアのグロさや嫌悪感抱かせる迫力、地味ながら臨場感あるバトルは良い。
良いが地味…。
それでも本作の世界観はしっかり描写されていて、そこまで悪くはないような。
『声優』
ヒロインの天王洲神楽は、斉藤圭(現・真堂圭)さんのデビュー役です。
一般公募オーディションにお姉さんの勧めで応募、声優デビューのきっかけとなったそうです。
ちょっと拙い感じが逆に神楽ちゃんの儚さにマッチしていて、良い配役だったのでは。
※余談ですが真堂圭さんキャラでは「夢使い」の三島燐子ちゃんが一番好き。
雑賀辰巳の高田裕司さん、水天宮寵児の森川智之さん共に渋い大人の魅力が良かったです。
両国先生の小山力也さんはイメージばっちり。
全般に渋いです。
子安武人さんの変態っぷりは流石w
『音楽』
OP「グラビアの美少女」が本作の作風にバッチリ合っていて中々。
あまり好きなタイプの曲じゃないですが、良い主題歌かと。
『キャラ』
33歳戦場カメラマンの雑賀辰巳は冴えない男ではありますが、大人らしい葛藤や魅力あり。
彼もまた結構な変態なのですが…
強い意志で己と他者の「自由」を求めたのが、他変態共との大きな差でした。
ヒロインの神楽ちゃんは、序盤から母にネグレクトされ鉢植えの苺がっつく等、薄幸っぷりが際立つ序盤はかなり可愛い。
理想的な「囚われの薄幸&狙われるヒロイン」ではありました。
次第に雑賀さんに惹かれていく姿が健気でかわいい…
のですが、後半以降は守られるヒロイン以上の積極的な見せ場が乏しかった感。
彼女の存在感もっとあれば、本作の評価もう一段回上がってたです。
敵ボスの水天宮は、実は真の主人公であった。
伏線よく見ると、本作は結局彼の復讐劇だったです。
容赦なき野心家だが意外と邪悪では無い?のは部下とのやり取りで分かりますし。
彼の部下三人組もキャラ立っていて魅力あり。
ダイヤモンド夫人を見て母を思い出したり、上司である水天宮に欠けている人間味を彼らが補っていたのが印象的。
銀座さんの方がヒロインっぽかった。
でもヒロインとしては割り込む余地無いので、ラブコメ出来ない不遇。
敵ユーフォリアが変態的でモブの割にキャラ立っていたのも良い。
ダイヤモンド夫人や水の女優は哀愁感じさせる良キャラでした。
敵上層部が資本主義と腐敗政治の権化で悪役として分かり易いのも良い、ラストはざまぁ♪とカタルシスありますので。{/netabare}
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