takato さんの感想・評価
4.3
物語 : 4.0
作画 : 4.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
「七匹のネズミ」。「さぁみんな、シッポを立てろ!」。
巨匠出崎監督の代表作として「あしたのジョー」に並ぶくらい古典な名作。王道冒険活劇としての完成度の高さは「未来少年コナン」に匹敵するかもしれない。明朗快活でシンプル、そしてなにより冒険のワクワクとドキドキに満ちている。
小さい頃にみたことがあったが、イカサマが好きだったことくらしか覚えてなかったが、ガンバのcvも三平に続いて悟空こと野沢さんだったとは…。どんだけこの人は王道主人公の声をしてるんだろうか。
そして、本作を見た人なら確実に一番印象的で、幼少に見ればトラウマ必須なノロイの恐ろしさは時代を超えて凄かった…。「うしおととら」の白面の者に影響を与えてるんじゃないかってくらい邪悪で狡猾で、シンプルにビジュアルのちからとしてもう怖すぎ!。特に不吉すぎるedの最後に映るノロイの姿は曲の素晴らしさと合わさって忘れがたい。
プロットとしては、子供向けにネズミを主人公にした「七人の侍」といった感じです。しかし、「七人の侍」と違うのはやはり主人公が王道主人公のガンバだから、とにかく快活なエネルギーに満ちている。
流石は出崎監督だけあって、薄っぺらな教科書的な物語ではない試練と哀しみが見事に活きているが、全体的には本作を象徴するモチーフである海に喩えられるような大きくて風通しが良い物語となっている。
複雑さはないが、こういうシンプルさが良い古典的な作品は、文学に例えるなら自己分裂がまだ人々に訪れる前の時代、シェイクスピアやホメロスのように語り手の自意識が出しゃばらすに面白い物語を語ることだけに集中していた作品たちを思わせる。
本作の魅力としてはキャラやストーリーも素晴らしいが、とにかく背景美術が素晴らしい!ジブリでも名を挙げた男鹿さんがやってるだけのことはある。昨今背景美術はリアル派が主流だが、本作などは見事に美術としてグラフィカルで最高!。
良い感じの汚しを多用した正に美術として、絵としての美しさがある。リアル系の背景ばかり見てるとそれが当たり前に思えてしまうが、作風に合わせてもっと表現の幅があっていいのかもしれぬ。
本作を見終わった感慨は「よりもい」を見終わった後に似ている。人は旅を、冒険を求める。なんのために?。そんなことは些末なことだ。必要とか目的のためだけに人は生きるわけじゃない。人にはそれらを遥かに超えた「大きなもの」に向かう時、自分自身も大きくなり得る。世界の広さを感じた人こそ、その大きさを自分の心に取り入れられる。
ガンバの歌が聞こえる。朗々と響くガンバの歌が、冒険の歌が。
どんな人嵐が襲ってこようと、本作を見れば聞こえるだろう。心の大海原に轟く波の歌が。
「さぁみんな、シッポを立てろ!」