レトスぺマン さんの感想・評価
3.6
物語 : 4.0
作画 : 3.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 4.0
状態:観終わった
これは女性を主役とする90年代アクションOVAの完成形ですね
長文となるため本文はネタバレで隠します。
{netabare}
90年代〜00年代前半にかけて「近未来SF的な世界観のもと、セクシーな衣装を身にまとった女性陣が悪の組織を成敗する」といったアニメがカルト的人気を博した時期があった。
その作品群を一部列挙するならば、AIC制作の「BURN-UPW」「BURN-UPEXCESS」や、スタジオファンタジア制作の「AIKa」「ナジカ電撃作戦」といったものが該当するだろう。
しかし、00年代中盤〜はライトノベルを主体とする異世界ものや、学園モノが流行し始めたこともあり、こういった作品は次第に下火になってきてしまった印象ががある。
そこから考えるに、本作品はそのような作品群の延長線上にあり、その流れの到達点の位置にあるのではないかと思えた。
本作品は、海洋庁の入社試験に落ちた主人公マイアが、その後数々の不幸に見舞われ、ひょんなことから、ネレイス社カムチャツカ支店の従業員として働くことになる、というストーリーだ。
前半はネレイス社に舞い込んでくる事件をミッション形式で成敗していくコメディー調のお笑い話、後半(特に20話から)は、マイアの出自、マイアの兄、そして海洋庁の秘密に切り込んでいく流れになっている。
まず、本作品の素晴らしい部分一つ目は、前半と後半で全くストーリーの傾向が違うのにも関わらず、最終回でこれまでに散りばめられた伏線をすべて回収した事で、本当に感動的な締めくくりを迎えてくれたことだ。
それは、前半のコメディー調の話に隠れがちではあるが、一部マイアの記憶にまつわるシリアスなシーンがあり、そのシーンで繰り広げられるキャラクターの言動、そしておじいちゃんの表情、ダフネの秘密といったものが示され、この辺りをしっかり見ることによって、過不足ない物語が構成されていることに改めて驚きを感じたのだ。
本作品の素晴らしい部分二つ目は、コメディー調の前半部分含めてとなるが、とにかく本作品はストーリー、キャラクターのほとんどにおいて「ギャップ」の組み合わせでできているという事だろう。
ここで、最初にお話しした「近未来SF的な世界観のもと、セクシーな衣装を身にまとった女性陣が悪の組織を成敗する」物語がなぜカルト的な人気を博すのかという所に繋がる。
まず、本作品を含むそういったアニメの女性キャラクターにはどちらかといえば「気が強い」傾向がある。
例えば多くの作品で展開されているアニメには【女性キャラクターよりも男性キャラクターの方が強い】といったものが多く、視聴者は自然と【女性キャラクターは静かであるべき、清楚であるべき】といった固定観念ができてしまうことも多々あるわけだ。
それらを覆すにはどうすればいいのか、となった時に【女性が強い物語】作ることによって、ギャップが生み出され、女性キャラクターのかっこよさだったり強さ、そして母性本能に好感を持つことができるようになる。
もう一つ言うのならば、その強い女性に「弱み」「クレイジーさ」「優しさ」を付加するとそこで新たにギャップ作られ、キャラクターへの好感度がますます上がっていくわけだ。
(逆に性格が弱いキャラクターに「強さ」を付加するのもあり。)本作品はそういった要素がとても色濃く出ていたと思う。
登場人物を例に挙げるのならば
マイア:全般的に弱気な感じの少女だったが、いざとなったら勇敢な部分を発揮する
レナ:リーダーとして周囲に厳しく接するため、かなり生真面目かと思いきや色気技が得意でたまに優しい
静香:どちらかといえばおっとり系であまり考えてなさそうな感じだが、メカニックが得意でかなりの大食い
ゆう:無口でかなり強く、冷酷な印象を与えるが実は赤ちゃんが大好き
グロリア:かなりぶっきらぼうでがさつな印象を受けたが、本当は繊細で素敵な恋をしたい純真な乙女
となり、これらのキャラクターが織りなすギャップはコメディー話に十分に生かされていた。
そういったキャラクターが生み出すギャップに加えて
・近未来SFだから堅苦しい展開がされるだろう
・コスチュームがセクシーだから、どうせエロ主体の展開になってしまうだろう
・コメディー話が主体だから、SF的なバックグラウンドについてはそこまで作りこまれてないだろう
・海洋庁というぐらいだから、さぞかしモラルに反することのない立派な省庁なんだろう
・マイアの兄はおそらく危機的状況に陥った時に毎回助けてくれる人だろう(年齢も近そうだし、、、)
といった要素を見事に裏切ってくれることによって、ストーリーでのギャップも良い意味で醸し出され、それが、本作品の好評価につながる結果になったのだと思ったわけだ。
そして、最初の通り、ここまで書いたことから踏まえるとやはり本作品は「近未来SF的な世界観のもと、セクシーな衣装を身にまとった女性陣が悪の組織を成敗する」物語の発展形なのかもしれない。
それは、OVAや短い話数で中途半端になってしまいがちな物語を、上手い事改良して完結へと導いてくれたということだ。
同時にこの「光と水のダフネ」という作品が過去のそういった作品に対しての「完結」の意味として捉えることもできるのではないか、とも思えたことも大きかったと思う。
全体的にコスチュームや肌のツヤツヤ露出具合がエロいため、初見は引いてしまうかもしれないが、ストーリーが本当に素晴らしいので、是非最後まで視聴していただきたい作品である。
(むしろエロもストーリーも楽しめるのは一石二鳥かもしれない(笑))
{/netabare}
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