Dkn さんの感想・評価
4.8
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 5.0
状態:観終わった
“HOPPITY GOES TO TOWN”
ブロードウェイのはずれにある家の敷地。
その片隅に住む虫達の世界を色鮮やかに描く、フライシャー兄弟が作った名作。
この時代にこんなアニメがあったのか・・
初めて見た時は雷に打たれたようでした。
※ロトスコープを活用し、人と虫との世界の境界線を作り出していて、技術の高さとセンスに感嘆します。
虫達は音楽に聴き惚れ、逢瀬を重ね、時に大冒険を繰り広げます。
私たち人間にはなんてこと無い日常の中で、すべてが見上げるような大きさの中に生きる彼らは、
些細な事でも大スペクタクルになってしまう。新鮮で、発見の連続なんです。
※『ロトスコープ』
モデルの動きをカメラで撮影し、それをトレースしてアニメーションにする手法。
マックス・フライシャーにより考案され、短編アニメーション映画、
『インク壺の外へ』(1919年)で初めて商業作品に使用された。wiki参照
ほぼ同時期に日本のアニメの歴史も動き出していて
1942年に制作された初の中編「桃太郎の海鷲」があります。
けれどそれは真珠湾攻撃をモデルとしたプロパガンダの為のアニメでした。
その2年前の1940年にはディズニーの長編作品「ファンタジア」があり
当時のジャパンアニメーションのレベルの低さを感じます。
この時代のアニメーションを観て感じることは、芸術や文化としての
根源的な感受性を強く反映しているところです。
アニメーションの進歩は、テクノロジーの進歩であり、技術自体ある程度研究が進んでからは
今も昔も変わっていません。センスにおいては才能の誕生に起因するところであるともいえます。
眼球のメカニズムを使い、コマを割ってそれを鉛筆で書き出す。
その技術はこの時代にすでに完成されていたといっても過言ではなく
あとは、流行り廃りの中で変化をしたに過ぎないのだと思うのです。
この頃のアニメーションは、まだコンテンツ自体に付加価値があったわけではなく、
実写を撮るより安く済むからというわけでもない。虚構の中だけでしか出来ない創造性を
紙と鉛筆を使って表現するアニメーションにしか生み出せない世界だったんじゃないでしょうか。
今のアニメーションにどれだけ受け継がれているのかはわかりませんが、
この時代の感性を忘れず糧にする事が、これからのアニメーションの
発展に繋がる、原典とも言える作品の1つです。
アニメーションの世界に魅了されているあなたにオススメの一作です。