ブリキ男 さんの感想・評価
4.1
物語 : 3.5
作画 : 3.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
英雄覇王乱立せし世に、その人あり 天下無敵の超人拳法、その名も美来斗利偉・拉麵男!
こけしの様な面立ちに、べんぱつ頭とどじょうひげ、泣く人あらば、駆けつける、友との絆、捨て置けぬ、知る人ぞ知る天下無双の正義漢、その名は美来斗利偉・拉麵男!(ビクトリーラーメンマンと読む。何かスゴい…。)
80年代の人気漫画「キン肉マン」、その登場人物の一人である―※1残虐超人、後に正義超人へと転身する―ラーメンマンを主人公としたスピンオフ作品。「キン肉マン」とは時代、舞台設定が大きく異なり、中国の三国時代を髣髴とさせる古風な世界観が特徴です。(それでもたまに変なテクノロジーが‥。)
盗賊団「コブラ党」に両親を殺され、そして残った、たった一人の妹とも生き別れ、天涯孤独の身となったラーメンマン。故あって、超人拳法の拳聖と称される"陳宋明"に師事します。
十二年の歳月を経、超人拳法免許皆伝の証「闘龍極意書」の継承者となった拉麺男。「コブラ党」への復讐を胸に、学び家である超林寺を後に、一人旅立ちます。
そして対決の時…!
超人拳法を身に付ければ数人、数十人? いやさ十万、百万の軍団(いきなり飛んだ!)を相手にしても、一人で打ち倒す事が出来るなど、大風呂敷を広げた陳宋明。そしてその弟子拉麺男、彼の口から突如と飛び出すとんでも科学、第一話の「台風の目を知っているか?」を始めとし、ファンタジーとも妄想ともつかぬ、ワケの分からない洞察で、数々の奇跡を手玉に取ります。
あれこれ言ってしまった後では説得力も失墜しますが、荒唐無稽物語と断じては勿体無い。2話、ガダムとの試合におけるラーメンマンの傲慢、それによって生じる悲劇。※2ラーメンマンとパーコーメン、ラーメンマンとザーサイ、幼少期に培われ、失われた友情、そして芽生える新たな絆。
度肝を抜かれるアクション、ファンタジーにも脱帽ですが、免許皆伝の武芸者ながら、若輩ゆえの精神的未熟さを抱えた拉麺男が、さすらいの旅を通して人間的に成長するドラマにも魅力があります。
中でも、先に挙げたガダムとの試合については、考えさせられる事が多々あります。拉麺男の師匠である陳宋明曰く「10の力のものを、10の力で倒せとは教えたが、100の力で倒せとは教えたおぼえはない」がそれ。この台詞が意味する所とは、余った90の力がどこかへと向かうと言う事…、それが消える事は決して無いのです。
百歩先の敵を打ち倒すという超人拳法の奥義「百歩神拳」を始めとし、「落葉紅脚(らくようくれないきゃく)」「回転龍尾脚」「打穴三点崩し」など、技のネーミングにも、原作者ゆでたまご先生の卓越したセンスが感じられます。(中には変なのもあるけど…)
OP、EDテーマ、「輝け!ラーメンマン」と「希望への旅」はもう、文句の付け様も無い程カッコイイ! 拉麺男という人物像に従って忠実に歌詞が組まれており、曲調も中華ロック! アツ苦しくも哀愁漂う名曲です。
その姿には炎! 闘将!!拉麺男、是非御一見あれ!
※1:「キン肉マン」におけるブロッケンJrやキン肉マンに対する思いやりを見ると、決してそうとは言い切れない部分があります。ゆえに本作では人格者と昇華されたのでしょう。
※2:パーコーメンもザーサイも人名です。食べ物ではありません。