2S-305 さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.5
キャラ : 4.5
状態:観終わった
心に鞘はいらない!
輸入BDにて視聴。
古代中国に似た独自の世界における様々な登場人物、主に現代日本より蝕により異世界に渡り、神獣「麒麟」により「王」に選ばれた「陽子」のエピソードを中心に物語は進められていきます。
序盤では、主要な登場人物が皆鬱屈としており、エゴ丸出しキャラのそろい踏みといった感じで見続けるのが正直苦痛に感じる程でした。
「風の万里、黎明の空」の章に入ってからの序盤においても、ショウケイ、鈴の稚拙で他罰的な身勝手極まりない立ち居振る舞いに正直イラつかされておりましたが、回を進めるごとにすこしずつ語られていく物語の中、次第しだいに自らの行いに目を向けていく過程がじわりじわりと描かれており、そして物語の大きなクライマックスとなる39話では、それまで溜めに溜めたエネルギーを一気に噴出すかのごとくで、数あるアニメの中でも屈指の名エピソードといえる程演出・セリフ・音楽・映像すべてがとてつもなく輝いておりました。
なにもここまで名シーン・名台詞を詰め込むことは無いだろう、他の話にわけてあげればよかったのに・・・と思ってしまうぐらいです(笑)。
本当に・・・くじけず見続けて良かったです。
わけても 「心に鞘はいらない」
このセリフにこのアニメの大きなテーマが集約されていると思いました。
人は己の醜いところや過ちには時として目を背け、他罰的に考えてしまうことがありますが、たとえつらくとも、目を背けず己と向き合い、自らを律する勇気を持つことが大切なことなのだ、と。
実に当たり前のことを言っているのですが、なかなか出来そうで出来ませんよね・・・。
鬱屈3大キャラである陽子、ショウケイ、鈴の3人などは性格や考え方どころか顔つきまでも最初と最後ではまるで別人となっており、悪い言い方をすれば勧善懲悪の説教入り成長物語ともいえますが、見終わってみると全く薄っぺらいところがなく、分厚いストーリーに裏づけされた地に足の付いた人間として描かれており、全く違和感を感じませんでした。
民放アニメではクライマックスにすべてを集約し、序盤ははっきりいってほとんど面白くも無いアニメというのはまず放映できないでしょう、速攻で打ち切りです。
しかし、それまでコツコツと積み上げてきた「溜め」があってこそ初めて迎えることが出来たクライマックスのカタルシスであり、まさにNHKだからこそ作り得た作品である、といえると思います。
忍耐力のある方には、絶対にオススメ出来る名作だと思います。