nyaro さんの感想・評価
5.0
物語 : 5.0
作画 : 5.0
声優 : 5.0
音楽 : 5.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
少女の3つの顔に魅了されるアダルトOVAを超えた名作
24年9月再視聴。25年夏に「ヴァージン・パンク」なる少女ヒロインのアクションものが劇場公開されるとの発表を受け、改めて本作を見てしまいました。本作のリメイク的な意味合いが強い気がしましたので。
50分程度の短編ですが、殺し屋の顔と女の顔、ほのかな恋愛をする少女の顔がコンパクトにまとまっており、そこを貫く復讐ものとしての出来と結末を含めて素晴らしい作品で私は名作だと思います。
そしてヒロイン砂羽はアニメキャラの中で私がもっとも好きなキャラの1人です。砂羽にはアダルトシーンがあるものの女の顔と少女の顔のギャップが素晴らしいです。セックスのシーンと少年とのひと時のシーンの対比がいいんですよね。
また肉体の快楽と内面との使い分けができる復讐に燃える女としての砂羽も魅力的です。配信版はアダルトシーンカットですが、アダルト版の見ごたえはありません。もちろん面白いですけど、かなり浅く感じます。
そして結末ですね。復讐と引きかえの因果応報ととるべきなのか、極限状態での恋愛が偽物ということなのか、あるいは悲劇の示唆なのか。裏の組織の暗殺部隊の存在が示唆されますので、砂羽の死闘はこれからなのか。そういうオープンエンディングも含めて味わい深い結末になっています。
「ヴァージン・パンク」のトレイラーは驚異的な作画でした。内容も興味があります。しかしながら、「A KITE」の作品のもつ風合いとか限られたアニメ表現の中、情報量を描きたいことに集中した故の凝縮感がでるかどうかですね。
本作は内容的にも余計なものをそぎ落としたシャープな作品です。設定もキャラも説明がほぼありません。ですが、ちゃんとキャラを読みとれます。
以前は4.3にしていましたが、やっぱり名作ですね。音楽に関しては3→5と甘い評価になしますが、オール5にします。
21年10月レビュー
「アダルトですが、作画も内容もかなりの高水準です。」
一応アダルトなんでしょうね。ただ、アダルトパートはほんの4、5分くらいでちゃんとストーリーになっています。
本作で特筆すべきは作画です。アニメで人間をリアルに描いている点においては最高水準だと思います。普通のシーンは若干止め絵などで工夫していますが、バトルシーンの関節の動きとか、身体の震えとか、どういうダメージを受けて、どれくらい痛いとか、そういうのが伝わってきます。
ヒロインのキャラデザについては淫猥でありながら可愛くて秀逸でした。
これは低予算でアダルトアニメを作るのに慣れているから?肉体表現の蓄積があるから?それにしても1998年のこのアニメの出来は尋常ではありません。同時代ではないですが、初めて見たときは鳥肌が立ちました。
そしてヒロインが何と言っても魅力的です。キャラデザはもちろんですが、ちゃんと普通におしゃれをして、コンビニの駄菓子を食べながら、同年代の男の子のオブリとくつろいでいます。かと思えば、大胆な性行為でちゃんと感じているところが描写されています。冷酷な殺しをすると思えば、無関係な人を巻き込んで落ち込んだりします。
彼女のそういう描写で、彼女の内面はお仕着せの道徳では計れないということを表していました。彼女の価値観の普通からもっともダークな暗殺者までの幅の広いレンジで、そのどれもが彼女の真実である、という気がします。過去の不幸な出来事があるので、余計そう思えるのかもしれません。
目的のためなら平気でなんでもするクールで且つ熱くてどろどろしたものという二律背反的な部分も感じ取りました。
テーマ性は弱いですが、キャラとしてヒロインに深みがあるのでそこが注目ポイントだと思います。
これが非常に丁寧なアニメ描写と、若干テンプレですが起承転結がある面白いストーリーでまとめられています。結末は現代風ではありませんが、それ以外の結末はないと思います。あのシーンがないとかなり凡庸になると思います。
(追記 なお伏線がありましたね。 {netabare} バスケットボールで服を汚されたシーンで、オブリは道を歩いているときは油断しているということがわかります。そして、バスケットボールが破裂したとき、ツイン三つ編み女の子は顔を手で庇いましたが驚いていませんでした。つまりあの女の子は訓練を受けているということです。後釜は見つけてあるとも言っていました。この一見意味の無い描写が実は関係してくるところがクリエーターの力量を表しています。{/netabare})
今、配信サイトで見られるのは性描写カットのインターナショナル版になると思います。これについては、単なるアダルトアニメと括って性描写をカットしていいかといえば、ちょっと疑問符が付きます。
ヒロインの彼女は殺し屋仲間のオブリとは2人きりになってもセックスしません。それが女子高生としての恋愛する時の顔になります。一方で雇い主というか飼い主である刑事の男とはセックスして喘ぎます。この描写が何を意味しているかを考えるからこそ深みがでると思うのですが。
ただ性行為を完全に隠していない本当の無修正ですからやむを得ないですかね。もちろん、インターナショナル版でも十分以上に面白いと思います。