レトスぺマン さんの感想・評価
3.6
物語 : 3.5
作画 : 4.0
声優 : 4.0
音楽 : 3.0
キャラ : 3.5
状態:観終わった
このアニメはいうなれば「総合アミューズメント施設」みたいなものだね
長文のため本文はネタバレで隠します。
{netabare}
「娯楽の意義」について考えたときに、何を思い浮かべるだろうか。
それは、普段の生活の息抜きと言ってしまえば簡単だが、それを延長していくと「自身の気に入る何かを見つけて楽しみをアップデートする」、あるいは「自身の一時的な拠り所になる場所を見つけにいく」気分に繋がっていくのだと思う。
そのためには対象の娯楽が単一的であることよりは、そこに対して色々な要素を盛り込み、半ば永続的に楽しめるものにすることで、受け手側に様々な面白味を与える手法が必要になってくるわけだ。
だから、巷に溢れる最近の映画館やイベント施設の様子を伺うと、4Dシアターや体験型VRといったものが増えてきて、より受け手側の心に響きやすい設備になってきている印象がある。
なぜこの話をするのかといえば、本作品を視聴すると、上記に挙げたような気持ちと同じ感覚に陥るからだ。
本作品は確かに70〜80年代ロボットアニメのプロットの下で動く物語ではあるが、逆に「新しさ」を感じたこともあり、このレビューではその理由について自分なりにパイチェ〜〜ック!(笑)していければと思う。
①本当にロボットアニメだけが全てのベースとなっているのか?
本作品は惑星規模での男女間の対立という突飛な設定から始まり、そこからの融和と共闘が描かれる話である。
これらは70年代から続くロボットアニメのお約束の一つでもあり、それ以外にもマスコットキャラクターの存在や女性の気の強さ、根性、突然現れる武器、謎の男etc...といった要素もそれに含まれる。
ただし、私が従来のロボットアニメと少し違う、と思った部分がある。それは戦闘シーンの内容だ。
ロボットのアニメの戦闘シーンの魅力とは何だろう?と考えたときに、合体や変形、ロボット間の肉弾戦が挙げられる。
ただ、本作品においてはそれと同じ割合で
・宇宙空間を飛びながら敵に自機のビームを命中させる
・敵から放たれた大量のビームを避ける
・雑魚を倒し終わった後に少し間をおいて現れるボス機
・話を追うごとに強くなっていく敵
・手探りながらも知略を発揮する主人公(=自分でロボットを操作している感覚になれる)
といった描写が存在し、ここに当時最新鋭と言われたGONZOの3D技術が如何なく発揮されている。
これら見たときに、私が思った事は「あ、これってシューティングゲームそのものだ!」というところで、GONZOの本作品放送開始前の過去8年を追っていくと、PlayStationやSEGAサターンなどのゲームムービーを制作してきたことに共通点が見える。
実際にそのゲームムービーを視聴すると、シューティングゲームのアニメパートもあり、宇宙空間やマスコットキャラクターといった本作品に繋がる描写を垣間見ることができたわけだ。
本作品はそんなゲームムービー群の集大成とも言える気がするし、もっと言ってしまえば、GONZOがそれまで培ってきた「ゲーム」に対するノウハウの上にロボットアニメが存在するような感じもして、そういったイメージがそのまま「新しい感覚」に繋がったのだと思う。
②情報量の多さについて
本作品は先述の通り、様々な要素を盛り込んでおり、ロボットアニメ×ゲーム感の他、美少女萌え、恋愛、冒険、ドラマ、自分自身の存在意義、コメディ、感動が表現されている。
特に第1期の1・2話においては、素早いシーンの切り替わりによって世界観が示されるため、場面を追うのも結構大変だ。
ただ、ここまで情報量を多くしてストーリーが破綻しなかったことが、本作品の良い部分で、それはキャラクターや世界観の【押さえておくべき特徴】の切り出しがとても上手だったことだろう。
例えば、本作品で示される男女のテーマにしても、ステレオタイプな部分が強調され、男性は暴力、大声、気合。女性は意地悪、嫉妬、誘惑といった嫌味な面もしっかり描いていた。
もちろんこれは、性が主題となっていることに対する悪ノリ的な意味もあるのだろうが、この嫌味な部分が主人公を囲う女性キャラクター陣を引き立てていて、特にディータついてはそれがあるからこそ、より純粋さが目立って、応援したい気持ちの目線で見ることができたと思う。
また、自分自身の存在意義のテーマを扱ってしまうと、哲学的な袋小路に入ってしまいがちなのだが、そこに深入りせずに、倒すべき相手を明確にすることで、純粋に主人公ヒビキを応援したくなる気持ちにさせられた。
そこからの最終決戦はかなりテンションが上がった状態で視聴することができ、見終わった後の気分は良いものであったと感じる。
本作品はこのように色々な要素+先述のゲーム感をうまく使い、どこに行こうがどこに迷い込もうが、楽しいものに溢れていて、そこから自分が気に入ったものを選択していく雰囲気があり、それは言ってしまえば総合アミューズメント施設のようなものに近い、とも思えたわけだ。
これをアニメとして2000年代初期でやったことに「新しさ」を感じた部分でもある。
とはいえ、それは具体性に目を瞑ればといったところで、世界観に「なぜ?」「どうして?」と投げかけると、やはり粗が目立つ。
特に、本作品の世界観における地球が最終決戦後どうなったのか、男女が合体するロボットの仕組みといったところは全く示されておらず、要素に対して一つ一つを意味を見出そうとしていくと結構がっかりする部分が出てくる。
また、本作品には高尚ともいえる名言セリフが多数存在するが、コメディパートからいきなりシリアスになった瞬間にいきなり飛び出してくるので、頭の切り替えにだいぶ時間がかかるところでもあった。
だから、本作品はあまり真剣にならずに、ライトに視聴することが必要になってくるのだと思う。
{/netabare}
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