Witch さんの感想・評価
4.6
物語 : 5.0
作画 : 4.5
声優 : 4.5
音楽 : 4.0
キャラ : 5.0
状態:観終わった
地味だが「日本のアニメは”美しい”」と再認識させてくれる良作
【レビューNo.41】(初回登録:2023/3/18)
コミック原作のアニメ映画で2011年作品。45分程度。
3年ほど前に視聴したのだが、タイトルがはっきり思い出せなかったんだよな。仕方がないから
「狐のお面」で検索して、ようやく思い出したというw
キャッチコピーは「緑川ゆき原作、『夏目友人帳』のスタッフが贈る、もうひとつの妖奇譚」
(ストーリー)
祖父の家へ遊びに来ていた6歳の少女・竹川蛍は、妖怪が住むという『山神の森』に迷い込み、
迷子になってしまう。そこに現れたのが高校生位の狐のお面を被った少年ギン。この森に住む
というギンは「人に触れられると消えてしまう」という、妖怪でも人でもない存在。
ギンに助けられた蛍は、それから毎年夏ごとにギンの元を訪れるようになる。
これはそんな2人の切ないピュアラブストーリー。
(評 価)
・「日本の美しさ」が凝縮された作品
ここでいう”美”とは単なる映像美だけでなく、日本文化や感性等総合的なものねw
・山深い日本の田舎の原風景
・神社
・狐のお面
・夏祭り
・蛍(昆虫の方ねw)
・日本の妖たち
・日本人らしい淡い恋とその結末
素材としてはありふれたものではあるのですが、作品としてトータルで見たときにしっかり
「日本の美」として印象深く刻まれるという、さすが「夏目友人帳」のスタッフです。
本当にいい仕事をしています。視聴後に「日本のアニメとして誇らしく思える」作品ですね。
・「淡い恋」の描写が絶妙
出会ったころの2人は高校生(?)と6歳の少女ということで、従兄の馴れ合いのような関係から
始まるのですが、
・蛍:人間の女の子なので、出会いの度に小・中・高校生と成長していく
・ギン:人でないため、高校生のような見た目からほとんど変わらない
蛍の成長とともに目線が少しづつ近づいていく様で、互いに異性として意識、恋心も育まれて
いく描写が絶妙です。そして蛍が高校生になり、ようやくギンの年格好に追いつきます。
・「飛びつけばいい・・・本望だ」に秘められたギンの想い
1度目の視聴時には気づかなかったのですが、見返してみたらラスト以上に印象に残るギンの
セリフだったなと。
これはギンから夏祭りに誘われた際に蛍が発した「飛びつきたくなってしまう」に対する返し
です。一見軽口のように思えますが、これまでの経緯を踏まえると違った景色が見えてきます。
{netabare}上述で2人の年恰好が並んだと書きましたが、実は2人は気づいてしまいます。今度は蛍がど
んどんギンを追い越していくことに・・・
ギンにとっては初めての人間の友達で初恋の相手。いずれ彼女を失うこと、そしてそんな彼女
の未来を今は自分が縛りつけていること。ギンの「本望」はどの位本気だったのか、おもんば
からずにはいられないですね。{/netabare}
・海外での評価も高い
本作を再確認して海外での評価が気になったので検索したのですが、予想通り海外での評価も
高いようです。日本人の私でも「日本のアニメとして誇らしく思える」作品ですので、海外勢
から見て「日本らしいテイストがファンタスティック!!」って刺さる方も多いかと(笑)
(この辺り日本人より日本人らしいコメも多く、海外のアニメファン侮れずって感じですねw)
まあ設定を聞いたときから、悲しい結末を迎えるであろうことは誰でも予想できると思います。
それでもなおこのスタッフらしい締め方が本当に美しい。
日本の代表的な美しいアニメといえば「ジブリ」だったり、最近では圧倒的な風景描写の緻密さ
等の「新海ワールド」や「鬼滅の刃」の度肝を抜く作画だったりしますが、これらはそれなりに
制作費もかかってるんですよね。
それに比べ本作はかなり地味で圧倒的な作画でもなければ、大掛かりなラストがあるわけでもなく
有り体に言ってしまえば、上述作品に比べそんなに製作費もかかっていないよねと。それでも
「『日本のアニメって”美しい”』って思える、心に響く作品は作れるんだ!」
映画とはいえ45分程度の作品ですので、ぜひ一度ご視聴して頂きたいと思います。
(追 記)
「夏目友人帳」の原作者やスタッフが手掛けた作品なので、作画・キャラデザ・世界観等確かに
それを彷彿させるものがありますが、別作品と捉えた方がいいですね。個人的には「夏目友人帳」
ってそんなに好きではないのですが、そんな私でも一押しする位なので(^_^)